消えてしまいたいと思った。その日、生まれて初めて。～絶望から始まる新たなる幸福への道～

１話

　消えてしまいたいと思った。

　その日、生まれて初めて。

　婚約者を妹に奪われ、二人の仲良しな様を見せつけられて、婚約破棄宣言までされてしまって――生きる希望を失ったのだ、私は。

「さようなら、世界」

　衝撃の日の夜、家からそう遠くない崖へ向かった。

　ここはこれまで多くの人たちをあの世へ引きずり込んだ場所。それゆえ皆からは恐れられている。が、今は怖さなど感じない。だって私はこの世界から去るためにここへ来たんだもの、怖いわけがない。この場所はきっと私を望み通りに誘ってくれる。

　大丈夫、覚悟は決めている。

　――そして私は飛び下りた。