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脚立。ー微笑。ー
しおりを挟むふわふわと浮遊し、『誰か』を捜索しているであろう『男性』が居たの。
『ん………?
こんなところにいるとは珍しいな、どうした?』
けれど腕組みをして、建物の影にいる『別の男性』に向かってそう言うと浮遊したまま談笑をしたよ。
そして、暫く経ちましたわ。
全く、このままですと『あの御方』の声を拾えないのですから困りますわ。
そろそろ『この御方』の悪戯とやらを、やめて頂きたいものですがどういたしましょうかね。
『………ふふ、そうだな。』
『ソレなら、こうしてやるというのはどうだ?』
それからナニカ耳打ちをして、透明な瓶をさりげなく手に握らせ『別の男性』の前から忽然と消えたね。
『別の男性』は、『白いスーツ姿』ですね。
そこに佇み、微かにため息をついて踵を返し去っていますわ。
ううむ。「大変な事」になったらなったで愉しそうだな!
アイツらは大いに困惑するだろうし、これから愉快な出来事が頻発するのは俺としては嬉しいぞ。
恐らく人ではないのだろうが、構いはしないというスタンスで『別の男性』は依頼したのだろう。
残念ながらその後の『スーツ姿の男性』の、杳たる足取りは全くもって掴めなかったのだが……。
『何処か』で活躍しているに違いない。
ともすれば、『廃ビル』などだろうか。
それが済んだら、何処にいるのだろうかと思ってしまうだろうがな。
それにしましても、どんな思惑を持って依頼したのかは、分かりませんでしたね。
もう一度言っておくが、その『別の男性』と、『男性』や神のみぞ知ると言うやつかもしれんな。
もしくは………。
先程の『男性』が渡した瓶に、不審点がありましたわ。
『灰色と鮮やかな桃色の彫刻が彫られ、彩りを与えているのですがその透明な瓶の中にある液体が、それはもう得体の知れない色をしていますね』。
……紫と琥珀色が混ざったような色だったよ。
『あの方々』がお怒りになられるか、心配になってくるなこりゃ。
……やれやれ、こうでもしないと判りはしない。
だから『面倒な奴ら』だ。
その言葉とは裏腹に愛おしげで、それはもう可愛くて可愛くて堪らないと言った風に慈愛を感じる静穏で低い声音だ。
そう呟く『男性』が、路地裏に現出した。
どうやら先程『男性』は『別の男性』に、悪魔の囁きをしたようで。
そうして路地裏に移動して薄く、そして凄然で妖艶な笑みを浮かべたらしい。
美しくそれでいて蔑んでいるかのように、あるいは。
恐怖を感じるような、微笑を浮かべているような気がするとか。
それは例えるのがとても難しいが無理やり当てはめるとなるのなら、そうだな。
聞けば気の毒、見れば目の毒だろう。
見てしまったら最後で。
それは思わず身震いをするほどに、………。
そうして喉を鳴らし笑う声が僅かにひとつのみ、聞こえて。
今すぐにでも遠いところに目をやってしまいたくなるほどに、笑い声が微かに聞こえ続けるのであった。
それはこちらが頭を抱え、主に頭痛が更に酷くなる出来事を巻き起こされる予感がほんのりとしつつ。
それも、わんぱくな『仔』らに日情を引っ掻き回されてしまうのだけどね。
……さて。
こうしている間にも『男性』は、笑いを抑えきれないまま悪魔の微笑みを浮かべるのが目に見えるのだが。
不意に、愉しくも剣呑な日情に紛れて行くかのように。
蝙蝠になって颯爽と飛び立ち、瞬きをひとつする間にそこから消え去ってしまった。
ああ、味方だろうから安心して欲しい。
あれを見た後に言っても、説得力なぞないかもしれんが『男性』は信頼出来る人物だ。
確かに味方であろうが、だからといって『男性』が誰の味方かは判らんので、そこは留意して頂こうか。
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