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二章~人間の世界
緑の覚醒②
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緑が手に握っていたのは、緑色に発光する刀の形をしたものだった。
「こ、これは――。」
「緑君、それで彼を刺せ!」
「でもそんなことをしたら戒が。」
「大丈夫だ。信じるんだ自分の力を、彼との友情を。」
どのみち、このままでは戒に未来はない。
緑は覚悟を決めて、その刀で戒の胸を貫いた。
不思議なことに手応えがまるでなかった。
緑自信が刀を体内に吸い込んだように、戒の体にも刀が意思を持ったかのように吸い込まれていった。
刺された戒は完全に動きを止まった。
そして体中を緑色のオーラが彼を包みこんでいく。
するとこれまでの戒とは明らかに違う表情を見せた。
それは緑や凛香がよく知っている戒だった。
「お、俺は――。」
そう言葉を発すると戒は突然その場に倒れこんでしまった。
それは当然なのかもしれない。
何せ戒の体は既に生きているのが不思議な程に、深い傷を全身に負っているからだ。
せっかく元の戒に戻りはしたが、これでは彼の命は風前の灯だ。
「か、戒!」
「お兄ちゃん!」
二人はすぐに戒の元へと駆け寄った。
戒はなんとか息はしているようだった。
「どうしたらいいんだ。そうだ、病院へ行こう。」
「うん。救急車を呼ばなきゃ。」
そんな二人をエリオットは静かに見ていた。
「病院なんて機能していないさ。ましてや救急車なんて来やしないよ。」
少し冷静になって考えてみればそれは当然の答えである。
しかし、何らかの処置をしなければ戒はすぐに死んでしまうだろう。
緑は頭をフル回転させて考えてみた。
「医者を連れてこよう。どこかにいるはずだ。」
「どこにいるとも分からない医者を探してきても、それまで彼はもたないだろう。それに仮に医者がいたとしても、こんな何の設備もない場所ではどうにもならない。」
「じゃあどうすればいいんですか、エリオットさん!」
エリオットはため息を一つ大きく吐いてから言った。
「私に任せておきなさい。」
エリオットは戒に両手を当てて目を閉じた。
そして数分の間、そうやって続けていると、驚くべきことが起きた。
さっきまで無かったはずの足がいつの間にか元に戻っていたのだ。
それだけじゃない。
折れていただろう腕や他の外傷も、みるみる内に治っていっていた。
「よし、これで大丈夫だ。」
「エリオットさん、お兄ちゃんは?」
「まだ意識は戻ってないが、問題ない。失っていた箇所は修復したし、目が覚めるのを待つだけだ。」
「良かった。」
凛香は安堵したようだが、緑は少し違った。
「エリオットさん――あなた何者なんですか。それに俺の力。いったい何が何だか分からない。説明してください。」
エリオットは緑の言葉を聞いて少し微笑んだ。
「私は、第1世代――黄金の世代の生き残りだ。」
「こ、これは――。」
「緑君、それで彼を刺せ!」
「でもそんなことをしたら戒が。」
「大丈夫だ。信じるんだ自分の力を、彼との友情を。」
どのみち、このままでは戒に未来はない。
緑は覚悟を決めて、その刀で戒の胸を貫いた。
不思議なことに手応えがまるでなかった。
緑自信が刀を体内に吸い込んだように、戒の体にも刀が意思を持ったかのように吸い込まれていった。
刺された戒は完全に動きを止まった。
そして体中を緑色のオーラが彼を包みこんでいく。
するとこれまでの戒とは明らかに違う表情を見せた。
それは緑や凛香がよく知っている戒だった。
「お、俺は――。」
そう言葉を発すると戒は突然その場に倒れこんでしまった。
それは当然なのかもしれない。
何せ戒の体は既に生きているのが不思議な程に、深い傷を全身に負っているからだ。
せっかく元の戒に戻りはしたが、これでは彼の命は風前の灯だ。
「か、戒!」
「お兄ちゃん!」
二人はすぐに戒の元へと駆け寄った。
戒はなんとか息はしているようだった。
「どうしたらいいんだ。そうだ、病院へ行こう。」
「うん。救急車を呼ばなきゃ。」
そんな二人をエリオットは静かに見ていた。
「病院なんて機能していないさ。ましてや救急車なんて来やしないよ。」
少し冷静になって考えてみればそれは当然の答えである。
しかし、何らかの処置をしなければ戒はすぐに死んでしまうだろう。
緑は頭をフル回転させて考えてみた。
「医者を連れてこよう。どこかにいるはずだ。」
「どこにいるとも分からない医者を探してきても、それまで彼はもたないだろう。それに仮に医者がいたとしても、こんな何の設備もない場所ではどうにもならない。」
「じゃあどうすればいいんですか、エリオットさん!」
エリオットはため息を一つ大きく吐いてから言った。
「私に任せておきなさい。」
エリオットは戒に両手を当てて目を閉じた。
そして数分の間、そうやって続けていると、驚くべきことが起きた。
さっきまで無かったはずの足がいつの間にか元に戻っていたのだ。
それだけじゃない。
折れていただろう腕や他の外傷も、みるみる内に治っていっていた。
「よし、これで大丈夫だ。」
「エリオットさん、お兄ちゃんは?」
「まだ意識は戻ってないが、問題ない。失っていた箇所は修復したし、目が覚めるのを待つだけだ。」
「良かった。」
凛香は安堵したようだが、緑は少し違った。
「エリオットさん――あなた何者なんですか。それに俺の力。いったい何が何だか分からない。説明してください。」
エリオットは緑の言葉を聞いて少し微笑んだ。
「私は、第1世代――黄金の世代の生き残りだ。」
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