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スノーアメジスト将軍たちのお茶会
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スノーアメジストの都に位置する、スノーアメジストガーデン。そこは、寒くても花が咲き乱れる庭。そこでは、一年中、薔薇に似た花が咲き乱れている。赤、白、水色。薔薇のような花の色は様々で、それぞれが幻想的な雰囲気を作り出している。
その中にある休憩所にて、スノーアメジスト軍の将軍でもあるラブルンテとラビはいつもお茶をしている。そして、二人は今日も、お茶をするために顔を合わせていた。
穏やかな晴れ。空気は乾燥しており、肌寒い。それもまたいつものこと。特別でも何でもないことだ。
だが、これまでと違っていることが一つだけある。
それは、お茶会の参加者が一人増えているということ。しかも、その増えた一人が日頃はあまり交流がないレムリアだから、何も知らなかったラビは動揺している。
「ちょっとラブルンテ、どうしてヤツがいるのよ……?」
ラビはラブルンテの耳もとに口を寄せて尋ねる。
問いに対し、ラブルンテは頬を微かに赤らめながら答える。
「ラブルンが誘ったのん! ね! レムリアくん」
レムリアは丸いテーブルを囲む椅子のうちの一つに座っている。しかし、その面に表情はなく、氷を擬人化したかのような雰囲気を漂わせていた。
「……帰りたい」
そっとレムリアが述べると、ラブルンテは両目を凄まじい速度でぱちぱちさせながら返す。
「んもー! どうしてそんなこと言うのん? ひーどーいー」
帰りたくて仕方がないというようなオーラを漂わせ続けているレムリア。人の能力を超越したような勢いでまばたきを繰り返し続けるラブルンテ。そんな二人を見て、ラビは呆れ顔になっていた。
「仕事が残っている……今日の分」
「分かる! することがあるのに時間を削られる辛さは分かる! ……でーもー、息抜きも大切なのんっ」
お茶会なるものに時間を割かれ不満そうなレムリアに、ラブルンテは多少の理解を示していた。が、それでも、お茶会から返すつもりはないようだ。ラブルンテは一旦椅子から立ち上がり、レムリアに近づく。そして、一方的に肩を組んでいった。
「今日はお仕事は忘れて! 楽しむのん! ね?」
「……帰りたい」
ラブルンテか何を言おうが、レムリアの態度は変わらなかった。
既に呆れ果てているラビは、花柄のティーカップを手に取り、その端を口もとに近づける。それから、ティーカップを徐々に傾けて、静かに紅茶を飲む。
「ラブルンテ、もう返してあげれば? 彼、参加したくなさそうじゃない」
ラビは、ティーカップの中の液体を一気に飲み干して、それからアドバイスのような口調で述べた。
「もう! ラビ冷たいのん!」
アドバイスを耳にしたラブルンテは、レムリアから少し離れ、不満そうに頬を膨らます。
「冷たい!? 何よそれ!?」
「そういえば、前から思ってたけど、ラビはどうしてレムリアくんを嫌うのん?」
「意味が分からないからよっ!」
話題の中心にいるはずのレムリアはもはや放置。ラブルンテとラビの間には、心なしか不穏な空気が漂う。だが、実はそれは珍しいことではない。というのも、二人は時折喧嘩モードになるのだ。ただし、仲が悪いわけではないのだけれど。
「そのレムリアって男は信用ならないの! いきなり現れて!」
ついにラビははっきり言った。
しかも、レムリア本人を指差しながら。
「出身も不明、性別も不明、年齢も不明……分からないことが多すぎるのよ!」
「でも名前は不明じゃないのん」
「その名前だって、出自とかが分かるようなものじゃないでしょ!?」
「ラブルンいつも思うけど、ラビってちょっと神経質なのーん。爪の先が欠けただけでマジギレするタイプなのーん」
◆終◆
その中にある休憩所にて、スノーアメジスト軍の将軍でもあるラブルンテとラビはいつもお茶をしている。そして、二人は今日も、お茶をするために顔を合わせていた。
穏やかな晴れ。空気は乾燥しており、肌寒い。それもまたいつものこと。特別でも何でもないことだ。
だが、これまでと違っていることが一つだけある。
それは、お茶会の参加者が一人増えているということ。しかも、その増えた一人が日頃はあまり交流がないレムリアだから、何も知らなかったラビは動揺している。
「ちょっとラブルンテ、どうしてヤツがいるのよ……?」
ラビはラブルンテの耳もとに口を寄せて尋ねる。
問いに対し、ラブルンテは頬を微かに赤らめながら答える。
「ラブルンが誘ったのん! ね! レムリアくん」
レムリアは丸いテーブルを囲む椅子のうちの一つに座っている。しかし、その面に表情はなく、氷を擬人化したかのような雰囲気を漂わせていた。
「……帰りたい」
そっとレムリアが述べると、ラブルンテは両目を凄まじい速度でぱちぱちさせながら返す。
「んもー! どうしてそんなこと言うのん? ひーどーいー」
帰りたくて仕方がないというようなオーラを漂わせ続けているレムリア。人の能力を超越したような勢いでまばたきを繰り返し続けるラブルンテ。そんな二人を見て、ラビは呆れ顔になっていた。
「仕事が残っている……今日の分」
「分かる! することがあるのに時間を削られる辛さは分かる! ……でーもー、息抜きも大切なのんっ」
お茶会なるものに時間を割かれ不満そうなレムリアに、ラブルンテは多少の理解を示していた。が、それでも、お茶会から返すつもりはないようだ。ラブルンテは一旦椅子から立ち上がり、レムリアに近づく。そして、一方的に肩を組んでいった。
「今日はお仕事は忘れて! 楽しむのん! ね?」
「……帰りたい」
ラブルンテか何を言おうが、レムリアの態度は変わらなかった。
既に呆れ果てているラビは、花柄のティーカップを手に取り、その端を口もとに近づける。それから、ティーカップを徐々に傾けて、静かに紅茶を飲む。
「ラブルンテ、もう返してあげれば? 彼、参加したくなさそうじゃない」
ラビは、ティーカップの中の液体を一気に飲み干して、それからアドバイスのような口調で述べた。
「もう! ラビ冷たいのん!」
アドバイスを耳にしたラブルンテは、レムリアから少し離れ、不満そうに頬を膨らます。
「冷たい!? 何よそれ!?」
「そういえば、前から思ってたけど、ラビはどうしてレムリアくんを嫌うのん?」
「意味が分からないからよっ!」
話題の中心にいるはずのレムリアはもはや放置。ラブルンテとラビの間には、心なしか不穏な空気が漂う。だが、実はそれは珍しいことではない。というのも、二人は時折喧嘩モードになるのだ。ただし、仲が悪いわけではないのだけれど。
「そのレムリアって男は信用ならないの! いきなり現れて!」
ついにラビははっきり言った。
しかも、レムリア本人を指差しながら。
「出身も不明、性別も不明、年齢も不明……分からないことが多すぎるのよ!」
「でも名前は不明じゃないのん」
「その名前だって、出自とかが分かるようなものじゃないでしょ!?」
「ラブルンいつも思うけど、ラビってちょっと神経質なのーん。爪の先が欠けただけでマジギレするタイプなのーん」
◆終◆
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