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3話
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あれから数年、私は良家の子息と結ばれた。
「今日は栗きんとんを作ったんだ」
「えっ、そうなの!?」
裕福な家で育った彼は幼い頃よく母親と料理や家事をしていたそうで、そんな事情もあって、彼は今でも料理や家事全般が得意なのだ。
彼の手作り料理を初めて食べた時は大変驚いた覚えがある――そう、とても美味しくて、飛び上がりそうになったほどだった。
きっと、彼の母親も料理上手なのだろう。
「うん。そうなんだよ。親の取引先の会社でさ、作ったんだ」
「へぇー!」
「で、これ余ったから」
彼が差し出してきたのは簡易箱。
蓋を開ければそこには栗きんとんがぎっしりと詰まっている。
「え!?」
「あげる。余り物でごめんね、でも良かったら手作り食べてほしくて。嫌? もし嫌じゃなかったらでいいんだけど」
「嬉しい! ありがとう。貴方の手作り、絶対美味しいやつよね!?」
「食べてみてくれると嬉しいな」
「ええ、ええ! もちろん! もちろんよ、食べるわ!」
私は彼と巡り会えて良かった。
楽しい日々を作ってくれる彼のことを私はどこまでも深く愛している。
永く、一緒にいられるといいな。
それだけが今の私の願いだ。
ちなみにアンドリーオはというと、今はもうこの世にはいないようだ。
あくまで噂で聞いただけなのだが。
彼は私と離れた後、己が誰よりも愛する人と生きる決心をしたそうだ。しかし相手の女性はまだそこまで彼を愛していなかったようで。それゆえすれ違いが起きてしまって、彼ばかりが追い掛けているような状況になってしまったそう。で、ある時ついに、女性から「もう近寄らないでください」と強く言われて拒否されたそうだ。
で、それによって絶望したアンドリーオは、自ら死ぬことを選んだそう。
最期の言葉は「愛は不滅、僕は神」だったらしい。
意味不明だ。
とても理解できる内容ではない――特に後半。
結局彼は愛を手に入れられなかった。
私を捨ててまで女性を選んだのに。
女性にはそれほど相手にされていなかったのだ。
悲しいことね。
……でも、ざまぁみろ。
◆終わり◆
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