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第3章・レイフィス獣王国

35,不穏な影

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《謎の視点》

現在は空は暗くなり、月明かりが地に注ぐ時間である。

怪しい影が、複数見当たる。
「こっちだ。早くしろ。」

「運び出すぞ。」
「今日も獲物を捕らえたぞ。」

「大物じゃねぇか。これなら、闇商売で高く売れそうだな。」


不穏な影は、直ぐそこまで迫っている。



《レイラ視点》
私はシオン団長の部屋に向かった。

部屋には、シオン団長とシン副団長にライクス隊長がいた。

「揃いましたね。では、要件は調査を頼みたいと思いましてね。」

「何の調査ですか。」
「シン。」

「レイフィス獣王国で近頃、子供が行方不明になった事件がある。」

「それの調査ですか……。行方不明になった子供を探すのは至難の業ですよ。」

「そうですね。ですが、このレイフィス獣王国で、闇商会に動きがあるそうです。」

その言葉に部屋の空気は変わった。闇商会は闇ギルドと同等……。

いや、それ以上に厄介な場所とされ、見つけ次第潰す事を余儀なくされている。

彼らは、人身売買には飽き足らず、闇取引を行う悪党である。

法律違反を起こしている彼らだが、未だに騎士団に捕まっていない。

その理由は2つ。1つは、十分な証拠が揃っていない為、捜査が出来ない。

2つ、背後に上位貴族が関わっている為、迂闊に手が出せない。

「それで、俺の部隊に捜査する様にと?クロードの部隊も動くんでしょう?」

「ええ、勿論です。」
「それなら、でなくていいのでは?」

クロード先輩の部隊は諜報と呼ばれ、あらゆる情報を集める部隊。

影の仕事も行うのである。
「影が無理な事もあるでしょう。」

「お言葉ですが、クロード達は影も光も関係なく進むと思いますけど?」

「成る程、給料を下げられてもいいと言う事ですね。」

「謹んでお受けします!」
変わり身早すぎると思う。

だが、クロード先輩達に任せず、ライクス隊長に誘拐事件の調査を頼んだ。

それは、クロード先輩達が動き易い様にする為だろう。

その事にライクス隊長も気づいている筈だ。それを拒むと言う事は、何かあるのだろう。

「明日から調査を頼みます。そして、この事は他言無用です。」

「最後に確認をいいですか?」
「何でしょう。」

「レイラをここに呼んだのは、どう言う事ですか?」

そう、この話は本来なら、隊長だけか副隊長と聞くのが普通だ。

私は新人なのだ。おかしいと思うのが、普通である。

ライクス隊長の部隊には、副隊長はいないのだからライクス隊長だけで十分なのだ。

「レイラ、理由は分かりますか?」
そこで、考えられる事は1つ。

「裏切り者が、騎士団の中にいると言う事ですね。」

返答はなかったが、シオン団長が微笑みを深くしたと言う事は、肯定なのだろう。

そして、裏切り者の予想がついているなら、その隊とは別の部隊に任せる事だろう。

つまり、ライクス隊長の部隊には、裏切り者はいないと言う事か……。

いや、シオン団長としては、闇商会が見せたやっとの尻尾を逃したくない筈だ。

証拠になるかもしれない者を、野放しにしておく理由もない。

そこで考えられるのは、ライクス隊長の部隊に裏切り者を送り込んだ。

ライクス隊長なら、子供の誘拐調査を任せても、警戒されない位置にいる。

これらを話すと、シオン団長は更に笑みを深めた。

恐らく、確実に確信へ近づいているのだろう事が、予測される。

「裏切り者の検討は付きますか?」

「分かりません。ですが、移動させるなら、目立たず警戒されない日にするでしょう。」

裏切り者と判明している事を悟られない様に動くには、騒ぎに乗じて紛れ込ませるしかない。

「新人達の配属が決まった時に、移動させたと私は考えます。」

複数人を移動させた時、ライクス隊長の部隊に移動した者を調べれば出てくるだろう。

「正解です。」
「優秀な部下は疲れんだよな……。」

満足げな笑みを浮かべる、シオン団長とシン副団長。

それとは正反対の、歪めた顔をしているライクス隊長。

私とライクス隊長は、シオン団長の部屋から出た。

「明日から調査を始めるぞ。」
「分かりました。サボらないで下さいね。」

「日頃、どう言う目で俺を見ているか分かる言葉だな。」

「逃しませんよ。」
ジト目を送る。

「団長命令なんだから、サボれる訳ないだろ。はぁ~面倒臭い。」

団長命令じゃなかったら、サボっていたと言う事か?

「その絶対零度の様な目で見るの、やめて欲しいんだけど。」

「やめて欲しいなら、その性格を直して下さい。」



次の日、私とライクス隊長は街の調査に向かった。勿論、変装をして。

昼間は、皆で捜査していたが、多く情報が飛び交う酒場での調査になった。

私は男装だ。酒場では、男達が盛り上がっていた。

その酔っ払いの男達に紛れ、酒を飲むのはライクス隊長。

調査の事を忘れて、羽目を外している気がするんだけど。

私は周りに聞き耳を立て、食事をしつつ情報を集める。

風魔法で会話の内容を聞いていると、面白い会話をしている者達を見つけた。

奥の隅っこで会話している者達は、どうやら打ち上げの様なものらしい。

その話のネタは、誘拐事件と関わりのありそうな内容であった。

お酒を飲んでいるから、普通は聞けない事まで喋っている。

少し近づいてみるか。いや、昼間の調査で何か情報を得ているかもしれないな。

迂闊に近づくのは、避けるべきかな。なら、追跡し易い様に動くか。

奴らが会話している間に、とある花の香りをアクセサリーに付けておく。

勿論、分からない様に少量の魔法でだ。酒場は、酔っ払いが多い。

酔う事に限らず、人は精神状態に何らかの影響が有れば、魔力が少し外へ流れる。

だから、少量の魔法で有れば、魔法を使っている事にはあまり気付かれない。

さて、収穫もあったし、そろそろ帰ろうかな。この空間は好きではないし。

私はお金を払い、酒場を出る。どうやら、つけられているみたいだ。

少し遠回りして、罠に嵌めるか。私は少し周りを歩いてから、路地裏へ行く。

「尾行しているのは、分かっている。姿を現せ。」

声も変えているので、口調も変える。これで、女性と認識はされないだろう。

「ほう、俺達に気づいたか。貴様、何者だ?只の旅人じゃないだろ?」

姿を現したのは、2人の男だった。どちらも黒尽くめである。

足の運びから、手練れだな。足音がしないし、暗殺者の線が高いな。

つまり、何らかの事がバレているのかな。まあ、いいや。

「お前達こそ、何者だ。見た所、暗殺者の様だが?」

「答える義理はねぇだろ?」
暗殺者の言葉に否定はないか。

あちらが武器を構えて来たので、私も短剣を構える。

この男達から、どれ程の情報が貰えるかな。




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