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第1話 第三王子はお風呂に入りたい

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「シュウ!こんなところで何をやっている」

「申し訳ございません。ジェニス兄上」

僕が、王宮の庭園で植物を観察していると、第一王子であるジェニス兄上に声を掛けられた。

「また、貴様は何もせず王家の役に立っているとは思えん。その辛気臭い顔をどうにかしろ! うせろ! この役立たずが!」

「は は……い」

そう言い放ち、ジェニス兄上は、従者と共に薄み笑いを浮かべ去って行った。

何も言い返すことも出来ず、ただ、黙ることしか出来なかった。
正直、兄上とは仲が悪い。これは、どうしようもないことなのだ。ここ、フロンシニアス王国では、王太子は決まってはいない。父である国王が子の能力を見極めて決定する。昔は、能力に関係がなく、長男が王太子と決まっていたが数世代前の国王が暗君で無意味な戦争と浪費で国全体を疲弊させ危うく財政破綻させる所だったが、義勇に駆られた弟王子が王位簒奪した経緯から能力で王太子を決める事になったのだ。皇太子の座を狙って、如何に自分が優秀であるかを主張し足を引っ張る。兄弟同士が仲が悪いのだ。

「はぁ~ なんなだよ。こっちは王位とか皇太子とか興味ないのにまいるよなぁ 早くお風呂に入って臭い体をなんとかしたいんだけど」

フロンシニアス王国では、お風呂に入ると言う習慣がない。水に浸かると瘴気に体を侵され病気になるなど迷信の類が酷い。貴族でも庶民でもそれは同じで、人によっては今までに風呂に2度しか入った時が無いなどと豪語する奴もいる。体臭を香水で誤魔化すから質が悪い。男性、女性係わらずみんな一緒。

不潔過ぎで嫌になる。日本にかえりたいなぁ。

申し遅れました。僕は、フロンシニアス王国の国王バイクッラ・ロウド・アルパトスが第五子 ロッシュウ・ニオ・アルパトスと言います。第三王子です。『シュウ』とお呼びください。
これでも、前世と前々世の記憶を持つ日本人だ。

前々世については、51歳の時に病で死んだ。
サラリーマンだった僕は、家族の為とがむしゃらに働き、気づいた時にはもう手遅れだった。そして、愛する妻や子供達に見守れながら死んだ……
妻や子供たちには迷惑を掛けてしまった…… 
もう一緒にいることが出来なくて…… ごめん。

前世は、小学1年生の時に、保育園からいつも一緒だった幼馴染と川で遊んでいたら、幼馴染が誤って川に落ちた。それを助けようと川に飛び込んだけど、所詮は小学1年生どうすることも出来ず溺れて死んでしまった。幼馴染がそのまま溺れたのか、助かったのか、わからない。生きていて欲しいと思う……

溺れて意識を失い、目を覚ました時には赤ん坊でこの世界に誕生した訳だ。それから、7年が過ぎ前世と同じ7歳になった。

「ねぇ、体が臭くてお風呂に入りたいんだけど、準備できるかな?」

メイドのレイニーに声をかけた。

「ロッシュウ様!また、そんなこと!あまりお風呂に入られると病気になりますよ!」

「前にお風呂に入ったのが、2週間前だよ。体が痒いよ」

「ダメです。我慢して下さい。」

ちょっとキツメに言われ、僕の提案は、即却下となった。
メイドのレイニーは、子爵家の三女で僕のメイドとして仕えている。年は16歳位だったと思う。
レイニーも類に漏れず迷信信者だった。
僕が一生懸命、衛生の観点から説得しても頑なに首を縦に振らない。
レイニー自身も僕を心配してのことだから強くは言えない。

以前 国王である父上、兄上達、宰相、執事、家庭教師に衛生管理について説明をしたが、子供が何を言うとばかりに碌に話しを聞いてくれなかった。
それ以来、僕の評価は無能扱い、役立たず、我儘すぎるなどだった。
なぜ解かってくれないと憤慨したこともあったが、今はもう諦めている。

悲しいなぁ……

それでも、一週間に一回は、お湯で体を拭いてもらっているけど、メイド達は良い顔をしない。

「体を拭くだけでもサッパリするよ!試してごらんよ。」

と伝えるが

「私どもは結構でございます。」

即、お断りの返答。早速のご返答ありがとう(泣)

そんな感じで、日々、不潔極まりない生活を送っている。
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