モブ令嬢は白旗など掲げない

セイラ

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学園編(初等部)

剣と私の成長

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今私は木や地面とお友達になっている。当たり前でしょう?

身体と魔力の限界を超えたんだから。アニメの主人公みたいに歩ける訳ない。

身体が全く動かないから、少し休憩しているのだ。ここでは寝ない。

眠たいけど、ここで眠る勇気は私にはない。

『セシー!』
「セシリア嬢!ご無事ですか!」

コハクの後ろには先生とルベルクがこちらに向かって走って来る。

木に寄り掛かって座っていた私は腰を上げる。
「はい、大丈夫です。」

「怪我はありませんね。それで、貴女と戦っていた人物がいると聞いたのですが。」

「はい、いましたよ。姿を消しましたけど。」
「何はともあれ、ご無事で良かったです。」


勿論、野外授業は中止となった。騎士団が早く駆け付けて来た事もあり、早期解決となった。

生徒達は怪我人はいたが、死者や重傷者は出ていない。アシンも同じく無事だった。

重傷でもないので、ひと段落である。屋敷に戻った私は家族や屋敷の使用人達はとても心配してくれた。

心配し過ぎて過保護を遥かに通り越していたけど。その後、コハクとマッハの元に向かった。

コハクはマッハと楽しく遊んでいる。マッハは私の部屋の近くに建てた馬小屋に住んでる。

私は木に寄り掛かって、私は折れた剣を見る。

どれだけ優れた剣でも、使い手が悪かったら剣の性能は落ちてしまう。

本にはそう書かれていた。私はどうだっただろうか。私が駄目だったから折れたのだろうか。

明日、ドルクさんの所へ行こう。あれは幸運だった。一歩間違えれば私はこの場にいない。

そう考えると今更恐怖が湧いて来た。転生するのであれば、破滅のないモブ令嬢がよかった。

この世界はゲームではなく現実だ。物語の様に主人公を傷つけた悪役を罰して、終わりではすまない。

もしも、9年後の罰せられるパーティーの日まで生きて、その後も無事だったら私は何処に行こう。

冒険もいいし買い物もしたい。隣で一緒にいてくれる友達や大切な人が出来たら、どれ程幸せだろう。

私の頬に雫が流れた。
『セシー、大丈夫?』

心配そうに見てくるコハクとマッハに私は微笑んだ。

「大丈夫。でも、少しだけ流させて・・・」

裏切られるのも、死ぬ事も嫌だ。自由に生きて幸せに暮らしたいと願うのは我儘だろうか。

我儘だと言うのなら私は平気だ。何故ならセシリアわたしは、傲慢で我儘な悪役だから・・・。

「早く自由になれるといいな・・・」

私は部屋へ戻り眠った。


次の日の朝、私は白いブラウスに白と黄緑のオーバースカート。

ベルトコルセットを腰にジャボを首につけて準備が出来た。

私はレイピアを布で包み、ドルクさんの鍛冶屋へ向かった。私は鍛冶屋に入る。

「ドルクさん!いませんか!」
「おう。お嬢じゃねぇか!久しぶりだな。」

「はい、お久しぶりです。」
「何の用だ?」

「実は・・・」
私はドルクさんに野外授業の事件を話した。

「成る程な・・・。レイピアを見せてくれ。」
私は布に包まれたレイピアを渡した。

ドルクさんは鞘から抜いて、レイピアを見る。

「・・・戦った時、魔法で刃を強化したか?」
「はい。」
「そうか・・・。」

「ドルクさん・・。私は、剣の性能を活かす事が出来ないのでしょうか。」

「それは違うな。お嬢の剣は鉄で出来てんだ。相手の大剣は恐らく、ミスリル製だ。」

ミスリルは、鉄よりも硬い金属と言われる物。
「どうして分かるんですか。」

「刃に残ってる傷と話を聞けば、大体は分かる。それにしても、相手は相当強かっただろ。」

「はい。技量の差は歴然でした。」
「お嬢はまだ7歳だ。あんまり急ぎ過ぎるなよ。」

ドルクさんは奥の部屋から、剣と一本の鉄の棒を持って来た。

「ついて来い。」
そう言われたので、ドルクさんについて行く。

外に出て開けた場所で、ドルクさんが鉄の棒を地面に刺す。

「お嬢、今からこの剣で鉄の棒を切ってもらう。」
そう言って剣を渡された。混乱してしまう。

「その剣に魔力を通しても構わない。」
「・・・分かりました。」

私は鞘から剣を抜き、鉄の棒の前に剣を構える。

剣に魔力を通し、鉄の棒に向けて剣を振るった。

鉄の棒は真ん中が切れ、上の部分が地面に落ちた。

「よし。切れたな。」
「あの、どう言う意味ですか?」

「お嬢の持っている剣はミスリルで出来てんだ。」
「だから、鉄が切れたんですね。」

「確かにミスリルは鉄を切れる。だが、簡単に切れる事はない。相当な技量がなきゃ無理だ。」

ドルクさんが、鍛冶屋に向かって歩く。私は剣を鞘に戻して、自分の手を見る。

「何してんだ。お嬢が鉄を切れる事が分かったんだ。新しい剣を作る。ミスリル製のだ。」

「え・・・」
「何を驚いてんだ。その為に試したんだぞ。当たり前だろ。」

「ドルクさん。ありがとうございます!」
「お礼はいいから来い。」

「はい」
「そう言えば、いつ取りに来れるんだ。」

「いつ頃出来ますか?」
「4日はかかるな。」

「なら、大丈夫ですよ。野外授業の事件で学園は5日間程、休みなんです。」

「そうか。調べないかんからな。当たり前か。でも何で5日もかがんだ?」

「それは、事件を起こした人物が、獣人国を襲った反乱軍と同じだからだそうです。」

「それと、どう関係するんだ。」
「この国だけの問題ではすまないからだと思います」

「よう分からんが、まあいいか。」

その後私は屋敷へ帰った。4日後に剣を取りに来るようにドルクさんに言われた。

食事の時間に父親が、1通の手紙を渡してきた。
「この手紙は何ですか?」

「シルバーヅ家からのお手紙だ。」
アシンの家から?

「何故、シルバーヅ家から手紙が来るんですか!」
「ランス、落ち着きなさい。内容は知らない。」

私は手紙の封を開ける。

『セシリア嬢。
この度の件、お礼申し上げます。

私が君に会って話したいとの事で、手紙を送らせて頂来ました。

アシン・シルバーヅより』

「面会したい様です。」
「姉さん、行けませんよ!」

「セシリアはどうしたい。」
「私は構いません。」

「なら、返事を送っておきなさい。」
「分かりました。」

私は部屋へ戻るその途中で、ルカに呼び止められた。

「お嬢様。申し訳ありませんでした。」
「何が?」

「あの事件で私は、お嬢様を守れませんでした。今回は命を落とす事はありませんでしたが・・・」

「謝らなくて大丈夫よ。私は自分の意思であの場に残り戦った。」

「私はもっと強くなります。どんな状況でもお嬢様を助けられるように。」

そんな事をされれば、私の逃げられる可能性が低くなるんだけど・・・。

「・・・そう。」
私は自分の部屋に戻って、アシンに手紙の返事を書いて送った。




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