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護衛とかの名もなき悪魔と少女の街探索。ー掲示板。ー
しおりを挟むああ、あれを止め忘れた。
『グイベヴェルロフー』の二十匹のうち十五匹がまだ飛んでいたため、縦横無尽に向かってきたところで翼を斬るべく、懐に隠しておいたナイフを取り出して一匹の羽に向かって投げた。
それから投げたナイフを、追いかけるように小さく跳躍した。
ナイフは一匹の羽めがけて、正確に飛んで行った。
追いついて、ナイフを掴み縦に振り下ろし、ナイフを振って血を払った。
その後に、逃げる隙を与えない程度の速度でもう一匹の『グイベヴェルロフー』の顔面に向かって、ナイフを素早く投げた。
その『グイベヴェルロフー』は、顔面ごと貫かれ絶命したようだ。
片方の羽が切れたせいか、痛みに鳴き声を上げバランスを崩したようで、ふらふらと落ちてきていた。
が、近づくことなく鳴き声を出して、威嚇している様子ではある。
さて、この『グイベヴェルロフー』は「活かす」か否か。
「聡明」な個体だろうことは確信している。
別の『グイベヴェルロフー』の近くに落ちていたナイフをすぐに拾い、まだ生きているその『グイベヴェルロフー』の羽を根本から切り落として行った。
それから、頭部に何度も突き刺した。
その内動かなくなったモノを見つめ、頬についた血を腕で拭うと狼狽えたであろう十五匹に向かってナイフを向け、挑発するようにナイフを動かして構えた。
今の私は、どんな顔をしているのか。
恐らく、片方の羽を失い地面に落ちて、飛ぶことも今は叶わないであろう「この」聡明で、可憐な『グイベヴェルロフー』は知っているのだろう。
それから、十匹の頭部と胴体をナイフで、切り離して行く。
あとの五匹は刀を鞘から外して使う事もなく、ナイフだけで羽と頭部を貫きその生命を散らした。
それを済ませると無詠唱で、その場にいた辺りの生物を消した…と言うより転移魔法で移動させた。
核は潰すふりをして。
頭部と胴体は幻惑魔法をかけていた。
飛び膝蹴りは軽く吹っ飛ぶ程度に。
蹄を捻り切ったのは一部の『サングイスハバリー』だけ。
『キイエティ』とその他を一匹ずつ残して、なのだけど。
それから、声をかけた。
『…………いるんでしょう?『かの名もなき悪魔』。』
「ああ、ここに。」
私の真後ろに気配を感じる。
(……はあ、『かの名もなき悪魔』は末恐ろしいものね。)
『…………その気になれば、この脆弱な小娘も消せるもの。』
「…………さあ、今すぐにでもその魔法を解こう。」
笑って、彼は魔法を解いた。
それから、私の首筋に当てていた鎌を離すと淡いエメラルドグリーンの光を鎌から出し、ポロポロと零れるように鎌が消えた。
その代わりと言うように、水色の光の中から銀の装飾が付けられ水色のようにも見えたけれど、蒼く綺麗な宝石が柄に一つはめられたナイフが現れた。
『これをアリアにあげよう。
きっとアリアの助けに、なるだろうからな。』
名はまだないからアリアが付けてみるといい。
ゆっくり考えて名をつけろ。
彼がそう言うと、蒼い炎がナイフから出現し微かな音を出して弾けた。
それはまるで私に挨拶をするかのようで、少々笑ってしまった。
『貴方の名前は『カエルレウム・キニス』。
『あちら』の遠い国で使われている言葉なの。
気に入ってくれるといいのだけど。』
私が微笑みながらそう言うと、蒼い炎が私にゆっくりと怖がらせないようにしてか穏やかな炎のまま、向かってきた。
不思議と熱くはなかった。
温度を下げていてくれたのだろうか。
その中から陽炎のように揺らめく男が、一瞬だけ現れた。
ーーー容姿説明に入ります。ーーー
白い面を付け、スーツをお召しになりシルクハットを被っておられる銀色の髪の男性がいますね。
ーーー容姿説明を終了致します。ーーー
彼女の手を取ると、口付けをするように流れるような仕草で恭しく、お辞儀をしながら指を面の方に持っていきます。
それから、恭しくお辞儀を致します。
彼は炎に紛れるように、揺らめいて消えた。
『感謝するわ。
どうぞよろしく。』
そう私が告げると、炎はナイフの周りにまとわり付き蒼い宝石を形成した。
「あら、くれるの?
ありがとう。』
そっと私の掌に置いてくれたため、お礼を言い炎を取り炎の元に口付けを、さり気なく返そうとした。
すると、蒼い炎が動いて空中に文字を描いた。
《いけません、一度のみならず二度も触ると私の掛けた魔術が解けてしまいます。》
「そうなの。
貴方の掛けた魔術は何なのかしら?」
そうして『かの蒼炎を纏う荘厳で侐を振りまくかの月に狂ったモノを鎖で縛るモノ』が、淡々と空中に文字を綴って行く。
《貴女に掛けたのは『認識阻害』魔術です。》
「あら、凄い魔術なのね。」
そう言って、目の前にいる彼女は笑った。
《全く、貴女を怖がらせないためにゆっくり近づいたもののまさか私のした事を、そっくりそのまま真似られるとは思いもしませんでしたよ。》
(…………その他にも掛けていますが、バレているようです…………。
『貴女』には敵いませんね。)
《それでなのですが、次はどうなさるおつもりで?》
「そうね、次は街に戻って改めて探索をしようかと思ってるわ。
貴方も手伝ってくれるかしら?」
《仰せのままに。》
「…………その演技はやめた方がいいぞ。」
『あら、バレてた?
貴方に。』
彼女は、いや。
目の前にいる女はそう言ってのけたから嫌味でも言ってやろうかと思ったが、怒りを抑えて黙った。
「………………。」
『黙り?つまらないわね……。』
「なんとでも言うがいいさ。」
「あの……どうしました?」
「何でもないよ、アリア。
ただのつまらない世間話さ。」
そう言って嗤った。
「そうですか。
それでは参りましょう。
『かの名もなき悪魔』。
『カエルレウス・ニキス』。」
「ああ。」
《はい。》
「『シルヴィセ』、後で細かい話をしましょうか。」
『あら、怖い怖い。
そんな物騒なもの私に向けないでくれるかな?』
「…………これで警告しますよ。」
『……ええ。
あのいけ好かない悪魔と契約しているから、契約しちゃダメってことを警告してきてくれたって訳なのね。』
「ええ、貴女は聡いのですね。」
『数百年生きてきたからね、それなりの悪知恵もあるわよ。』
「それだけではないでしょう?」
「ええ、貴女も聡いようだけれど?」
「ご謙遜を、元より貴女の智恵には敵いませんわ。」
『いいえ、貴女も私と同等かそれ以上の知恵があるでしょう?』
「貴女は、そうしてお戯れを仰いますね。」
『あら、心外。』
わたしはそうして、『彼女』に瓜二つな少女に向かって嗤い少女はその意図を理解したのか黙って目を眇めていたけれど、わたしは笑いを深めて肩に手を置いた。
それから囁くように、皆の元に行くことを促した。
『お行きなさい、『王女』さま。』
「……分かりました、『シルヴィセ』。」
彼女が渋々と言った様子で、それは滑稽だった。
わたしは手を離し、嗤った。
彼女によく似た少女は、わたしを眇め、皆のた。
それからみんなを追いかけて歩いていって離れたところでさらに人目を避けるように森の中に赴いて森の奥深く深くに湖を見つけた。
(……なんともまあ、皮肉で面白い因果か。
……それはわたしたちにとって、面白くもあり興味を引かれる物語にしかならないのだけれどね。)
空中に浮きながら、そうして嗤い踊るようにステップを踏んだ。
踏みながら誰にともなく、囁くように呟いた。
『貴女は何時、それに囲まれ破滅することも知らず水の底に沈む王女さま。
ああ、可哀想な王女さま。
貴女の忠臣が辿る果てに掴むは面従腹背か、貴女とともに泡沫と毒のそこに沈んで四面楚歌の末に破滅するか、の分岐になる事でしょう。』
。。。ーーーただの法螺吹きの『魔女』の話を聞いてくださってこれ以上ない程に感謝してるわ。
。。。ーーーー『セレリア・シェルペ』第三王女さま。
…………「聞いてはいないでしょう?」
あっという間に彼女の首を、掻っ切ったナイフが浮いています。
さて、それを操る者は何方の命令でこうして拐すこともせず、顔を見せることもせずどのような理由を持ちこんなひどい仕業をしでかしたのか、『皆様』は理解していましょうが御辛抱願います。
………さて、《貴方はどんな物語を紡いでくれる》のだろうか。
ああ、滑稽で哀れな法螺話でもあり、愚かなモノたちが紡ぐ物語でもあり、あなた達が描く漫画とやらやおとぎ話でもあり、木偶の坊共と踊る下手で愉悦に浸れるようで浸れないおかしなダンスであり、愉快な演劇の、結末はどうなるのでしょうね?
この言葉も法螺吹きの果ての、結果でしょうから。
……精々、わたしたちを愉しませてちょうだい。
「またここに舞い戻ってきましたね。
……これから、掲示板を見ましょう。
めぼしい依頼が、あるはずですから。
…『かの名もなき悪魔』。」
「街の入口まで790m。
……その入口近くに、見窄らしい格好の人の子。」
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