ざまぁにはざまぁでお返し致します ～ラスボス転生王子はヒロインたちと悪役令嬢にざまぁしたいと思います～

第１１５話 メアリー

ノリノリの話し合いが終わりヒロイン達は部屋から出て行った。日本に戻るのは、ルナール、マリア、フローラ、ミレーユの４人。クリスは日本には帰らない。メアリーは保留。何故メアリーが保留をしているのかわからないが、まだ時間はたっぷりとあるから自分自身で決断して欲しい。

僕も日本に帰りたいと思った時期もあったが、この究極魔法は幾つかの工程がある。まず、身体と魂を分離させる。そして、バスの事故が起こる前に時間逆行魔法と同時に異世界召喚召還しょうかんしょうかんの究極魔法を使わなければならない。僕自身に使ってみようかと思ったが、身体と魂を切り離した瞬間、時間逆行と異世界召喚召還をしょうかんしょうかん唱える事が出来ない。これが、僕・に・は・使・え・な・い・究極魔法の理由なのだ。


『コン　コン』

急にノックの音が聞こえた。サンペータ達だろうか？

「はい、開いてるから入って良いよ」

僕はサンペータ達だと思い、フランクに返事をした。

『ガチャ』

「アレク、ごめんなさい」

部屋に入って来たのはメアリーだった。

「あれ、どうしたのメアリー？」

「アレクにお礼を言いたくて」

「お礼？」

一瞬、メアリーの一言に先程のおふざけのお礼参りでボコボコにされるのではと身構えた。

「アレクありがとう。さっきはわざと店長さん役になって、みんなが怖がらないようにしてくれたんでしょ？」

「――!?　何の事かな？」

「ルナールは日本に帰ると決めたでしょ。アレクの話だともう一度死ななきゃいけないみたいじゃない。一度体験してしてしまうと、どうしても躊躇してしまうものなのよね」

「確かにそうだね」

僕は惚けた顔で答える。

「それに、あなただって本当は日本に戻りたいんじゃないの？」

「僕が日本に？　僕は転生者じゃないから日本に帰りたくないよ」

「アレク……　あなたそれで誤魔化しているつもりなの？　元ＪＫだからって馬鹿にしないで」

メアリーは怒った顔をして僕を睨んでいた。

「逆に、どうしてメアリーは僕を転生者だと決めつけているんだ？」

「見てたらわかるわよ」

メアリーは僕の質問にドヤ顔で答えやがった。

「えっ!?　どこが？」

「まずは、バーベキューコンロね。あれはどこからどう見ても日本の物じゃない。あと焼肉とゲンタレもね。第一、スタミ○源たれなんて日本にしか無いでしょ！　私も好きだからよく食べてたモン」


――!?　不覚だった……　何でメアリーがスタ○ナ源たれを知っているんだ！　源たれは地域密着型の焼肉のたれなんだぞ！　何でお前が知っているんだぁぁー！　


「そ、それは……　偶然にそうなっただけで……」

「ウソね。あなた日本に帰りたくないよ。って言ったじゃない。日本を知らなかったら帰りたくない。とか言わないでしょ」

「――!?」


――忘れていた……　コイツ、天才軍師だったことを忘れていた……　僕はヤツの謀略に引っ掛かってしまっていたのか。なんかズルい。


「ジャージだってそうだし、天使の羽根なんて発想はコテコテの日本人じゃない。大人しく認めたら？　元日本人のアレク様」

「……………………」

「そんなに転生者だって認めたくないの？」

メアリーは姑息にも上目遣いで僕を見つめていた。


「――わかったよ。認めるよ。君の言う通り、僕は日本人で君達と同じようにバスの事故でプリストの世界に転生したんだ」

ここまで証拠を揃えられたら白状するしかなかった。

「やっぱりそうだったんだ……」

「みんなには内緒にしておいてくれ。彼女達の推しの存在が転生者でしたでは可哀想だからね」

「そうね。あなたの事は今まで通り言わないわ」

「ありがとう」

僕はメアリーに頭を下げた。

「それでアレクはどうして日本に戻らないの？　前世で嫌なことでもあったの？」

「そんな事なかったよ。僕の場合、帰りたくても帰れないんだよ」

「どうして？」

メアリーは不思議そうな眼差しで僕を見る。

「究極魔法が厄介でね。身体と魂を切り離すのに詠唱を唱えなきゃいけない。ここまでは良いんだ。魂だけになったら、転生召喚召還しょうかんしょうかんと時間逆行の詠唱が唱えられないんだ。だからどうしても帰れないんだよ。それに……」

「……………………」

メアリーは僕の話を聞いて黙り込んでしまった。