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第1章・第2騎士団
7,信頼できる者
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部屋は、作業が可能となるまで片付いた。ヒューズ先輩が簡単な説明をしてくれた。
ここは、報告書の様な物ばかりだ。本当なら、こんなに溜め込むのは可笑しいのだ。
サボらない限りは……。ヒューズ先輩は、文字や計算が苦手らしい。
ライクス隊長は、元々やる気がないので、シン副団長の怒りがない限り動かない。
思わずジト目を向けそうになる。とは言え、文字だらけの報告書だ。
時間がかかるし、呼んでいくのがしんどいのも分かる。
書き方の改善点とか、考慮されなかったのだろうか?
兎に角、見やすい様に書類の作成をして、少しでもやる気を出して貰わないと。
先ずは、締め切りが近いものから終わらせないと……。
まあ、殆どが締め切り間近なんだけどね……。私は猛スピードで作業にあたる。
昼食までには、この山積みとなった資料の半分が減る事を祈ろう。
黙々と作業が進んで、数時間が経過した。そろそろライクス隊長に渡さないと。
「ライクス隊長、ここの資料にサインをお願いします。」
「えっ……もうここまで進んだの?」
「ちゃんと目を通して下さいね。」
「おー、見やすい。」
「どれっすか。」
ライクス隊長の言葉に、ヒューズ先輩が覗き見る。
「本当っす!これなら、俺も作業しやすいっす。」
その言葉に、アレンさんとアルス君も作業の手を止め、資料を見る。
前世では当たり前だったからな……。確かに、前世の方が便利な物は沢山あるな。
作業の手はやめず、前世の思い出を見返す。
「本当ですね。凄いです!」
「他の資料も、こんなに見やすかったら作業が捗るんですけどね。」
アレンさんに私も同意見だ。ライクス隊長が、席を立ち指示を出した。
「よし、作成資料は見やすい方がいいし、これを参考に作成して。」
そう言って、不敵な笑みを浮かべるライクス隊長。
「これを見たら、他の皆も参考にするでしょ。これで、俺の作業も減る。」
私は無視をして、作業に励んだ。そして、昼食の時間になった。
私の担当した資料の今日までが締め切りの物は、片付いた。
ライクス隊長のサインもしてもらっているから、後はシン副団長の所に持って行くだけだ。
まあ、まだ資料は沢山あるんだけどね。
「あー終わらないっす!」
「疲れた……眠い。」
ヒューズ先輩とライクス隊長は疲労困憊のよう。
アルス君も、ぐったりとしている。アレンさんは、まだ余裕そうだ。
「そろそろ昼食にしようか。」
「でも、今日中の物が終わってないんだ。」
「根を詰め過ぎるのも、体に毒ですよ。」
「うん。そうだね。」
「隊長と先輩はどうしますか?」
「俺はまだまだ掛かるっす。先に行くっす。」
「俺は寝る。」
アレンさんの問いに答える2人。
私は資料を持つ。
「私もこの資料を届けますので。」
「僕達も付いて行くよ。仲良く皆で食べようよ。」
「そうだね。」
「分かりました。」
私達は、シオン団長の事務室へ向かい、資料を渡した。
昼食は、3人で仲良く会話しながら食べた。しかし、あの調子なら昼食を取れるだろうか。
私はドミニクさんにお願いし、おにぎりや果物を貰った。
部屋に戻ると、ヒューズ先輩は案の定、作業を続けていた。
ライクス隊長も、作業を再開していた。
「少し休憩になられてはどうですか?」
「そうする。」
「俺もっす。」
2人は食べ始めたので、人数分の紅茶を入れる。
私は自分の作業に戻り、締め切り間近の資料を終わらせた。
「もう終わったのか。」
「まじっすか!?」
「こっちも終わりましたよ。」
アレンさんも終わったみたいだ。
「おー、皆優秀。これだけ優秀だと仕事が回ってきそう……。」
軽く拍手するライクス隊長。
「行動と声のトーンが合ってないっす。」
「いいんだ。ああ、そう言えば、君等に渡す物があるんだった。」
紙袋を手渡される。
「それは制服。明日から着て来て。」
「分かりました。」
「了解です。」
「あ、ありがとうございます!」
「じゃ、解散。」
私は部屋へ戻る。夕食の時間より少し遅めに行く。
人が多くて、ゆっくり出来ないからね。遅めの食堂に行くと、人は少なかった。
「やあ。」
片手を上げ、笑顔を向けてくる。
確かこの人は、ヒューズ先輩と会話していた人だ。
薄オレンジ色の髪に水色の瞳の美青年。
「レイラです。宜しくお願いします。」
「うん。僕は、ゼン・シルクハートだよ。こちらこそ、宜しくね。」
爽やかな笑顔を向けて来る。
「レイラ。」
振り向くと、アレンさんがいた。アレンさんは、ゼン先輩に会釈する。
「そうだ。折角だから、3人で食事をしようよ。」
「はい。」
「ぜひ。」
ゼン先輩とアレンさんとの会話が始まった。
「勤務はどうだった?」
「はい。上手くやれていますよ。ね、レイラ。」
私は頷く。
「そっか。」
ゼン先輩は、嬉しそうに微笑む。一般女性なら、ここで歓喜の声を上げるな。
「ライクス隊長とヒューズの事、宜しく頼むよ。」
「はい。」
何故、2人の事を心配するのだろう。
色んな会話をして、私達はゼン先輩と解散した。何故、アレンさんは帰らないのだろう。
「寮に戻らないんですか?」
私に用事だろうか?そんな訳ないか。
「いや……レイラはどうして騎士団に入ったのかな?」
「……生活する為ですね。」
探る様な目線。
私は仮面の様な笑顔を浮かべるアレンさんが、苦手だった。
「……そっか。信頼出来る仲間として、これから仲良くして行こうね。」
信頼出来る仲間……一番そう思っていないのは、アレンさんの方だろう。
「同じ団員ですからね。ですが、貴方の方が思っていない様に感じますよ。」
目を見開くアレンさん。気付かれないとでも、思ったのだろうか?
