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確執と共に火蓋を切る戦闘。ー青い蝋燭が消える刻契りを結びます。ー

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『…………………………はあ?』
『ちょっ……お前は誰だ!?
名を告げよ!』
『……お前が来て早々名を告げる訳ないだろうよ、莫迦が。
『かの社の見張り番で敬愛者なるモノ』が、俺の顔を忘れたとでも?
『ブラッディーツクヒ・マンセロディリフーエ』。』
いつの間にか、そこ…『かの漫画家』の傍にいたモノは嗤う。
先程まで地に伏せていたモノは、ただの人形だったということを『貴女』は感じますね。
『なっ……!何故アタシの名を知ってる!?』
『さあ?何故だろうかねえ。
ま、知らなくても……いいさ。
……それにしても、そこのは中々やるねぇ。
なあ?
『かの社の神様でおヒメさん』。』
『白々しいことを言うな、お前も。
クック。』
驚いている『かの社の見張り番で敬愛者なるモノ』を誤魔化す形で一蹴し、玉座にいるモノに顔を向けず淡々と、声の調子を合わせつつも声をかけました。
そして玉座の傍で肩を震わせ、笑う彼女でした。
『さぁて、なんの事だかね。
じゃあ俺は、お暇するよ。
あ、これは手土産だ。
またね、『かの社のおヒメさん』、『かの社の見張り番で敬愛者』。
……またね、『かの漫画家で転生した魔導師の卵』。』
『ええ、また。
『かの悪魔の神』よ。』
そう言って消えた悪魔の神様を見つめ微笑んだ彼女は、微かに『かの悪魔の神』の指が『かの社の見張り番で敬愛者なるモノ』の主である『かの忘れ去られた社の神様』の頭に、向いていたのを見抜きました。
すると、『かの忘れ去られた社の神様』の頭と眼に向かって銀のナイフが二本~三本、飛んできていました。

それを取り出した刀の柄で弾き返すと、ナイフは自然と方向転換し階段のそばにあった、蝋燭に向かって飛びました。
そしてナイフの刃ごと青い蝋燭の炎を纏い、一本は回転しながら『かの忘れ去られた社の神様』に向かって行きました。
一本は青い蝋燭の火を消すように、素早く回転して強い風を起こしました。
『無駄だ、私しかそれは消せない。
可愛らしいナイフの底に、ドス黒いモノを抱えていても。』
そう言って足に力を入れ、跳躍すると蝋燭の傍で回っているもう一本のナイフを蹴り飛ばし、壁にナイフが刺さる所を見もせずに青い蝋燭のそばにあるナイフを掴み取ると、壁に投げつけて自分の方に向かってくるナイフを躱して転移魔法をナイフにかけ、蝋燭に向き直りました。
そっとひとつひとつ丁寧に息を吹きかけながら、こう囁くように言いました。
『貴女は、何も知らなくていいのだよ。
この光景が例え夢幻のように、消えてしまったとしても。
朽ち果てた記憶として、ここに有るのよ。
…だから、ただ今はお眠り。
ただの人間さん。』
そして、周りは冥くなりました。
すると、青い光が彼女の指からほんのりと浮き出ました。
『コツ、コツ…。』
それから、ひとつ靴音がしました。
浮き出た時に見えたのは、別の男性が『かの忘れ去られた社の神様』の指に、口付けをしたところでございましょう。
別の男性は、私を見つけると指を手に当てて意地悪に笑いました。
そんなところで、私の意識は徐々に暗くなりました。
(……私は、あんな風になれるだろうか。
………まあそんなに願ったって、努力するしかないから…仕方ないよね。
……努力します。
夢でもいいです、だから。
………恋を、愛をください。)
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