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後編
しおりを挟む「すみませんでしたモータルさん、妹が勝手を言って……」
「いえいえ! いいんですよ! 気にしないでください」
色々あって、その後に、モータルと正式に対面する。
その時ですら、彼は優しげだった。
「あんな身勝手な人の姉ですみませんが……どうか、仲良くしてください。よろしくお願いします」
「そんな風に仰らないでください、僕は本当にそれほど気にしていないので」
「……ありがとうございます、モータルさん」
普通、怒られて当然のことをしたと思う。でも彼は私に対して怒りを向けるようなことはしなかった。むしろ、包み込むような優しさ、温かさを贈ってくれた。
その後私とルルは別の場所で生きてゆくこととなった。
◆
あれから三年半。
モータルは個人で行っていた事業で大成功し、それによって大金持ちになった。
彼の実家はもともとそこそこお金のある家だったのだけれど、それに依存せずとも十分裕福と言えるほどの経済状態になった。
ルルはかつて「あんなぼんやりしたやつ将来性もないし」とか言っていたけれど、どうやらそれは間違いだったようだ。
そう、モータルには将来性はあったのだ。
確かに日頃はおっとりしているけれど、意外と聡明なところもあるのである。
で、一方アルフェはというと、女遊びに明け暮れ家にいる妻ルルは放置しているらしい。
何でも、彼が年間に遊ぶ相手女性は十人以上だとか。
アルフェはその整った容姿を利用して、様々な女性と関わり時には深い仲となっているのだそう。
良さげな印象だったのは、彼についてあまり知らなかったからか……。
そして、アルフェに放置され続けたルルは、既に心を病みかなり危ない状態だそうだ。
まぁ、確かに、夫がほとんど家に戻ってこず余所で女遊びしているとしたら――どうにかなってしまうというのがある意味普通だろう。
今、私は、ルルに感謝している。
彼女が驚きのアイデアを出してくれなかったら、あのままアルフェと結婚して私が不幸な目に遭うことになっていた。
それを回避させてくれたのはルルだ。
そういう意味では、彼女は、私にとっての救世主とも言えよう。
身勝手なルルのことはずっと好きではなかったけれど――今なら少しだけ「ルルがいて良かった」と思えそうな気がする。
◆終わり◆
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