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前編
しおりを挟む「あのさ、ちょっといいか?」
「はい……何でしょうか」
あれは、学園卒業の日。
帰りしなに一人の男子学生に声をかけられた――それが後に婚約者となる彼ローランだった。
「もしよかったらなんだけど……これから仲良くしてくれないか?」
「え。何ですかそれ」
彼との交流はその日から始まったのだ。
それまでは、向こうはこちらを知っていたようだが、こちらは向こうをほぼ認識していなかった。学園時代クラスが違っていたこともあり、顔すら認識していない勢いであった。
「ええと、その……実は、前から君に惚れてて。それで……良かったら食事にでも、と」
「ああ、そういうことですか」
「どうだろう?」
「……良いですよ、明るい時間帯であれば」
「ありがとう! じゃあ、約束させてください!」
「はい」
そこから関わるようになっていった私たちは、やがて、両親へも話をして――その果てに婚約するに至った。
思えばあの頃は幸せだった。
二人で未来を信じていられた、あの頃は――。
◆
「俺、彼女と生きることにしたから」
いつからか、ローランは私に目を向けなくなった。
そしてその先で。
彼はついに私ではない女性を選んだ。
「悪いけど、お前との婚約は破棄する」
女連れでそんなことを言われて。
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