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貴族貴族龗。★ー不用心不用心、乱心。ー
しおりを挟む『シャーロット、民を守って欲しい。』
『仰せのままに、『我が君』。』
『あ~、そうだった。……勿論君の命を守るのを優先してくれると、私としては嬉しいのだがどうだろうか。》
《………はい、『我が君』様。》
《……………その、名前呼び、は……それほどしないのに、………珍しいな。》
《……?
…………『私』を拾って下さったのは、『我が君』唯独りにございますので。》
『…………………。』
『『我が君』…………?
如何なされました?………[ノイズと砂嵐が酷く音声不明』様。』
そこへ「追い打ち」をかけるように、“解っているのか”解っていないのか誰何するようで、疑問を持ってその綺麗な声を耳元で「唄うかのように」つらつらと出した「シャーロット」であった。
顔を覆い、ふるふると震わせる『人の仔』の耳は如何程か。
少しの間、砂嵐で画面が見えなくなった。
《……………………》
直ぐに戻ってさ。
そして『王族の一人』が、理性の限界を迎えそうになった。
なんともまあ“運の悪いこと”に、「来客」があるようで。
可愛らしい悪戯じゃない意図を持って其処へやってきたのは同時だ。
顔を隠しているようで、視線を『崇高な王族』へ向ける。
いやらしい目だ、そして淀んだ目をしている。
面白くもない、ただただ不愉快で堪らない。
すると「怒りを抑えている王族」を見ていた『野盗』の一人が「愉快そう」な笑い声を出した。
『お目当て発見~!『王族』サン方はいらねっ。』
武器を取り出し始めた。
その言葉からして何かしら、また誰かを狙っているようだ。
それこそ王族の皆様を直接殺害に出向くほどなので、強い「恨み」でもあるのだろうか。
それは大変な事になったのだろう、まさに恐慌状態にでもなったのだろうと推測できる。
王族の一人が兵士に命令し、杜撰な守りをさせた。
それで、そう。
「偶然」王族全員「魔物」に襲われ、王子は命からがら生き延びた、とね。
そしてこのように言ったのであろう。
『こんなことをさせるつもりじゃなかったのですよ。』
へらへらと笑っていた一人の『王子』を『王族』達が、見逃す筈がない。
そう易々と許すはずもなく。
さて、その魔物と云うのは狡猾だ。そして長く生きてる個体が多い、主に「キイエティ」や「サングイスハバリー」等だろう。
そして中には『人の仔』に擬態、または変化だったり『人の形』をするといった個体も。時たま居るという訳だが。
なんの目的で『王城』ひいては城下町へ、来ていたのか。
人も魔物もそう簡単に変われん、そういうものなのだよ。
あとはご想像にお任せという奴だ。
《シャーロット!!》
《………仰せのままに。『我が君』。》
「バレる」のを承知で、『囮務めを果たそうと奮闘する』人々が『シャーロット』に『合図を出した』のである。
『彼女』は「唯ひとり」のみに、反応した。
それが恋から来るものか、愛から来るものか。
きっと神のみぞ、知る世界である。
そうして、『シャーロット』は浮遊し逃げ仰せそうになる。
……生憎、花を楽しむのは『善意や慈しみから来るモノ』だけではない。
「目の前」に赤い液体がぬらぬらと輝く槍が、いくつも迫ってくる。
自らの護るモノのために………。
《さあ、相手は容赦なく襲撃してくる。
かけてはくれるか。》
《ワンハウンド ツーハウンド レムリア ナベリチュール クレペアリス ルベウス》
“それ”を合図にしたのか、なんなのか。
判らないが咄嗟に『シャーロット』は、その槍を身体を捻りながら躱して、掴んだ。
それから『敵の方』へと狙いを定めつつ、腕を振りかぶった。
その細い腕からは考えつかない、力強い投擲を見事にしてのけた。
すると、『シャーロット』の白い肌に切り傷が出来始めた。
腕、脚、顔、耳、腰、どんどん切り傷が増えていく。
『あなたは私を知らない。だが私はあなたを知っている。』
偽りでも、真実でも。名前を言わない。
そんな『彼』は慕情を貫き通すのだろう。
そう言えば、そんなことを言っていた。
『形容するなら、それは』
『決して赦さない、我らの人の仔をお前達は。』
『……………………ふ、「怒るなよ」。落ち着け。』
『……………』
『欲しくても手に入らない美味しそうな果実のように遠く見える人々の声だろうか』
残念だけどそれをもう少し待てなかったのか、と呆れる事態になったのだけれども。
それにしても「世間」に伝わる児戯の絵本では少ししか語られなかったが、「彼奴ら」が改竄でもしたか。
『………「中々面白い事」になってきたじゃないか、なぁ。』
『[ノイズが酷くなり音声不明]!』
『だからそれを妨害する為に、邪神と神々を転生させたと?』
『………「愛おしい」『人の仔』らだな、【救済】したくなる程に!』
『………………『人の仔』を護るがために、我らは………。』
そうだなー、たった一つだけ綴れるのなら。
それは『今となっては』もう語られることは無い、忘れ去られた「おはなし」で。
『かたられる』ことの無い「おはなし」だ。
『悲しいなあ。僕らはキミを待っているのに』
『悲しいなあ。僕らはキミを待っているのに』
『………○×、君は僕が守ってあげるからね。』
『…………私はあなたのことを待っているのです、『シャーロット』。
あなたに証を刻んであげましょう、「愛しき魔性の花」。』
『……『シャーロット』、君は………「綺麗だ」。』
慕情を持つモノ、一言一句を同時に言ってのけた二人に、『研究員』。
そして『王族の一人』。
………各々の思惑が交差し始めたようだ。
あるいは自らのために、さあ。
『鬱陶しい【人間】を撃退せよ』。
『ふふふふふ。「彼奴ら」に妨害されないというのは、なかなか爽快ですね。』
何処かで、「女を責め立てていた」。
………明けの明星が昇る時間に青姦をしており、余裕だとでも言うかのように耳元で喋っていた。
『魔王』に関係のある「魔族」を、酔わせていたようだ。
酔わせ、思考能力と判断能力を鈍らせてそれも遅効性の睡眠魔法か。
また薬物か何かを服用、更に敵の放ったスパイに疑われないように撒いた上で、念の為にと。
ぺんぺん草の生えない処にある、洞穴へ誘った後で。
徐々に快楽にオトすとは、いやー策略が天晴天晴。
それね!天晴過ぎて俺ちん、引くわ~。
………さて、準備でもしましょうか。
……それは別の件であって関係がないと思うのですが念の為。
それに、今回も更なる『妨害』がないとは言いきれませんからね。
例外はいくらでも、湧いて出て私達を責め立てるのです。
………それに、あの城にも招待したいのですよ。
……ああ、もう少しで。
おまえを手に入れる時が訪れる。
『………楽しみです。』
……そんな、貴族の格好をしていた「男性」は獰猛な笑みを口許に薄らと浮かべ着々と準備を進めていたのだけれども。
………先程の『笑み』とは全く違っていて、獰猛な笑みと色気が含蓄されている微かな笑みだった。
………「それ」が逆に怖気震う、または恐怖をかき立てるとでも言ってみようか。
【《魔王様、敵は油断しておりません。どうかご武運を。》】
【《助かる、解った。
万が一のことも考慮し、連絡を控える。》】
【《だが何かあったら報告を。
これ以降は、『イーファ』。》】
【《……「ソレ」が妨害をしてくるか監視しつつ、浅慮な女として立ち回れ。》】
【《はっ、腐槞の民生は我が部隊にお任せを。》】
【《腐槞を奪わせるな。》】
暫く、念話が続いたがその間「悟られないよう」出来ていたかは……『反応を見る』とするか。
『ふむ、……ダウンしてしまいましたか。』
その瞬間、身体に電流が走る。
不味い。
もしや息が安定していることで、「バレた」か。
クソ、耳聰い!
低い声が耳元で「絡めてくる」。
『私を欺こうとしても、「こうなる」。』
届く範囲全てを今宵も明け方の明星が照らす。
けれども、それに応じて影は深くなる。
………月が綺麗ですね、『魔王』様。
……貴方も、この月を見ていてくださっていますか?
……私にとって月はずっと綺麗でしたよ。
………朝が明けそうになる、すると。
『空』がそのまま明けることなく、「ベール」をかけられたかのように『夜』へ変じる。
白かった『月』が、徐々に赤くなる。
完全に赤くなることは今のところないが、油断すると「狂化」の効果が及ぶだろう。
……今度はあの神の仕業か、とため息を吐きたくなる。
『………『イーファ』は強いが、この有様だ。
それに俺の側近じゃないから、直接鍛えてはやれない。』
……低い声がカーテンの向こうから、静かに響く。
『彼らに頼んでみるとするか。』
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