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真。ー詩。ー
魔女と呼ばれた魔道士。ーOrcinusー
しおりを挟むまた轍を踏むつもりか?
最初はその言葉に呆然とするしか無かった。
どうしてあなたに言われなきゃならないんですかー!
と少年は詰りたくなった。
『魔女令嬢の、血迷ったか?』
『いいえ、いいえ、ちっとも……もっとも。』
『あなたを道連れにできるのなら』
この記憶は、ご主人の?
そう思って、必死に整理し理解しようとするも、全く理解できずに頭を振る「奴隷の」少年は坩堝に嵌り、そして。
「奴隷の」少年は_____混乱に陥った。
思い出せ、記憶を。
永劫に失われたはずの記憶を、咎を。
そして、大人しく……。
_____もっとも忌まわしく愚陋な獣の。
記憶。
そう、その通り。
……して、大人しく______反逆者共の記憶も。
それを、寄越せ。
『はズま』や『もちもち。』共の願いだ。
『腐槞の竜』を、『かの腐槞の臣善』を。
蘇らせろ、とな。
ん、嗚呼。
『お前モ思い出せ、永劫に忘れていたハズの咎を。』
『そして、それを寄越せ。』
さもなくば_______。
その人物はナイフを力強く握っていた。
それはそうだろうが、「奴隷」の少年の方に向けていた。
『臣善の箪笥を』
『月の向きをあなたに』
血の滴るナイフを。
拭いもせずに、静かに忍び寄り……後ろで囁く。
つづり方が悪かったね。
「奴隷」の少年の頭上でぽたっ、ぽたっ、と落ちる液体が少しずつ溜まって落ちていく。
後ろで腕を使い乱暴に、すげなく首を絞めてなじってる人物が居る様子。
くつくつくつくつ。
絞めながら、足をばたつかせながら……。
声を抑えたような、ヒキガエルが潰れたような声がした。
喉奥で笑い、徐々に、徐々に、力を込めていく。
「奴隷」の少年の…意識は暗くなっていく。
人物のナイフがぽたっ、と液体を落とす。
鉄の香りが「奴隷」の少年の鼻を刺激する中で、暗闇へ意識が堕ちてゆく直前。
囁き、心を折り、それは甘く……その空いてしまった隙間に毒を注ぐように、ゆっくりと。
まあつまり、だな。
低く、低く声を落とされた気がして、為す術もなく。
こうして、「奴隷の」少年はオチた。
それから、黒いローブを羽織っている人物は乱暴に地面に落として、拘束した。
「奴隷の」、だからと言って。
そう思い、意識のない彼の耳元で何かしら囁き足を退けて、立ち上がっていた。
拘束したままの「奴隷」の少年と、凶刃に倒れた「魔女」をついでというかのように拘束して、両腕に抱えてそうしてくつくつ、と背を向けたまま静かに笑った。
街の外れにある倉庫らしき場所から、ではなく。
倉庫を出たところの細い路地裏を、暫く進んだ所にある魔道具店を通り過ぎて、ずっと真っ直ぐに進んで荒んだ雰囲気を放つスラム街を抜け、淡い光を放つ魔法陣に乗った。
その速度は音速を超えている。
幼い仔と「魔女」を、それも二人のみを抱えてモノ扱いしての歩行のみだ。
よっぽどの事がない限り乱暴に扱うことは無い、無いが。
わずかな時間でありながらも、その厳然たる事実は変わらない。
『…………っち。』
恐らく黒ローブは飛んで行ってしまっただろう。
さて、残念なことにこれが間違いだった、と「奴隷の」少年が分かるのはもう少し先だ。
一寸遡って、人物達が先程までいた家の床に、それらはあった。
『かの作者』の置いていった黒百合と、アネモネ、それから。
美味しそうで真っ赤な、艶のある林檎、だ。
それが木のテーブルの上にある、同様の材料で作られたであろう皿にひとつ。
それも、綺麗な皿に置かれている。
そこに、細い白蛇がやってきた。
テーブルの脚に、その細い身体を器用に巻きつかせながら登ってくる。
そして、テーブルの上にある美味しそうで真っ赤な、艶のある林檎が置かれている皿に近づき舌を出しながら、それに巻きつく。
すると、先程まで見事に咲いていたアネモネと黒百合が、瞬く間に枯れてしまった。
おめでとう、これで彼女の命運は決まったとのことだ。
白蛇と林檎、二輪の花はやけに紅い炎に包まれて焼失した。
文字通りに。
さて、「私』の願いはもう決まったかな?
そっかー、まだ決まってないかー。
じゃ私はもう少し待ってるからね?
ゆっくりゆっくりゆっくり、で構わないんだよ。
とは言っても、私が怒られるだけなんだけどね?
『誘惑。ー白蛇の林檎枯らし。ー』
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