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第一章 幼少期

アルセイヌの父は美丈夫?

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はーい誰です?とドアの向こうにいるであろう人物に声をかけると一瞬喉を咳払いしてから、ゆっくりと扉を開けるおとに視線を向ける。

そこにはアルセイヌの父であり、私からすれば初対面だけど。彼女の記憶と自分がアルセイヌであることを自覚した私は何故か父を少し怖いと思ってしまう。

ゲームでは私を守ってくれる存在ではあるのに、バッドエンドの時に私を殺したことがあるからだ。
冷酷で見つめる瞳は諦めを滲ませ剣を振うんだ。

あのバッドエンドはつらい気持ちになってたっけ。

いまは幼いから、あんな出来事起きないけど。
厄介な記憶でちょっと警戒して見つめていると、父は一瞬チッと舌打ちしていた。

えええ!? もしかしていまも何か父の癇に障ってしまったのかと掛け布団をぎゅっと握り締めてたとき、私の様子を見て近寄ってくる。
薄暗いから表情が見えなくて警戒心が高まっていたんだけど。側に来た父の表情は月のひかるではっきりと見えてきて優しい顔と美丈夫な父にクラクラする。

何このリアルダンディな美丈夫、側にきたら目の毒なほど綺麗なんですけどーーー!!

ゲームでは冷酷な表情とアルセイヌへの罵倒とかでも声とかしかなかったけどさ、殺してくるときも影にチラッと見える瞳とかしか描写なかったから知らんかったけど。
まあ自己紹介プロフィール画像にはあったよ、でもさあーリアルでみてみいーめっちゃ月に当たると光、影と整っている顔に子供が2人いるとは思えない。

そんなもんが私の目の前に見えるんだぞ、萌ます。
ありがとうございます!

「.......どうかしたのか? 私をまっすぐに見つめたりするなど珍しいな。」
「あ、えっと、そのー。」

うー何を言えばと言葉が詰まってしまう。
思考の中で暴走気味に悶えてたなど、理解しがたいだろうし、きっとだけど私をアルセイヌを心配してきたんだろうから.....って父をまっすぐ見てないって、どういうこと?

私は忌み嫌われる存在で、お父様に迷惑かけたくない!!

トクンと叫び声が脳内で聴こえて恐れからだと理解する。

つい思考回路の中にいたまま固まってると、優しく頭を撫でる感触が現実に戻り父を見る。
すると父は穏やかな表情で笑みを浮かべる姿にホッとする。

「気を失って目を覚ますのが、このタイミングとは神は本当に意地悪だな。」
「えっと、どう言うことですか?」
「ふふ、なんでもないさ。それよりもアルセイヌ、体調の方は大丈夫か?」

ちょっと気になる物言いに気になったんだけど。

「......大丈夫。」
「ふむ。そうだアルセイヌ少しこちらに向いて手出しなさい。ふふ、そんな不安な顔をするな。今回はちょっとお洒落な魔道具だ、今日はアルセイヌの誕生日だしな。」

ほえ?誕生日ですと!?

内心驚くも自分の誕生日に私は寝こけておったんか?
いや実際は記憶の混乱で気を失ってたんだけど。

って言うか。私が気を失ってたのがいつで目が覚めてたのがいつなのか把握してないのが不安ではあるんだけね。うん。

私は心の中の混乱しつつも表の自分は慌てることもなく静かに手を差し出していた。
父は私の反応に対しいるも通りなのか無言のまま金色のブレスレットが右手に嵌められる。
とても精密で装飾は細かく菊の花が彫られている。

「どうだ? 今年は白い菊が咲いてな、アルセイヌの色だと思い施せるように頼んだんだ、よく似合ってるぞ。」

おおお、あんた良い父親じゃんか!

ぽかぽかと心が暖かくなるのを感じ、両親からのプレゼントだと思いとじわじわ目尻が熱くなってくる。

やば! アルセイヌの事を思って素敵なプレゼントとか嬉しいじゃんか!!

グシグシと止まらない涙に父親は動揺していたが、ぎゅっと身体を寄せるように抱きしめて誕生日おめでとうとだけ呟いていた。
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