「……どう言う事ですか?」
「自分が一番理解しているでしょう?」
「……」
沈黙は肯定している様なものだ。
「貴方の笑顔は、何処か仮面の様に感じます。まあ、私には関係ありませんが。」
私は寮部屋へ戻った。翌朝、訓練の時間になったので向かおうとした。
すると、第2騎士団全団員の招集がかかった。私は白い制服を着て向かう。
「第3騎士団がアトナの森にて、魔物討伐に動いている。」
シン副団長が話し始めた。シオン団長はどうしていないのだろう。
「しかし、魔物の数が増加したと報告が入った。」
その言葉に、周りの騎士達は驚愕の声を上げる。
「これから我等は、援軍として戦地に向かう。待機命令以外の者は、準備を急げ!」
「「「はっ!」」」
皆は一斉に騎士の礼をとる。
「アレン、セレス、レイラ。お前達は、早急に援護へ向かえ。」
「どう言う事ですか?」
アレンさんが聞いた。
「被害の規模はとても多いそうだ。準備に時間がかかる。」
成る程。先に行って時間を稼げと言う事か。でも、何故私達?
「シオン団長と複数の団員と共に、お前達も行って来い。」
「「「了解」」」
アトナの森に向かう事になった。
ここは、報告書の様な物ばかりだ。本当なら、こんなに溜め込むのは可笑しいのだ。
サボらない限りは……。ヒューズ先輩は、文字や計算が苦手らしい。
ライクス隊長は、元々やる気がないので、シン副団長の怒りがない限り動かない。
思わずジト目を向けそうになる。とは言え、文字だらけの報告書だ。
時間がかかるし、呼んでいくのがしんどいのも分かる。
書き方の改善点とか、考慮されなかったのだろうか?
兎に角、見やすい様に書類の作成をして、少しでもやる気を出して貰わないと。
先ずは、締め切りが近いものから終わらせないと……。
まあ、殆どが締め切り間近なんだけどね……。私は猛スピードで作業にあたる。
昼食までには、この山積みとなった資料の半分が減る事を祈ろう。
黙々と作業が進んで、数時間が経過した。そろそろライクス隊長に渡さないと。
「ライクス隊長、ここの資料にサインをお願いします。」
「えっ……もうここまで進んだの?」
「ちゃんと目を通して下さいね。」
「おー、見やすい。」
「どれっすか。」
ライクス隊長の言葉に、ヒューズ先輩が覗き見る。
「本当っす!これなら、俺も作業しやすいっす。」
その言葉に、アレンさんとアルス君も作業の手を止め、資料を見る。
前世では当たり前だったからな……。確かに、前世の方が便利な物は沢山あるな。
作業の手はやめず、前世の思い出を見返す。
「本当ですね。凄いです!」
「他の資料も、こんなに見やすかったら作業が捗るんですけどね。」
アレンさんに私も同意見だ。ライクス隊長が、席を立ち指示を出した。
「よし、作成資料は見やすい方がいいし、これを参考に作成して。」
そう言って、不敵な笑みを浮かべるライクス隊長。
「これを見たら、他の皆も参考にするでしょ。これで、俺の作業も減る。」
私は無視をして、作業に励んだ。そして、昼食の時間になった。
私の担当した資料の今日までが締め切りの物は、片付いた。
ライクス隊長のサインもしてもらっているから、後はシン副団長の所に持って行くだけだ。
まあ、まだ資料は沢山あるんだけどね。
「あー終わらないっす!」
「疲れた……眠い。」
ヒューズ先輩とライクス隊長は疲労困憊のよう。
アルス君も、ぐったりとしている。アレンさんは、まだ余裕そうだ。
「そろそろ昼食にしようか。」
「でも、今日中の物が終わってないんだ。」
「根を詰め過ぎるのも、体に毒ですよ。」
「うん。そうだね。」
「隊長と先輩はどうしますか?」
「俺はまだまだ掛かるっす。先に行くっす。」
「俺は寝る。」
アレンさんの問いに答える2人。
私は資料を持つ。
「私もこの資料を届けますので。」
「僕達も付いて行くよ。仲良く皆で食べようよ。」
「そうだね。」
「分かりました。」
私達は、シオン団長の事務室へ向かい、資料を渡した。
