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第3章・レイフィス獣王国

32,恋路の応援

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ただ今、私はシオン団長とシン副団長に怒られ、正座している。

しかし、私に反省と言う文字はない。逆に満足感に満たされている。

「反省する気はなさそうだな。」
「仇は打ちました。」

「誰のだよ!」
拳骨を落とされる私。

シン副団長の拳骨は、痛いんだよね。
「不満そうな顔ですね。」

「いいえ、その様な事はありませんよ。指示通りに動かなかった事は謝罪します。」

「あの女の子の攻撃に対しての反省は?」
「ありません。」

言い切ったら、溜息を吐かれた。
「それで、先程の勝者報酬はなんだ。」

「興味があったのですよ。」
「正直に言いましょうね?」

「私は何も企んでいませんよ?」
「やかましい。トラブルメーカー。」

「話はそれますが、王妃様の容態はどうですか。」

「医師の方々が、治療の準備を整えておられますよ。」

「やはり、助かる確率は低いのか?」
「王妃様の身体はこれからが大変です。」

「どう言う事だ?」
「まさか、後遺症ですか。」

「はい。現段階ではその可能性は、大いにあると思われます。」

「対処法は?」
「用意してるに決まってます。」

「そうだろうな。お前がただで起き上がる筈がないな。」

「多少の嫌味を感じますが、褒め言葉として受け取りますね。」

「まあ、いいでしょう。今回の件は、無かった事になるでしょう。」

「それは良かったです。」
「レイラは、反省をしろ。反省を。」



そして等々、王妃様の治療日となった。現場はピリピリしている。

緊張感を持つのはいい事だと思うが、居心地は悪い。

まあ、治療が目的なので、居心地の心配はいらないのだけど。

私は飲み易く、身体に影響を与えない魔力の波長を治める薬を調合した。

魔力を抑える薬はあるが、それでは王妃様の身体に負担をかける事になる。

それを防ぐ為に、今まで調整した。絶対とまでは言い切れないんだけどね。

それでも、完成させたんだよね。私も王妃様の治療にあたる。

子供を出産しながらの治療。医師達は、長時間治療の末、成功した。

元気な男の子が無事に生まれ、王妃様も無事である。

医師達は疲れ切っている。私も疲れた。アーサー先生の助手の位置にいた。

最初は、だ。後は何故か、アーサー先生と治療していた。

ああ、この後は書類仕事だったな。休みたいな。それ程までに疲労していた。

だが、王妃様と次代の子が無事に生まれて良かった。

結果を聞いたロウド陛下は大泣きして入って来た。

王妃様のティアラ様は、お子を優しく抱きしめ微笑んでいる。

ローン宰相も、涙を流しながら微笑んでいた。皆は大喜びである。

私は治療道具を片付ける。喜ぶ彼等の為である。

ティアラ様も、治療道具のある部屋には、居心地が悪いだろうと言う配慮である。

アーサー先生達医師も、手伝い素早くティアラ様とロウド陛下だけにする。


「何で2人きりにしたんだ?何かあった時の為に人為を残すべきだろ。」

ヨナ君の意見は分かるが、それを言ってはいけない。

彼等は番同士なのだ。愛する者が無事だった喜びを噛み締める時間が必要だ。

「ちゃんとした気遣いが出来る者が、大人と言うものですよ。」

それしか言えない。
「俺は少し眠るかな。」

「僕もそうするつもりです!」
「わしもゆっくりしますかの。」

「レイラは?」
「私は今日も仕事です。」


私はシオン団長達の元へ向かう。私の姿を見ると、皆がティアラ様な事を聞いて来る。

無事だと言う事を伝え、書類整理をしようとしたら、シン副団長に呼ばれた。

シン副団長と、シオン団長が作業する部屋へ向かう。

私達は、村の修理など復興の手助けをしている。

まあ、新人訓練もあるから、帰れるのはまだ先だろうけど。


「失礼します。」
「よく来ましたね。」

呼ばれたからね。
「座って話しましょう。」

私達はソファーに座る。シン副団長が紅茶を淹れてくれた。

「さて、王妃様の件、ご苦労様でした。」
「お気になさらず。」

「魔物の毒の件でもそうです。貴方に褒美が渡されるそうです。」

「褒美を何にするか考えて置く様に、と言う事ですか?」

「はい。そうです。」
「分かりました。」

要らないんだよね。給料上げるか、第4騎士団に転職がいい。

「そこで、私達からも褒美を用意しようと思いまして。」

「………1つだけ、協力して欲しい事があります。」

イスタ君とミリヤちゃんのデート計画を、話したのである。

「協力して下さいね。ああ、この話は先輩方には内緒ですよ。」

でないと、ミリヤちゃんが可哀想だ。この2人は知っているのでよし。

デート場所や、衣服調達も済ませたし、今の所順調である。

あの場で聞かれてたからね。
「そこまで手伝うのか?」

「はい。彼女は友達ですし、それに見ていたら面白そうですので。」

「後半が目的に聞こえるのは、私の気のせいですかね。」

「いや、シオン。お前の考えは合ってると思うぞ。」

「お2人が日頃私を、どう言う目で見ているのか、分かる言葉ですね。」

「ですが、貴女らしいと思いますよ。」
「どう言う意味ですか?」

「大概の女なら、こう言う時、欲望に動くだろ?」

この世界の女性は、肉食が多いみたいだね。見習いたくない。

「お望みなら、張り倒しましょうか?」
「……そこは、押し倒すじゃないのか?」

「私に色気を求めないで下さい。そんな物、とうに捨てました。」

「10代が吐く台詞ではありませんね。」
ええ、精神年齢は大人ですから。

「貴女は魅力的な女性なのですから、自分を卑下しすぎですよ。」

「お世辞は結構です。失礼します。」
私の表情は動く事はなかった。


いや、イケメンにお世辞でも魅力的と言われても靡かない心。

もはや鉄の心だね。私は美形に恋はしたくない。

観賞用でいいんだよ。だって、美形と恋愛したら、面倒事に巻き込まれるじゃん?

まあ、優良物件達は、好条件の相手を選ぶだろうし、私には関係ない事だ。

さて、早く書類整理を終わらせて寝よ。デート計画まであと少し。



色々計画の準備をして、等々ミリヤちゃんとイスタ君のデートの日。

まあ、シオン団長にお願いして、任務のデートになったんだけど……。

とある男の尾行をする任務で、その男は女癖が悪く、いつも女性といる。

そう言う設定だ。尾行訓練と言う訳である。シオン団長、グッジョブ!


「皆!じゅ、準備できたよ!」
私達は部屋に入る。

イスタ君とミリヤちゃんがセットで、男の尾行にあたる為、お洒落しているミリヤちゃん。

中に入ると、私達は言葉を失う。
「……。」

「ど、どうかな?」
照れ笑いを浮かべるミリヤちゃん。

「い、いや、随分、個性的な感じだね。」
アレンさんが苦笑いする。

セレス君とアビトさんは、口角が引き攣っている。

アルス君とクリスさんは、何とかフォローしようと、慌てている。

「却下です。」
「えっ!?」

いやいや、メイクが濃すぎだよ。服もおかしいし。

色んな衣服渡したのが、仇になったか……。取り敢えず、何とかしないと。

「うげぇ、ミリヤか?メイク濃すぎだろ。」
デリカシーがない奴、来たー。

打直球で言いやがったよ。ヒューズ先輩!ああ、ゼン先輩に叩かれた。

ゼン先輩、そのままヒューズ先輩を外に放り出して下さい。

「うっ……。」
心のダメージを受けたミリヤちゃん。

彼女は皆の意見が聞きたいとの事で、私達がここにいる訳だが……。

いて正解だったのか、いや、このままイスタ君にあってもやばかったのかな?

それより、今のヒューズ先輩の言葉に、ミリヤちゃんは泣いている。

「……取り敢えず、皆さんは外で待機して下さい。」

男性達を追い出した。




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