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真。ー詩。ー

とても美しい。ー一時の安らぎ。ー

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ん、………ここにいたんだね。

………ええ、あなたは。

………いえ。

………。

男性の声があなたの後ろからかかった。

ここは、『何処か』の森の深部。

ベールを被った女性は、上半身にかかっている毛皮を手に取り、男性に返そうとする。

ああ、気づかなかったな。

そう態とらしく言って、笑う気配がする。

その声は女性的な声音に変わっていた。

そのまま、談笑をすると。

風が荒れ狂ってでもいるのか『何処か』で激しい音がする。

………………とはいえど、いや、これは直接的に関係するものでもないか。

ーーー彼女のノイズへと侵入いたします。ーーー

百々目は、きくりの化けた姿。 二人の戦いを百々目となりて見守っていた。

華春は祖母を鬼嬉丸鬼棄丸に殺されたと話したが、鬼嬉丸は身に覚えがなかったが取り敢えず自分が殺したと言った。
・・・いや、取り敢えず、ではなく、彼女の身を按じての優しい嘘だった。
百々目が渡した薬は、鬼から鬼神に戻す薬。
それから祖母を殺したモノは鬼嬉丸もとい、白垢与能命しろくよのみこと
その兄である黒与奪能命こくよだつのみことの化けた姿、つまり。
化生した“鬼嬉丸”だ。

……“鬼嬉丸”が現れたのは、『九年前僅かな時期』。
運の悪いことにその時は聖神達は疲弊しており、殆どの神々も堕落したので。
幾ら説得しても制御しても、それ以上の実力を持つ一部の聖神たちがのらりくらりと躱して来たから。時には反撃され、最終的に倒しきれなくて逆に封印されたと。
それも、雨が降る寒い寒い夜であった。

君は、あの鬼が容赦などしないことを忘れていたろう。

言葉に踊らされてばかりだよ。

『カロリータ』の腕に古い創、それも治る見込みもない程の。

夥しい刀傷があることだろう。

あの『仔』にはね、ふふ。

これで、そう。

これが僕らにとっては、なんとも“都合がいい”モノだよ。

『裏切り?』
『まさか!』
『俺らは友好的気に入られるように接していただけさ。』
不意に、歌が聞こえて来て。

『ルールルー……』

女性は手を出して。

泉に、湖に。

語りかけるように、言葉を紡いだ。

『廻れ、廻れ、時代よ、時代よ。廻れ、廻れ、雫よ。
まわれ、まわれ、天候よ。再生せよ、再生せよ。
私の可愛い子供達。』

そううたっているのは、セレーネ・コンフィッツエである。

水と白のグラデーションの髪が、美しい川のように揺れる。
眼は、水と茶色っぽい赤のオッドアイである。

『私の可愛い可愛い子供達、子供達。』
『再生しなさい、再生しなさい。』
『さあ、潜りなさい。水中を、湖の中を関わらせなさい。』
『さあ、水滴に身を委ねなさい。さあ、湖の中にある幻の月を見つめてみなさい。』
『さあ、その神秘的な光を潜りなさい。』

『少し失礼するわね。
ほーら、落ち着きなさい。
女神様。』


するり、と手を取り後ろで支えるようにしてから。
艶然と笑いながら、声を落とす。
その声は女性的な声音に変わっていた。
女性はそのまま、そっと支えられたままに言葉を紡ぐ。
『等しく等しく等しく等しく……公開処刑じごくへと誘いましょう。』

潭月たんげつ飄飄踉踉ひょうひょうろうろうー』
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