昼食は、3人で仲良く会話しながら食べた。しかし、あの調子なら昼食を取れるだろうか。
私はドミニクさんにお願いし、おにぎりや果物を貰った。
部屋に戻ると、ヒューズ先輩は案の定、作業を続けていた。
ライクス隊長も、作業を再開していた。
「少し休憩になられてはどうですか?」
「そうする。」
「俺もっす。」
2人は食べ始めたので、人数分の紅茶を入れる。
私は自分の作業に戻り、締め切り間近の資料を終わらせた。
「もう終わったのか。」
「まじっすか!?」
「こっちも終わりましたよ。」
アレンさんも終わったみたいだ。
「おー、皆優秀。これだけ優秀だと仕事が回ってきそう……。」
軽く拍手するライクス隊長。
「行動と声のトーンが合ってないっす。」
「いいんだ。ああ、そう言えば、君等に渡す物があるんだった。」
紙袋を手渡される。
「それは制服。明日から着て来て。」
「分かりました。」
「了解です。」
「あ、ありがとうございます!」
「じゃ、解散。」
私は部屋へ戻る。夕食の時間より少し遅めに行く。
人が多くて、ゆっくり出来ないからね。遅めの食堂に行くと、人は少なかった。
「やあ。」
片手を上げ、笑顔を向けてくる。
確かこの人は、ヒューズ先輩と会話していた人だ。
薄オレンジ色の髪に水色の瞳の美青年。
「レイラです。宜しくお願いします。」
「うん。僕は、ゼン・シルクハートだよ。こちらこそ、宜しくね。」
爽やかな笑顔を向けて来る。
「レイラ。」
振り向くと、アレンさんがいた。アレンさんは、ゼン先輩に会釈する。
「そうだ。折角だから、3人で食事をしようよ。」
「はい。」
「ぜひ。」
ゼン先輩とアレンさんとの会話が始まった。
「勤務はどうだった?」
「はい。上手くやれていますよ。ね、レイラ。」
私は頷く。
「そっか。」
ゼン先輩は、嬉しそうに微笑む。一般女性なら、ここで歓喜の声を上げるな。
「ライクス隊長とヒューズの事、宜しく頼むよ。」
「はい。」
何故、2人の事を心配するのだろう。
色んな会話をして、私達はゼン先輩と解散した。何故、アレンさんは帰らないのだろう。
「寮に戻らないんですか?」
私に用事だろうか?そんな訳ないか。
「いや……レイラはどうして騎士団に入ったのかな?」
「……生活する為ですね。」
探る様な目線。
私は仮面の様な笑顔を浮かべるアレンさんが、苦手だった。
「……そっか。信頼出来る仲間として、これから仲良くして行こうね。」
信頼出来る仲間……一番そう思っていないのは、アレンさんの方だろう。
「同じ団員ですからね。ですが、貴方の方が思っていない様に感じますよ。」
目を見開くアレンさん。気付かれないとでも、思ったのだろうか?
「……どう言う事ですか?」
「自分が一番理解しているでしょう?」
「……」
沈黙は肯定している様なものだ。
「貴方の笑顔は、何処か仮面の様に感じます。まあ、私には関係ありませんが。」
私は寮部屋へ戻った。翌朝、訓練の時間になったので向かおうとした。
すると、第2騎士団全団員の招集がかかった。私は白い制服を着て向かう。
「第3騎士団がアトナの森にて、魔物討伐に動いている。」
シン副団長が話し始めた。シオン団長はどうしていないのだろう。
「しかし、魔物の数が増加したと報告が入った。」
その言葉に、周りの騎士達は驚愕の声を上げる。
「これから我等は、援軍として戦地に向かう。待機命令以外の者は、準備を急げ!」
「「「はっ!」」」
皆は一斉に騎士の礼をとる。
「アレン、セレス、レイラ。お前達は、早急に援護へ向かえ。」
「どう言う事ですか?」
アレンさんが聞いた。
「被害の規模はとても多いそうだ。準備に時間がかかる。」
成る程。先に行って時間を稼げと言う事か。でも、何故私達?
「シオン団長と複数の団員と共に、お前達も行って来い。」
「「「了解」」」
アトナの森に向かう事になった。
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