上 下
22 / 36

風に舞う雛鳥

しおりを挟む
食事も終わりローラン君とボルトお爺ちゃん、ルドルフが今後のことを話し始めている。
私はといえば大きな金色の果物を頬張っていた。

ヒメの実って名前なんだけど、大きさは葡萄の大きなサイズで丸っこい、味は何故か苺みたいなんだよね。
美味しいから形状は今更気にしないよ私は。

「......ところで師匠、俺的に思うんだけどよ。物資的にはそれなりに用意出来たりはあるんだろ? 倉庫には師匠が作ったもん宝の持ち腐れの如くあったしよ。」
「まあ持ち腐れだろうが腕が鈍るのはいかんせん嫌なんでな。分けに行くのは別に良いんじゃが、どうにも引っかかるんじゃ。」
「引っかかる?なんで?」

ルドルフの疑問にボルトお爺ちゃんは顎髭を摩り、しばし考えたようで私に愚痴ってた内容をこぼす。

「ワシの名を知っておったことが、どうにもな。」

するとルドルフとローラン君が何故か驚いていた。

どうして驚いているのか私にはさっぱりわからないけど、ボルトお爺ちゃんの名前を知っていることじたいが問答みたいだということだけは理解できる。

「そっか、なら慎重にはなるわな。師匠はいくら隣村には別の名前で教えてたって言ってたのに、この伝達は....何かある可能性があるか。」
「お爺ちゃんは有名すぎるもんね、父さんも良く苦笑してたから。」
「......有名すぎるのはローランの父親もだと思うぞ。」
「父さん....確かに有名だから、あの人にこき使われてるんだよ。鬼畜だと僕は思うよ!」
「あははは、奴はお前の父親の事大好きでいじめてるからな。まあ、それを含めて慕っているんだ、おおめにみてやれ。」
「ルドルフさんは僕の父親がこき使われるの賛成派ですか、へえーふーん。」
「あ、えーっと。上司からの命令じゃ、しょうがないと思うよ。それにさあ、あの人って薬師じゃ有名だしな。」
「.......それ、言われると何も反論できないです。」

ぐぬぬーって感じで言いまかされるローラン君に、ルドルフがよしよしと頭を撫でられるも、やられて反論できないローラン君は「子供扱い嫌いなのでやめてください!」と文句を言っている。

まだ子供だし良いと思うんだけど、男の子なりのポリシーが邪魔してるのかなって、ちょっと笑ってしまう。

「まったく話しをずらして遊んでるとこ悪いが、ワシ的には重要なんじゃがのう。」
「あ、ごめんなさいお爺ちゃん。」
「すまん、話しを戻す。俺的な考えとしては、ここの家を空けさせるために偽造した手紙の可能性はあるか?」
「ふむ、可能性としてはあるのう。ここにはアレがあるし、いつもならばトラップとか色々施して行くんだが。もしも姑息な敵ならば考えて仮定したら、物資が足らないのは本当であり何かを想定したとした目的で手紙をよこしてきたと捉えなくもないんじゃよ。」
「確かに。動くんにもメリットとデメリットがあるってことか。うーむ、下手に動けば...ここに奇襲してくる。動かなければ隣村が困るか。」
「まあ...急ぎのようではないし急かされんかぎりは動かないつもりなんじゃ。しかしのう仕事面で世話にはなちょるから無下には出来んし、あとローランを今預かっとる間に危険な目に遭わすと鬼のように怒る奴がいるからな。」

うんうん、ローラン君の父親めっちゃ親バカしてたもんなあ。安全であるから預けてるのに、危険な目に遭わせたらキレそう。

ちらっとみんなを見ればローラン君は妙に納得してて、ルドルフ、ボルトお爺ちゃんを見れば苦笑しつつ嫌そうな感じいる。

そんなとき外の窓が揺れるようにガタガタって音がして私は外を見ると、雨と風が強く吹き荒れている。
木々がザワザワとし、夜の闇を濃くしているように見え寒い悪寒がざわりと私を震わせたと思ったときだった。

物凄い風が窓に当たると普段であれば鍵がしまって開くはずがないのに、ガタンと鍵が開き窓が全開した。

「なんじゃ!!」
「なんだ!!」
「何が!?」

3人がそれぞれ驚いた声をあげているけど、私はそれどころではなく、もう一個のヒメの実を抱っこして食べていたせいか、そのまま強く吹く風に舞うように空中に上がってしまうのであった。

うひゃあああああ!!! なんじゃこれーーーー!?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界のんびりというか行き当たりばったり物語

きゅちゃん
ファンタジー
かわいい女の子とイチャイチャしたい。 そんな欲望だけは持ちながらも現実ではなんの行動も起こせなかった無名のニートが、ある日気まぐれに上に祈ったところ、突然異世界に転生し... 作者にもこの先何が起こるか予想できない、が、持ち前のテキトーさでなんとか乗り切ってゆく冒険譚。

見習い動物看護師最強ビーストテイマーになる

盛平
ファンタジー
新米動物看護師の飯野あかりは、車にひかれそうになった猫を助けて死んでしまう。異世界に転生したあかりは、動物とお話ができる力を授かった。動物とお話ができる力で霊獣やドラゴンを助けてお友達になり、冒険の旅に出た。ハンサムだけど弱虫な勇者アスランと、カッコいいけどうさん臭い魔法使いグリフも仲間に加わり旅を続ける。小説家になろうさまにもあげています。

公爵令嬢は逃げ出した!

百目鬼笑太
ファンタジー
ジョセフィナは先代皇帝の皇后だった。 即位の日、現れた龍により皇帝と帝国は呪われた。 龍を倒すべく異世界より聖女が召喚される。 呪いは解かれず皇帝が亡くなると、ジョゼフィナが皇帝殺しの罪を着せられてしまう。 次代皇帝と聖女によって抗うことも出来ずに刑は執行された。 そうして処刑されたはずのジョゼフィナは、気がつけば10歳の頃に逆行していた。 公爵家? 令嬢? 皇太子妃? 聖女に異世界転生? そんなものより命と自由が大事です! 私は身分を捨てて冒険すると決めました!

底辺召喚士の俺が召喚するのは何故かSSSランクばかりなんだが〜トンビが鷹を生みまくる物語〜

ああああ
ファンタジー
召喚士学校の卒業式を歴代最低点で迎えたウィルは、卒業記念召喚の際にSSSランクの魔王を召喚してしまう。 同級生との差を一気に広げたウィルは、様々なパーティーから誘われる事になった。 そこでウィルが悩みに悩んだ結果―― 自分の召喚したモンスターだけでパーティーを作ることにしました。 この物語は、底辺召喚士がSSSランクの従僕と冒険したりスローライフを送ったりするものです。 【一話1000文字ほどで読めるようにしています】 召喚する話には、タイトルに☆が入っています。

ほのぼの子育て日記〜俺と魔王の息子の日常〜

ゆに
ファンタジー
「大魔王ガラン様の御子息様どうかご無事で……」 魔獣討伐パーティをクビになった俺は、魔獣だらけの街 に迷いこみ生き絶える直前の魔獣から大魔王の子供を受け取った。 魔獣達に自分の子供だと言ってしまったせいで俺はこの街でこの子を育てることになってしまった。 「ラジアム、なんか手伝うことはないか?」 「困ったことがあればなんでも言ってくれよ」 「ラジアムさん、ごはん作ってきたよ〜」 なんだか、ここの魔獣達はいい奴らだ。 俺はこの街で大魔王の息子マオとともに成長していこうと決めた!

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

処理中です...