20 / 34
芽生え
殿下の手紙
しおりを挟む
スカートの隠しから手紙を取り出し、お父様にペーパーナイフを借りて便箋を取り出した。
かさりと広げると、そこには流麗な文字が踊っていた。
ー我が愛しのシアへ
そちらはもうそろそろ寒くなってくる頃でしょうか?貴女が風邪を引いていないか心配です。
この前、帝都には馬車で来ているのかと思いましたが、早駆けで来ていたのですね。馬術も出来るとは惚れ直してしまいました。機会があれば、二人で遠乗りでもしたいですね。
それはそうと、これからについてですが、一先ず私は継承権を破棄しようかと思います。そのあたりの手続きや問題が片付き次第、貴女を口説きにそちらに伺うつもりです。
それから、手紙は時間をロスするので、通信の出来る魔石を耳飾りにしてみました。魔力を込めれば私に繋がるようになっているので、出来る限り身につけておいて下さい。
詳しいことは通信で話しましょう。それでは、体に気をつけて。元気な貴女に会えるのを楽しみにしています。
ーシルヴェール・ニエルマン
面と向かって話していた時の砕けた感じとは違う、手紙の中の丁寧で大人びたような口調に驚いた。一人称も二人称も語尾も違っていたけど、でもきっとこれが皇子としての彼なのだろうと思った。
手紙から顔を上げ、両親に内容を簡潔に伝えた。
「そうか。もてなそうにもこれからの季節じゃ何処も行けないぞ。」
「殿下の目的がレティを口説くことなら、わたくし達が出しゃばることありませんわ。休暇中のレティとゆっくりのんびり過ごして頂けばよろしいんじゃないかしら?」
「殿下がいれば色々捗りそうですし、わたくしはそれで構いませんよ?」
「…一先ず殿下のことはレティに任せることにしようか。」
「分かりましたわ。」
部屋に戻って、封筒の中に入っていた耳飾りを取り出した。殿下の瞳によく似た赤い魔石で、涙のような形をしていた。早速つけてみると、私の白い髪によく映えていた。魔力を流して繋がるか確かめてみようかと思ったが、まだ昼過ぎで殿下は執務中だろうからやめておいた。
かさりと広げると、そこには流麗な文字が踊っていた。
ー我が愛しのシアへ
そちらはもうそろそろ寒くなってくる頃でしょうか?貴女が風邪を引いていないか心配です。
この前、帝都には馬車で来ているのかと思いましたが、早駆けで来ていたのですね。馬術も出来るとは惚れ直してしまいました。機会があれば、二人で遠乗りでもしたいですね。
それはそうと、これからについてですが、一先ず私は継承権を破棄しようかと思います。そのあたりの手続きや問題が片付き次第、貴女を口説きにそちらに伺うつもりです。
それから、手紙は時間をロスするので、通信の出来る魔石を耳飾りにしてみました。魔力を込めれば私に繋がるようになっているので、出来る限り身につけておいて下さい。
詳しいことは通信で話しましょう。それでは、体に気をつけて。元気な貴女に会えるのを楽しみにしています。
ーシルヴェール・ニエルマン
面と向かって話していた時の砕けた感じとは違う、手紙の中の丁寧で大人びたような口調に驚いた。一人称も二人称も語尾も違っていたけど、でもきっとこれが皇子としての彼なのだろうと思った。
手紙から顔を上げ、両親に内容を簡潔に伝えた。
「そうか。もてなそうにもこれからの季節じゃ何処も行けないぞ。」
「殿下の目的がレティを口説くことなら、わたくし達が出しゃばることありませんわ。休暇中のレティとゆっくりのんびり過ごして頂けばよろしいんじゃないかしら?」
「殿下がいれば色々捗りそうですし、わたくしはそれで構いませんよ?」
「…一先ず殿下のことはレティに任せることにしようか。」
「分かりましたわ。」
部屋に戻って、封筒の中に入っていた耳飾りを取り出した。殿下の瞳によく似た赤い魔石で、涙のような形をしていた。早速つけてみると、私の白い髪によく映えていた。魔力を流して繋がるか確かめてみようかと思ったが、まだ昼過ぎで殿下は執務中だろうからやめておいた。
221
お気に入りに追加
6,265
あなたにおすすめの小説

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。

だから言ったでしょう?
わらびもち
恋愛
ロザリンドの夫は職場で若い女性から手製の菓子を貰っている。
その行為がどれだけ妻を傷つけるのか、そしてどれだけ危険なのかを理解しない夫。
ロザリンドはそんな夫に失望したーーー。

初恋が綺麗に終わらない
わらびもち
恋愛
婚約者のエーミールにいつも放置され、蔑ろにされるベロニカ。
そんな彼の態度にウンザリし、婚約を破棄しようと行動をおこす。
今後、一度でもエーミールがベロニカ以外の女を優先することがあれば即座に婚約は破棄。
そういった契約を両家で交わすも、馬鹿なエーミールはよりにもよって夜会でやらかす。
もう呆れるしかないベロニカ。そしてそんな彼女に手を差し伸べた意外な人物。
ベロニカはこの人物に、人生で初の恋に落ちる…………。

溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。
ふまさ
恋愛
いつものように屋敷まで迎えにきてくれた、幼馴染みであり、婚約者でもある伯爵令息──ミックに、フィオナが微笑む。
「おはよう、ミック。毎朝迎えに来なくても、学園ですぐに会えるのに」
「駄目だよ。もし学園に向かう途中できみに何かあったら、ぼくは悔やんでも悔やみきれない。傍にいれば、いつでも守ってあげられるからね」
ミックがフィオナを抱き締める。それはそれは、愛おしそうに。その様子に、フィオナの両親が見守るように穏やかに笑う。
──対して。
傍に控える使用人たちに、笑顔はなかった。

いいえ、望んでいません
わらびもち
恋愛
「お前を愛することはない!」
結婚初日、お決まりの台詞を吐かれ、別邸へと押し込まれた新妻ジュリエッタ。
だが彼女はそんな扱いに傷つくこともない。
なぜなら彼女は―――

裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……
希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。
幼馴染に婚約者を奪われたのだ。
レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。
「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」
「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」
誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。
けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。
レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。
心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。
強く気高く冷酷に。
裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。
☆完結しました。ありがとうございました!☆
(ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在))
(ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9))
(ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在))
(ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))

【完結済み】婚約破棄致しましょう
木嶋うめ香
恋愛
生徒会室で、いつものように仕事をしていた私は、婚約者であるフィリップ殿下に「私は運命の相手を見つけたのだ」と一人の令嬢を紹介されました。
運命の相手ですか、それでは邪魔者は不要ですね。
殿下、婚約破棄致しましょう。
第16回恋愛小説大賞 奨励賞頂きました。
応援して下さった皆様ありがとうございます。
リクエスト頂いたお話の更新はもうしばらくお待ち下さいませ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる