9 / 13
9話「定期的に会っています」
しおりを挟む食事会以降、ローゼットとは定期的に会うようになった。
私が城へ行く時もあれば彼がこちらへ来てくれることもある、その辺りはお互い譲り合ってという感じ。
けれども彼は嫌な顔なんてしない。
王子なのだから本来自分が動く必要はないのだ、が、それでも彼は移動の負担も考慮してこちらへ来てくれるという回もしっかりと作ってくれていた。
一緒にいる時、やはり、彼は時々気を失った。
けれども少し様子を見ていれば大抵はやがて目を覚ます。だから彼が気絶している間はそっと見守るようにしていた。倒れる瞬間に怪我をしないようにだけ気をつけて見ていればそれ以外の点はそれほど心配する必要はないのだと分かったので段々落ち着いて対応できるようになっていった。
――そんなある日のこと。
「久しぶりだな!」
ローゼットの到着を待っていたところ二度と拝みたくなかった顔が目の前に現れた。
「ラスティナ、お前、王子と仲良くしているそうじゃないか。低階級女のくせに、なかなかやるな」
かつて私を切り捨てた身勝手な彼。
こんな形で再会することになるとは思わなかった。
……何だか嫌な予感。
「オフィティ……」
「何だその顔、嫌そうだな」
「嫌ですよ、当然でしょう。二度と見たくないと思っていましたから」
「ああそうかそうか、捨てられて逆恨みしてたんだなぁ~」
彼はわざとらしくふざけたような言い方をした。
そんな風に挑発して楽しいか? ……それも、今さら。
「ど~せ遊ばれてんだよ」
「何も知らないのにそんなことを言うのはやめていただきたいものですね」
「ぷーぷぷぷ! 怒ってやんの! だっせ! だっせだっせ!」
ここまでくるとさすがにもう腹も立たない。
彼の挑発は子どものそれと似たようなレベルだ。
「それで、用は何でしょうか」
「用? 王子の話だよ」
「王子の……?」
刹那、彼の表情が背筋が凍りつくほど冷たいものになった。
「王子と仲良くとかふざけんなって」
声までも冷たい。
「え……」
「くっだらねぇ下級女が勘違いしてんじゃねえよ」
何を言われているのか分からない。
「貴方には関係のないことです」
「低級な女が王子に選ばれると本気で思ってんだろ? お前馬鹿だからな。今日はそれを教えに来てやったんだ」
「……迷惑です」
「身の程をわきまえろよ!」
「私たちのことです、貴方には関係ありません」
すると彼は急に目じりをつり上げる。
「お前だけ幸せになれると思うなよ!!」
オフィティはガーディアとどうなったのかを自ら話し始める。
しかしそれは幸せな物語ではなくて。
むしろ彼がガーディアに嫌われ捨てられるという切なさをはらんだものであった。
「もうこれ以上ややこしいことに巻き込まれたくない、そう言ってガーディアは俺を捨てたんだ」
「そうでしたか」
「お前のせいだぞ!!」
「……無関係です」
「お前が余計なことを言ったからだ。そのせいでガーディアに嫌われた。俺の印象を悪くしたのはお前だ、つまりすべての責任はお前にある」
妄想だ、そんなの。
そう思うけれどさすがにこの状況では言うことはできない。
母が近くにいる日であれば良かったのだが……悲しいことに今日に限って母は出掛けている、この場には私の味方はいない。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
婚約者が裏でこっそり姫と付き合っていました!? ~あの時離れておいて良かったと思います、後悔はありません~
四季
恋愛
婚約者が裏でこっそり姫と付き合っていました!?
あの時離れておいて良かったと思います、後悔はありません。
病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。
鍋
恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。
キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。
けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。
セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。
キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。
『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』
キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。
そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。
※ゆるふわ設定
※ご都合主義
※一話の長さがバラバラになりがち。
※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。
※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
婚約破棄のその後に
ゆーぞー
恋愛
「ライラ、婚約は破棄させてもらおう」
来月結婚するはずだった婚約者のレナード・アイザックス様に王宮の夜会で言われてしまった。しかもレナード様の隣には侯爵家のご令嬢メリア・リオンヌ様。
「あなた程度の人が彼と結婚できると本気で考えていたの?」
一方的に言われ混乱している最中、王妃様が現れて。
見たことも聞いたこともない人と結婚することになってしまった。
想い合っている? そうですか、ではお幸せに
四季
恋愛
コルネリア・フレンツェはある日突然訪問者の女性から告げられた。
「実は、私のお腹には彼との子がいるんです」
婚約者の相応しくない振る舞いが判明し、嵐が訪れる。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる