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第一章 幼少期

魔力暴走事件の真意 前編ーグライハイム視点

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アルセイヌが奇襲にあう少し前、グライハイムは襲撃者を冷徹な眼差しと剣戟で一刀両断していた。
まさかの刺客がこうも早くとは計算外だった。

ケインとゲルフィンの調書はさすがだと数人を蹴散らした後に一人ゴチる。

「国の刺客か、それとも他の者に気づかれたか? それとも我が家に間者がいるのか?」

今度は徹底的に調べねばならぬかもしれん。

「隊長、こちらもほぼ殲滅を完了しました。」

部下の言葉にグライハイムは片眉が上がる。
ほぼだと! ふざんな!!

ガンッ! と剣を地面に当てるとヒビが入る。

「ほぼ殲滅したぐらいで報告してくるでない!! 周囲を巡回のちに副隊のクルードを発見次第、敵の首領を見つけてこいと伝えておけ!!」

クルードの奴もこの作戦での指示は把握しているが、念には念を入れておかねば我が娘に危険があるからな。

まさか魔力暴走がこの時期に起きるなど、神の悪戯かと呪いたくなるがな。

部下達はグライハイムが思考に入っていたが、一種の畏怖と尊敬の眼差しの後に走って行くのを見て空を見上げた。

空は星と月が眩しいぐらいに煌めき、風が緩やかに吹いている。

「なあ、神よ! 何故に今、我が娘に危険を晒す! 試練と問えばいいのか!」

グライハイムの声は誰も聞けことのない叫びだったが、小さな蝶が空に舞う。季節は冬に飛行する蝶を見て斬り殺してやりたくなる。

あの時娘が魔力暴走を起こしたことを思い出す。

****

あの日は月の女神の誕生祭、それぞれが家により祝い事をして一年の幸せ感謝する習わしだ。

グライハイムもその事で家には早く帰り家族で過ごすつもりであった。
しかし騎士の上にいるせいか、ことは上手くいかないように作られているかのように、事件や後処理などがグライハイムに襲いかかり、帰るが夕刻となってしまった。

国には不満があるが、自分の仕事場には信頼できる者が多い。だからお疲れ会の意味を込めて屋敷に招待したまでは良かったんだ。

だが事件は起きた。

庭には家族と使用人、グライハイムの部下達が楽しく過ごしていたのだが、ライナリア、アルセイヌが何故か隅っこに移動しているのが目に入り近寄ると。

グライハイムが施していた髪色の変化の魔法が解けかかり、黒から灰色に目が赤くなっていてアルセイヌの息が荒くなっていた。

発作だと気づき、アルセイヌの力がバレることを危惧し。

「ライナリア、医者のソルトを呼んでこい!」
「.....うん! お父様、アル....大丈夫だよね!」
「ああー大丈夫だ、私がいるのだ! 死なせたりせぬから信じろ!」

コクンとライナリアは頷き駆けて行く。

グライハイムは一呼吸入れたのち、アルセイヌを抱き上げたとき側にケインの気配を感じ指示を出す。
少し離れた場所に飛ばせと。
ケインは「御意」と一言だけ言い、グライハイムとアルセイヌをワープさせた。

場所は庭の奥にあるアルセイヌを守る結界陣を施した祭壇の教会。グライハイムはアルセイヌを祭壇の上に乗せると、アルセイヌが私をみる苦しげで息が荒く顔色も悪い。

「おと....さま。くる....しい、息ができ...ハアハア。」
「大丈夫だ、私が助けてやる!」

ぎゅっとアルセイヌの手を握る。
手袋越しがつらい、直に手だけは触れてやれない。
手には魔力毒が滲み触れると人の命など容易く屠れる力があるからだ。

優しく微笑んでやるとアルセイヌはコクンと頷く。
医者はまだこない、大概は間に合うようだが来ていないのか、それともライナリアがソルトを見つけれていないのだろう。

見つけていれば、あやつはすぐに来れるはず。

苛々が募る気持ちの中、それは起こった。

青い蝶と赤い蝶がアルセイヌの身体からほとばしるように現れ舞い踊る。魔力の具現化!
綺麗ではあるが、鱗粉は黒くアルセイヌに落ちては蝶が生まれ出る。

今までの暴走とは今回は違うと驚き驚愕する。

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