上 下
91 / 130

第91話 宣戦布告

しおりを挟む
真剣な顔で、僕を見つめる父上から

「アレク来たか。重要な話がある」

「はい……」

僕が何事かと返事をすると、父上は

「おい、話せ」

父上は知らない顔の男性に命令をした。

「ハッ!」

その男性は短い返事をして、

「我が諜報部からの連絡で、ケーリンネガー王国とグランプロス帝国の軍勢が、フロンガスター王国へ向けての準備が活発なっているとの報告が入って参りました。近いうちに、フロンガスター王国への進攻が始まると推測されます」



「――!? ついに来たか……」

フロンガスター王国対ケーリンネガー王国、グランプロス帝国連合軍の戦いが始まろうとしていた。

「アレク。戻って来て早々悪いが、国境の警備を厳重にしろ」

父上の一言で、その場の緊張が高まった。

「ハッ! これより国境警備の任に行って参ります」

僕はそう言って、臣下の礼をとり、国境へと向かった。





僕が国境沿いにあるラニバーレ平原に赴いたのは一週間ほど経っての事だった。ラニバーレ平原はケーリンネガー王国との交通の要所であり、陣形を展開させるのも容易な場所でもあった。

そして、ここラニバーレ平原が、僕らフロンガスター軍が最初の決戦場所として定めた場所なのだ。

グランプロス帝国国境沿いには作戦立案者でもあるギョシン騎士師団長とウィザード魔法師団長に指揮を任せるつもりだ。彼らなら作戦を必ず遂行してくれると信じている。

ケーリンネガー王国攻略軍約25000名を指揮するのは総司令官件、第1軍司令官アレク・ガルラ・フラスター。つまり僕である。副司令官には父上からの信頼が厚い、カルイ・チャラ・オーダ陸軍大将軍が僕の補佐をしてくれる事になった。一見、DQNチャラ男オヤジに見えるが、中身は誠実な紳士として、そのギャップに軍人問わず市民からも絶大な人気を博している。彼なら戦場の機微な匂いもかぎ分け、正しい判断をしてくれると思う。

一方、グランプロス帝国攻略軍約40000名は第2軍として布陣している。第2軍司令官はギョシン騎士師団長、副司令官にはウィザード魔法師団長が務める。正直に言えば、第2軍の方が主力と言っても過言ではない。

第1軍は、あくまでも専守防衛が基本方針であり、ケーリンネガー軍の戦力を削る事が目的なのだ。

ケーリンネガー軍にとって、ラニバーレ平原は地獄になるとも知らず、この地にやって来るだろう。野戦だと思って戦っていたら、実は攻城戦でしたというのが、この作戦のオチなのだ。 ――クックククク…… ついつい笑いが込み上げてくる。


第1軍は陣地構築に取り掛かった。陣地構築と言っても、馬防柵を第1防衛ライン陣地設置し、その第1防衛ライン陣地から後方50ⅿには、第2防衛ライン陣地を、その50ⅿ後方には、第3防衛ライン陣地を、その後方には、第4防衛ライン陣地、第5防衛ライン陣地が続く。あとは、申し訳ない程度であるが、ケーリンネガー軍にちょっとした嫌がらせをする為にトラップも仕掛けて置いた。そして、遥か後方には治療院と宿舎など兵士が快適に過ごせる施設を建てた。


「アレク様、ついに陣地が出来上がりましたね」

陣地視察に一緒に出掛けていた。カルイ副司令官が呟いた。

「カルイ将軍もお疲れ様。魔法のお陰で早く陣をが出来上がって良かったよ。もし、魔法が無かったら、もっと遅くなって、開戦に間に合わなくなるところだったよ」

「しかし、アレク様から作戦を聞いた時には驚きましたぞ。野戦で攻城戦をやると言うのは。今まで聞いたことが無いですからね」

「そうだろうね。ケーリンネガー軍のヤツらには泣きを見てもらうつもりだよ」

僕はドヤ顔で答える。実際には織田信長の長篠の戦いを参考にさせてもらった。もらったというよりはそのままコピペした感じだ。

「しかし、この陣地。実に悪意まみれの外道陣地ですな。心の底から考案した者の狂気を感じますぞ」

カルイ副司令官は気持ちの良くなるくらい、僕を絶賛してくれた。 ――ありがとう。カルイ副司令官!



「司令官! 陛下より伝令が届いております。大至急本部までお戻り下さい」

伝令係の兵士が、父上からの伝令が届いた事を告げた。急ぎ本部に戻り、伝書を開いてみた。そこには、


『ケーリンネガー王国、グランプロス帝国の両国はフロンガスター王国に対して宣戦布告をする』

と書かれてあった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

悪役令嬢は始祖竜の母となる

葉柚
ファンタジー
にゃんこ大好きな私はいつの間にか乙女ゲームの世界に転生していたようです。 しかも、なんと悪役令嬢として転生してしまったようです。 どうせ転生するのであればモブがよかったです。 この乙女ゲームでは精霊の卵を育てる必要があるんですが・・・。 精霊の卵が孵ったら悪役令嬢役の私は死んでしまうではないですか。 だって、悪役令嬢が育てた卵からは邪竜が孵るんですよ・・・? あれ? そう言えば邪竜が孵ったら、世界の人口が1/3まで減るんでした。 邪竜が生まれてこないようにするにはどうしたらいいんでしょう!?

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

婚約破棄?王子様の婚約者は私ではなく檻の中にいますよ?

荷居人(にいと)
恋愛
「貴様とは婚約破棄だ!」 そうかっこつけ王子に言われたのは私でした。しかし、そう言われるのは想定済み……というより、前世の記憶で知ってましたのですでに婚約者は代えてあります。 「殿下、お言葉ですが、貴方の婚約者は私の妹であって私ではありませんよ?」 「妹……?何を言うかと思えば貴様にいるのは兄ひとりだろう!」 「いいえ?実は父が養女にした妹がいるのです。今は檻の中ですから殿下が知らないのも無理はありません」 「は?」 さあ、初めての感動のご対面の日です。婚約破棄するなら勝手にどうぞ?妹は今日のために頑張ってきましたからね、気持ちが変わるかもしれませんし。 荷居人の婚約破棄シリーズ第八弾!今回もギャグ寄りです。個性な作品を目指して今回も完結向けて頑張ります! 第七弾まで完結済み(番外編は生涯連載中)!荷居人タグで検索!どれも繋がりのない短編集となります。 表紙に特に意味はありません。お疲れの方、猫で癒されてねというだけです。

悪役令嬢・お助けキャラ・隠しヒロインって、役割過多だと思います。

章槻雅希
ファンタジー
皇国の重鎮セーヴェル公爵令嬢アレクサンドラは学院の卒業記念舞踏会で突然第9皇子から婚約破棄を告げられる。皇子の傍らには見知らぬ少女が寄り添ってこちらを嘲笑うかのような表情で見ていた。 しかし、皇子とは初対面。アレクサンドラには婚約者などいない。いったいこの皇子は何をどう勘違いしているのか。 テンプレな乙女ゲームに転生したアレクサンドラ。どうやらヒロインも転生者らしい。でも、どうやらヒロインは隠しルートには到達できなかったようだ。 だって、出来ていれば断罪イベントなんて起こすはずがないのだから。 今更ながらに悪役令嬢ものにハマり、衝動の余り書き上げたものです。テンプレ設定にテンプレな流れ。n番煎じもいいところな、恐らくどこかで見たような流れになっていると思います。 以前なろうに投稿していたものの修正版。 全8話。『小説家になろう』『Pixiv(別名義)』にも投稿。

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

一家処刑?!まっぴら御免ですわ! ~悪役令嬢(予定)の娘と意地悪(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

処理中です...