上 下
1 / 2

前編

しおりを挟む

「やーいやーい! お前みたいな真面目との婚約なんか、破棄だー!」

 私の婚約者ブブレスは少々幼稚な男性だ。

 彼は二十歳を越えている。
 しかしいちいち子どもっぽい物言いをする。
 わざとか否か。
 その辺りは掴めないけれど。

「酷い言い方ですね……相変わらず」
「はぁー? なんてぇー?」
「もう少し普通な感じで言えないものですかね」

 日頃ご機嫌な時の彼は見ていて可愛らしくもある。
 子どもっぽさが良い方向に出て。
 眺めていてほっこりできるような魅力があるのだ。

 けれど!

「出たよ真面目! まっじめ! まっじめ! まっじまーじーまーじーめっ。まっじめばーばあっ、まっじめばばあん、まーじーめ過ぎうざいって、はい! あーあーあーウザすぎぃっ」

 少しでも思い通りにならなかったらこれだ。

「婚約破棄だからな! いいな!」
「本気で言っているのですか」
「当たりめーだろ! 真面目のくせに疑うなよな!」
「そうですか。……分かりました、では」

 こうして婚約は破棄となった。

 でも、これで良かったのかもしれないと思う部分もある。
 なぜなら、彼と共に生涯を共にするのは難しいだろうと思ってしまうからだ。
 彼と生きるということは、子一人を育て見守るようなものだ。
 年齢に相応しい交流の仕方はできないだろう。

 それはつまり、一生疲れるということ。

 そんな人生は正直あまり嬉しいものではない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

薬屋の一人娘、理不尽に婚約破棄されるも……

四季
恋愛
薬屋の一人娘エアリー・エメラルドは新興領地持ちの家の息子であるカイエル・トパーヅと婚約した。 しかし今、カイエルの心は、エアリーには向いておらず……。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

それは母の過去の話です。~彼女はかつて婚約者の母親にはめられ婚約破棄されてしまったのです~

四季
恋愛
それは母の過去の話です。 彼女はかつて婚約者の母親にはめられ婚約破棄されてしまったのです。

聖女にはなれませんよ? だってその女は性女ですから

真理亜
恋愛
聖女アリアは婚約者である第2王子のラルフから偽聖女と罵倒され、婚約破棄を宣告される。代わりに聖女見習いであるイザベラと婚約し、彼女を聖女にすると宣言するが、イザベラには秘密があった。それは...

婚約破棄?お黙りなさいと言ってるの。-悪役令嬢イレーナ・マルティネスのおとぎ話について-

田中冥土
恋愛
イレーナ・マルティネスは代々女性当主の家系に生まれ、婿を迎えることとなっていた。 そのような家柄の関係上、イレーナは女傑・怪女・烈婦などと好き放題言われている。 しかしそんな彼女にも、近頃婚約者が平民出身の女生徒と仲良くしているように見えるという、いじらしくそして重大な悩みを抱えていた。 小説家になろうにも掲載中。

失礼な人のことはさすがに許せません

四季
恋愛
「パッとしないなぁ、ははは」 それが、初めて会った時に婚約者が発した言葉。 ただ、婚約者アルタイルの失礼な発言はそれだけでは終わらず、まだまだ続いていって……。

私の主張は少しも聞いてくださらないのですね

四季
恋愛
王女マリエラは、婚約者のブラウン王子から、突然婚約破棄を告げられてしまう。 隣国の王族である二人の戦いはやがて大きな渦となり、両国の関係性をも変えてしまうことになって……。

処理中です...