可笑しな漫画家が異世界転生した模様。ーただの神様達と神獣や少女で漫画家を困らせるようです。ー

書物に残骸として遺るは悲しみと微かな希求。ー恋々蝶番と云ふ。ー

アリアが本を本棚に戻して、一礼し部屋を出ていったのを見届け、『ギルドマスター』の『ススピリ』は職員に訊いた。
「あの本の、内容気になるか？」
「………………貴女が体験してきたことと貴女がそう言うのならば、ですが。」
「ふふっ、それは本を読んでみなければ分からんよ。」
「それもそうでしたね、『クローリア』。」
「……あははは！随分大人しくなったと思ったらまだそれは直らないようだな！」
「貴女のおかげで直りませんから。」
「…………ふっ、ふふ……。」
ぷるぷると、身体を震わせ笑う彼女に咎めるように平坦な声であくまで恭しく本を持ってくるように、懇願する職員の体には所々、今は古い傷跡となった『裂傷』があった。
その中には、刀傷のような或いは……とにかく刃物か何かで切られたようで痛々しい『傷』も、いくつか存在している。
それは、……いや。
『彼女』が話すまで待つとしよう。
それが私、『ギルドマスター』の役目なのだから。
「……これでよろしかったでしょうか、『ギルドマスター』。」
「………………ああ、ありがとう。
いつも、君には助けられているよ。この世界に剣の導きあらんことを。」
「………いえ、私こそ貴女には……」
見つめると、ハッとしたかのように気を取り直して咳払いをした彼女だったから。
「……解っている、それでも私には君が、君たちが必要なんだよ。」
そのまま微笑みながら本に目を通した。
……さあ、この書物には何が書かれているのか私たちが、見届けようではないか。