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第一章 幼少期

不知火の青との出会い3

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「私はヴィルクルス国第一子、ユーグリット・ミルス・ヴィルクルスよろしく。」

まっすぐに礼節のある所作での挨拶はとても気品があって綺麗ではある。
雰囲気は柔らかくて暖かいのかもと思うけれど、ヴィルクルス国は私に対しては正体と言うか畏怖の対象としてみている未来を知っているぶん王子であろうといまは警戒しておかないといけないかも。

でもなんでお父様はもっとも警戒している王子を迎え入れたのだろう?

「よろしくお願いします。あのーー少し気になってたんだけど、ユーグリット様は何故にこちらに来られたのですか?」

モヤモヤしてついつい聞いてしまうとユーグリットさんは、ちょっと困った表情のあと説明してくれた。

どうにもお父様がここの襲撃事件の報告を城の幹部官に知らせていた間に、ユーグリットさんは王より婚約者話しを持ちかけられたんだって。

で、まだそんな相手はいらないと突っぱねたもんだから、ちょうどお父様が宰相さんと話して帰る最中に、お前の娘がいたよなと押し付けたらしい。

お父様はジロリと王を睨んでたようだけど王命を糧に渋々って感じでここにつけれて来たのが真実だったようだった。

「ユーグリット様はまだ婚約者は嫌なんですね。」
「いやというか、私の場合は父上に対する反抗心からきてるからね。」

反抗心? ふむ、ゲームでも確か婚約者が決まるのは私のアルセイヌがごり押しでもぎ取った記憶がある。
そうだ、思い出した!
あの時もユーグリットさんは私の押しに負けて渋々って感じで、理由なんてアルセイヌの一目惚れだったように思う。

いまの私はまだお子様は恋愛は範疇に入らないから、ふむふむと頷くことしかしていない。

あ、もしかしてグイグイくる女性が後々に苦手になったのってアルセイヌのせいなんじゃ、で! 恋愛対象から外れてたんじゃないのかね、たぶん。

「反抗心からなんですね、ねえ...なら好きな人が現れるのを期日つけて王様に提案してみるのはどうです?」
「へ? 期日なんてつけても、父上が納得する気がしないような。」
「反抗心なら徹底的にですよ! しっかりと無相応な感じではなく、キチンと考えての行動の中での発言が良いと思う。」

親への反抗なら徹底的にしなくては気づいてもらえないこともある、適度にだけどね。

「......グライハイム侯から聞いていた女性とは違う感性を持ってるんだね君は。」
「え? ふむ、どんなこと言われているのだろう?」

お父様とはまだまだ交流はしていないから、どんなこと言われているのか気にはなる。

「双子の愛溢れる自慢と牽制を受けたからね、内容は秘密かな。」

ほえーーお父様の愛はとてつもなさそうだなあー。
ふふ、アルセイヌの心がまたぽかぽかしてる。

胸に手を当てて感じるアルセイヌの心に響くぽかぽかが私を笑顔にしてくれる。

「そっか、嬉しいかも。」

小さな沈黙が何故か落ちる。
ん? どうしたんだろう?
王子が妙に固まってるけど?

コテンと首を傾げてるとユーグリットさんは突如口に手を当てて何か小声でブツブツ呟いてるようだったけど、私には聞こえないせいで、先程の反抗心で思案してるのだろうと結論づけておいた。

数分ぐらいユーグリットさんとは他愛のない会話をしていると、唐突にライナリアが乱入して私もアルセイヌと会話するーって王子そっちのけで私の横に座れるなり。

「こんな風に会話するのが良いんだから!!」

とかちょっと理解できないこと言われてクエッションマークが飛んだりしつつ。
ユーグリットさんからライナリアに楽しい話題を振ったりしてくれた。

ユーグリットさんって意外にも寛容な性格だったんだね。
普通だとライナリアの態度って結構失礼だと思うんだよね。
まあライナリアは可愛いくて良いお姉ちゃんって感じだけど。

****

ユーグリットさんとは夕刻の時間に宰相さんが迎えにきて帰る時、私にさっそく実行してみることと。
少し言い淀みながらも、また今度会いたいと言われた。

え? 王子と仲良くするとか無理じゃね。

将来的に婚約話しとかないならいいけど、乙女ゲームでアルセイヌを不幸にしたくないんだよね私。

だけど子犬が捨てられてる眼差しと子供特有のキラキラが私の決心を揺らがせるもんだから頷いてしまった。

まあ友人関係なら大丈夫だよね、うん。

王子が小さくガッツポーズをしていることなど知らない私は呑気にそんなことを思っていた。

お父様が小さくため息を漏らしてたのは気のせいだと思いたい。

部屋に戻りベッドに横になってるとコンコンとノック音がして、どうぞと声をかけるとゲルフィンさんが入ってくる。

「お疲れのようですねアルセイヌお嬢様。」
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