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4話
しおりを挟む三女と父親の給料頼みで生活している婚約者の婚約は、彼の借金の返済を押し付けられたことに三女が反発したために破棄となった。
何でも借金の話で言い合いになってしまったそうで。
元よりややボーイッシュなところのある三女がはっきり「肩代わりなんてしない! 嫌!」と言ったところ激昂されて殴る蹴るの暴行を加えられ、彼女は病院送りとなった。
その事件によって二人の関係は壊れたようだ。
相手が少しどうかしている人だったようだが――そんなことを言ってももう健康体であった三女は二度と戻ってはこない。
彼女は暴行によって身体の運動機能の五割以上を失ってしまったのだ。
意識はある。
最低限生命を維持する機能は残っている。
それは幸いだった、が。
しかしもう以前のような普通の暮らしはできない。
三女は不運にも普通を二度と取り戻せない肉体となってしまったのである。
ちなみに末っ子でもある妹だが、彼女もいつの間にか婚約者に捨てられていたようだ。
何度もしつこく頼まれたのでついにその清らかな身体を彼へ捧いだのだが、その翌日「満足したからもういいわ」なんて言われて婚約破棄を告げられてしまったのだそうだ。
それによって彼女は人間不信になり、特に男性に対しては酷く拒否感を示すようになってしまったそう。
彼女はたびたび「男の人は信頼できないから結婚は絶対にしない」と話しているそうだ。
――と、こんな感じで、我が家の五人姉妹の中で幸せな結婚を手に入れられたのは意外にも私ただ一人だけであった。
ずっと空気だった。
ずっと未来のない女のように思われていた。
でも今はこうして最大の幸福を享受している。
やはり人生とは分からないものだ。
幸せになれそうで条件も揃っているのに幸せになれない者もいれば、ぱっとせず薄幸そうだったのに意外なところから飛び込んできた幸せを掴める者もいる――それこそがこの現実世界なのであろう。
◆終わり◆
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