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前編

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「貴様のようなちっとも媚を売らん女とはやっていけん! よって、婚約は破棄とする!」

 権力者の息子で私の婚約者でもあるオーディは人の目があるところで突如そう宣言した。

 私の実家もそこそこ権力がある家ではあるのだが、この国の頂点に位置していると言っても過言でない家柄のオーディには逆らえない。ここで私が言い返したりしようものなら、私のみならず私の親や親族にまで罰を与えられてしまうことだろう。

「とことん可愛くない女だ! もう見たくもない!」

 私は受け入れるしかない。
 たとえ理不尽な婚約破棄であっても。

「くすくす……可愛そうに……可愛くないが理由ですって……」
「自分の意見なんて持つから駄目なのよ……」
「権力者には従っておけばすんなりいくのにね……馬鹿な人ね……」

 周囲からは冷ややかな笑いが起こる。

 皆、私を馬鹿にしているのだ。

「ではこれで。消えろよ」
「……はい」

 こうして私たちの関係は終わる。
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