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物思い、思慕?ーペットと戯れる時間。ー
しおりを挟むふふ、貴方は可愛いよ。
私の可愛いペット。
こうして戯れていると、思い出す。
『ねえ、『[ノイズが酷く音声不明]』。』
『けぅけぅ。』
『おや、どうなされました?『リージェリ』。』
『あなたにじゃないよ、ペットにだよ。』
つっけんどんにしたのに『アイツ』は笑って、そうですかと言った。
ただ、影のある雰囲気を纏って微かに笑うだけだった。
……『アイツ』は綺麗だった。最初は好きなのかと、思ったけど。
いやいや、違うと思っていた。
ペットに秘密の話を喋ったのだけど、『アイツ』は何も言わなかった。
何も言ってはくれなかった。
そして気づいてしまった、憧れているのだと。
それでも今となっては、憧憬なんかじゃないじゃないか。
結局、私ができたのは憧憬の振りだけだ。
彼らが差し向けてきたの彼は。
無情で残酷な見えないモノの手により、無理やり。
その姿態が痴態を晒した、挙句の果てに。
『地下の神の玩具』になったと。
梟は鳴いた。
『ほーほーほーほー、ほー……』
それは、『彼ら』にとっての禍事に違いないだろう。
悦びを知らせるかのように。
『ほーほー、ほー……』
梟は鳴いている。
其処にいないのに、啼くのだと。
梟は今も鳴いている。
反対に其処にいた『彼女』、『リージェリ』はなんだか判らないが泣き喚きたくなった。
それを眇めるように、鳴き声は変わらなかった。
もちろん見られている。
梟神は梟を通して静かに、『彼彼女』らを見ている。
諦めてしまいなさい、結局『私達』ができるのは。
『絶望という名の暗闇』を、齎すだけなのだから。
あたしは敵にバレながらも、『城』へ侵入できたわけなのだが。
ふむぅ、『魔王』様にバレたらバレたでその時はその時だ!
あの御方も、素晴らしい実力を持っている御方だからな!
『………それにしても、ここも素晴らしくおどろおどろしい処だな。』
……魔力は消してから『音響妨害魔法』を使用して、囁くような声量で呟いた。
魔力って消せるもんなのかって?
これくらい当然さ。
『イーファ』と言う魔族は『魔王』に仕えている。
けれども、側近では無い。
だが「それなり」に強く、戦闘技術も高い。
そして、扱える魔法も多岐に渡る。
『NHM』級魔法、『ESI』級魔法、その他だろう。
その上に属するのが火、水、土、金、闇、光。
『魔王』はそれよりも遥かに強く、コントロールの必要な魔法達と同じく卓越した剣術を、惜しげもなく行使している。
それはそれは、存分に楽しんで敵と渡り合う程だ。
なので恐らく、かの敵国が放ったと言われる「少数精鋭部隊」とも単身で死合える実力だろう。
……っと、すまない。
これ以上は、「許可」が下りてないのだった。
だがこれなら、「許可」が下りている。
かの敵国の放ったと言われる「少数精鋭部隊」全員が、『過酷な環境で生きれれば』の話だがね。
ふっ、と鼻で笑うだけの「只の」少女であった。
まあ、写生してみようか。
さらさらと描き進める。
『まずは城あるいは町に囲まれた所を描いて、それから。』
『別のページに、星型の城壁を丁寧に描いて。』
『もちろん、崩壊した状態のね。』
『でも直された、『人の仔』の手によって。』
『別の処ではボロボロになり傷ついて、疲労困憊の折に、そう。』
『『別』の魔物が訪れた。』
『その後、殺されたかもしれんし。』
『もしかすると、玩具にされた可能性も否めないだろうな。』
『……それから、魔法を使用され無事に到着と。』
さて、少々かたろう。
『あー、分かっていると思うが前置きとして告げておこう。』
『これは『しがない漫画家』で、可愛らしい可愛らしい『人の仔』から、聞いただけの話だ。』
『そうして私から告げる与太話だから、真に受けてくれるなよ?』
『ある国に、宰相がいた。』
『その宰相は、元々王族の出だった。』
『色々あり宰相に就任したのだが、就任して何年か経たある日のことだった。』
『戦争が起きた。』
『たまたまその日は大怪我を負い、その上に疲労困憊だ。』
『国には宰相の息子もいた。』
『だからと言って安心はできないが、進み続けた。』
『そして、「ある魔物」に出会い死亡した。』
『喰われたか、また吸魂でもされたか。』
『考えつかないが、その他の死因かもしれなかった。』
『その宰相には配偶者がいたとか。』
『最も妻だったか、夫だったか判らんだろうがな。』
『添い遂げると誓った配偶者と、その宰相の息子は大層悲しんだ。』
『もしかしたら数日辺りは、泣き崩れていたやもしれん。
それから暫く経って、募る絶望と喪っても想う愛おしさのあまりに、配偶者は“狂ったかも”しれないな。
そうなったのは、ある女神と神を崇拝している宗教に倒錯し始めたからだ。』
『そして間隔を空けずに、遠く離れた国に戦争を仕掛けたんだよ。』
『そうして、何年も時間が経った。』
『それは惨たらしい光景でね。』
『ああ、これもかたらせてもらおうか。』
『その国は大国だった。』
『その隣には小国があったがその時は、小国の王に「毒薬」を飲ませたようだね。』
『正に『外道』、『恩知らず』。』
『いや、それはそれで『アレ』に口利きする口実になりそうだな。』
『……そうして、滅ぼした後のその国にはある噂、いや。』
『一つの口伝のみが遺された。』
『魔物に愛された、宰相の口伝だ。』
まるで、少女は見ていたかのように。
記憶にある大切な想い出でもかたるように、他人事に思われるほど淡々と。
それでいて大袈裟に。
写生をしながら、ゆっくり喋る。
『少女』、『アリア=ミーツ・セリソネオ』は何処かの小屋の中にいた。
どうやら場所を移動していたようで、こちらは気を揉むしかしてない気がするのだが。
当の本人は飄々として、笑っているばかりの『彼女』であった。
本当に漫画家かと、疑われてもねえ。
ふふ、そういうことがあの『仔』の好みだそうだよ。
『まるで人形のように綺麗だ。
けど、子供のようにけらけらと笑う。』
『確かに、確かにあの『仔』たちはとても可愛らしいさ。』
そうしたことがあった訳なのだけれど、名も知らない「城」にいる『魔族』はと言うと、『魔王』に命じられることも無く絶賛侵入しているのである。
そして『魔王』は、静かに『魔族』を見守っている。
神々と邪神の一部も、ほんの少しだけ面倒事を起こしつつも見ているようだ。
今宵は赤くなってしまって明けない「夜」を眺めている、「何者か」は「城」にある何処かの暗い室内の天井に張り付いていた。
ただ理性がなさそうだ。
何処か暗く虚ろな目を細めるのみ。
これ以降の様子は暗くて伺いしれなかったが、何かしら面倒を引き起こしそうである。
それによって引き起こされる、弊害の損失は甚大な被害になると嫌でも分かるのが非常に辛く、頭痛を増大させる。
もう一人の「少女」は気絶でもしているのか、中々起きてはくれない。
ぞんざいに扱われては無い様子だ。
うぅむ、アレらよりは扱いに困る存在では無いが。
どうしたものかと思われたのだろうか。
それでも、やはりと言うべきか。
片腕と両眼を喪失しており、このままだと視覚は役に立たなさそうだ。
魔物に取られたか、怪我したか。
それはそれは綺麗にくり抜かれているためそれはなさそうである、“残念なこと”に。
しかも内部の魔物の仕業でもないとなれば、捜索や魔物の特定に時間を取られることは確実だ。
『さぞや“少々面白い状況”に、変わってくれるだろうから。』
『それから怪我でもしていてくれれば、更に“都合のよかったガラクタ”だと言うのに。』
“愛している”よ、「可愛い可愛い」キミをね♡
『お目覚めかな、ようこそ。』
ーーーあなたを大切にしてくれない残酷な邪神のいる世界へ。ーーー
『…………………?
……私の目どうなってんの?っ痛!』
流した血の量が多かったのか、血痕が付着したままの汚れた布や包帯だったが。
どうやら『少女』を助けようと、医療や治療分野に秀でている心優しい魔物が止血をし、治療してくれたようだ。
『『人の仔』に粉骨砕身する性分なものでね』
彼はそつなくこなしながらも、不器用な口調で心配をしていた。
治療魔法をかけても油断は出来ないと思ったのか、上に掛け合い「落ち着くもの」をと、差し入れしてくれていたようだ。
それだけでなく、『少女』の寝ている所から少し離れた処に置いてくれていた。
その香りが、「少女」の鼻腔をくすぐる。
……な~んだ、「つまんない」ことをしてくれるじゃん?
ねえ、そう思わない?「アン」。
誰かが「心配」していてくれたようで、『少女』はなんだかくすぐったくて温かな気持ちになった気がした。
手際がいいのか丁寧に巻かれており、痛々しい姿となっている。
名は今のところ“分からない”が、ある女神から強奪したであろう『名』がある。
『ん~…目云々のことは置いとくか。
それにしても、ん~…あの『魔物』。
なかなかしぶとかったなぁ。まあその報復に、もいどいたはずなんだよ。どこ行ったっけか。』
『お、この感触は……ん?』
『この手の感触は、ん。』
冷や汗がつーっと背中を流れた。
「冷たい」手だ。
『………』
いつの間にか、「何者か」がこちらに来ていた。
その容貌は美しく褐色肌だ。
胸よりは少々短い長髪は黄土色で、それを少し整えているようで清潔感が上昇している。
そして、目的は不明だがなんの為にハーフアップらしき髪型にしているのか。
城内にいるようで、「何者か」は男性である。
それから虚ろな目を向けている。
虚ろでありながらどこか静かな怒りを感じる、あるいは。
手を掴んでいるであろうこの「何者か」は、先程『死霊の神』の呼び水となったばかりであるが。
名も知らぬ「何者か」は無言のまま、少女の頭を掴みずるずると引きずっていく。
そして、さ。
冷たい地面に頭を叩きつけ、ひとつの火を操り少女の身体に巻き付ける。
赤い火でなく、黄色がかった紫色の火をね。
べらべらと喋る人の仔はお嫌いのようで、不機嫌になられる。
それはあの、「ティアーベリ」を作った『少年』も同様だよ。
それから、当然のように。
がんじがらめにし始めた「何者か」の瞳は、相も変わらず虚ろである。
ああ、簡単には死なないから安心して欲しい。
一応補足するとだな、コイツら頑丈なんだよ。
『クソッタレ共』の“お人形さん”だからなのかまぁ中々死ににくいし、暴れるからこうするのが手っ取り早いんだ。
『人の仔』に擬態していたな、コイツ。
あーあ、よりによってか。
『アイツ』の寵愛を受ける『人の仔』にわざわざなるとは、ご苦労なこった。
そんなんだから、“お仕置”されんだ。
よぉーくそのみすぼらしい身体に叩き込むんだな。
それと、神々とは真反対である邪神の一柱の力を見せるまでもないが。
よくぞオレ達が、寵愛する『人の仔』らに擬態してくれたな。
来い、【人間】。
オレは死なせる価値もないと思っているが、『アイツ』はどう思うか見ものだな。
相も変わらず、邪神達は平常運転だ。
少しは平和な証拠である、これでも。
申し訳ないが、綴っただろう。
申し訳ないが、かたっただろう。
『無情で残酷な邪神』だと。
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