最強の女戦士ここにあり

田仲真尋

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強くなりたい

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サーシャ様とローラスのコンビは戦闘開始から、僅か数分で地べたに、ひれ伏していました。

全く歯が立ちません。格が違いました。ザラスの三人は余裕で二人の命にリーチをかけました。


「くそっ!すまんサーシャ。役に立てなくて。」


「し、仕方ない。こっちこそ悪かったね、変なことに巻き込んで。」


サーシャ様は、死をも覚悟されている、ご様子。


「ピート。お前は逃げろ。こいつらの目的は私だ。ローラスと一緒に逃げてくれ。」


「おおっと!そうはいかないぜ。俺たちの正体を知ったからには全員死んでもらわないと。なあ、ファイバー。」


ファイバーと呼ばれた男は、ザラスの三人の中で一番偉そうな男です。


「致し方あるまい。我々の任務を完遂するためだ。全員始末しろ。」


危機とは何の前触れもなくやってくるものです。これが運命ならば受け入れるしかないでしょう。

――しかし、これは運命ではありません。

逆に彼らにこそ悲痛な運命が降り注いでいます。


「サーシャ様。ちょっと借りますよ。」


僕は地面に落ちていた、サーシャ様のスパロウティアズを拾い上げました。


「ピ、ピート。やめろ!殺されてしまう!」


サーシャ様は僕を止めようとしました。

しかし、ここで主人を見捨てて逃げてしまっては、従者の名折れ。

退くわけにはいかないのです。というより退く必要もありませんがね。


「なんて健気な奴だ。主人を守ろうとしてるぞ、あの従者。お前も少しは見習ったらどうだ、ケイト。」


「何で私が!?そもそも、私はお前の付き人でも何でもないんだぞ、ロイド。」


「あの、お取り込み中のところ申し訳ないですが、そんなに油断していると斬っちゃいますよ。」


ああ、僕は何てお人好しなのでしょう。黙って斬り倒せばよいものを。別に良い人アピールでは、ありませんよ。


「ちっ!従者の分際で生意気な奴だ。やれるものならやってみろ!」


「では遠慮なく。」


「――!」

「――!」


「ば、馬鹿な!私の部下を声も上げさせぬ内に倒しただと!?」


さあ、残るは敵の大将ファイバーさんだけですね。さっさと終わらせて買い物を済ませ、早く帰らないとグラノールさんが心配してしまいます。


「見つけた!こんな所にいたのね。」


「師匠!」


ああ、どうやら遅かったみたいです。グラノールさんて意外に、せっかちなのですね。


「やっぱり、こっちにも来ていたのね。」


「どういう事です?」


「キリエス兵よ。私の所にも来て、生意気なこと言うから全員、やっつけちゃった。」


さすがです。まあ、これで僕の出番も終わりに出来そうで何よりです。


「何だと!?キリエスの優秀な戦士が五人もいたのだぞ、それを倒したというのか?……ありえん。」


確かに驚くべきことでしょうね。しかし、僕から言わせてもらえれば至極当然のことですよ、ファイバーさん。

グラノールさんの元に兵を送るのならば最低でも百人は差し向けないと話になりません。これはキリエスの調査不足ですね。

御愁傷様です。


「おのれ!こうなれば私が皆の仇を討つ。かかってこい!」


ファイバーさんは怒りに満ち溢れている様子です。恐ろしいですね。


「グラノールさん。後はお願いできますか。」


「何言ってんのよ。あんたが相手してあげなさい、ピートちゃん。私は剣さえも持ってきていないんだからね。」


冗談じゃありません。僕の仕事は戦うことではありません。


「剣ならサーシャ様の剣を、お貸ししますよ。」


「私は他人の剣は振らない主義なの、ごめんなさいね。」


頑なに拒否するグラノールさんを説き伏せるのは難しそうです。仕方ありません、ではとっとと片付けましょうか。


「久し振りに拝見させてもらうわよ、ピートちゃん。」


まったく他人事ですね。


「黒い刃ブラックエッジの実力を。」


「ブラックエッジだと!?確か数年前まで各地の剣豪をことごとく打ち倒し、更にはキリエスの兵士を斬りまくっていたという、あのブラックエッジか。」


「そうそう、そいつよ。あんたの目の前にいるのは。」


グラノールさん……どっちの味方ですか、あなた。


「そうか。その強さ、確かに本物だろう。面白い、土産が増えたな。貴様はキリエスでは手配書に載る重罪人だ。その首、頂戴しよう。」


「やれやれ、僕はもう剣は捨てた身なのですが、ご所望とあれば致し方ありません。見せてあげましょう。」


「こい!」


「超音速スーパーソニック」


「うぉぉりゃゃああ!」


「隼ファルコン!」


「ぐわぁ!」


僕の勝ちですね。ファイバーさんは地面にうつ伏せに倒れ、ピクリとも動きません。

久し振りにしては上出来です。


「さすが、ブラックエッジ。まだまだ健在ね。」


まったくもって性悪な人ですね、グラノールさんは。


「さあさあ、皆帰るわよ。おや、そこの若いお兄さんは?敵かしら?」


グラノールさんは気を失っているローラスの頭をバシバシと叩きながら訊ねました。


「一応味方ですから。乱暴に扱わないで下さいよ、グラノールさん。」


「あらそう。じゃあ彼も連れて行きましょう。サーシャ、立てる?」


「……師匠。……私、強くなりたい……。」


おや?随分と、しおらしいでは、ありませんか。戦いに敗れたのが相当、堪えているのでしょう。

それは、とても大事なことですよ、サーシャ様。


こうして、僕らはグラノールさんの家へと帰路につきました。

人々の日常の中を抜け、カラスの鳴き声を聞きながら歩んで行きます。


「あっ!買い物するの忘れた。」


「……」


僕の発言に皆が言葉を詰まらせたのでありました。

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