上 下
1 / 2

前編

しおりを挟む
 本来誰かと婚約とか結婚とかをする気は一切ありませんでした。
 家もある程度裕福ですし、誰かと夫婦にならずとも正直困らない環境にあるからです。

 しかし彼オダムスが結婚を希望してきたので私は彼と婚約者同士になることを選びました。

 ですが。

「悪いけど、あなたとの婚約は破棄するよ」

 オダムスはある日突然そんなことを言ってきました。

 そこそこ上手くいっていると思っていただけに意外でした。

 婚約を破棄したいくらいに思われていたとは。
 正直驚きです。
 気持ちを隠すのが上手いなぁ、と、感心します。

「これまた急ね」

 そう言ってみると。

「実は、あなたより魅力ある女性に出会ってしまって。もうあなたを妻にしたいとは思えなくなったのです。彼女はとても美人で愛らしさもあって、ちょっとおっちょこちょいなところも愛くるしく、容姿性格共に魅力に満ちています。ですから……すみませんが、さようなら」

 彼は静かにそう返してきました。

 本当のところを言うと……悔しさはありました。

 彼の心に気づけなかった。
 そのことが悔しかったのです。

 ですが、すべてもう終わったこと。

 今さらああだこうだ言っても何も生まれませんし、そこに意味などありません。

「そうね。じゃ、さようなら」

 なので私は彼とは別の道を行くことにしました。
 それがお互いにとって一番良いと感じたからです。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

驚きの出来事は唐突に降りかかってくるものなのですね。~少しも想像していなかった理由で婚約破棄されました~

四季
恋愛
驚きの出来事は唐突に降りかかってくるものなのですね。

薬屋の一人娘、理不尽に婚約破棄されるも……

四季
恋愛
薬屋の一人娘エアリー・エメラルドは新興領地持ちの家の息子であるカイエル・トパーヅと婚約した。 しかし今、カイエルの心は、エアリーには向いておらず……。

国護りの聖女と呼ばれていた私は、婚約者である王子から婚約破棄を告げられ、追放されて……。

四季
恋愛
国護りの聖女と呼ばれていたクロロニアは王子ルイスと婚約していた。 しかしある日のこと、ルイスから婚約破棄を告げられてしまって……。

聖女がいなくなった時……

四季
恋愛
国守りの娘と認定されたマレイ・クルトンは、十八を迎えた春、隣国の第一王子と婚約することになった。 しかし、いざ彼の国へ行くと、失礼な対応ばかりで……。

心ない言葉と共に婚約破棄を宣言された日の夜、意外な形で出会いがありまして……?

四季
恋愛
心ない言葉と共に婚約破棄を宣言された日の夜。

聖女マリフィア、婚約破棄される。~追放直後とんでもないことになってしまいました~

四季
恋愛
聖女マリフィア、婚約破棄される。

失礼な人のことはさすがに許せません

四季
恋愛
「パッとしないなぁ、ははは」 それが、初めて会った時に婚約者が発した言葉。 ただ、婚約者アルタイルの失礼な発言はそれだけでは終わらず、まだまだ続いていって……。

それは母の過去の話です。~彼女はかつて婚約者の母親にはめられ婚約破棄されてしまったのです~

四季
恋愛
それは母の過去の話です。 彼女はかつて婚約者の母親にはめられ婚約破棄されてしまったのです。

処理中です...