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後編

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 ◆


「お前との婚約なんぞ、もう破棄とする」

 レデスィンは変わってしまった。

 仕事場の女性の後輩プーリアが現れてから。

 ……もっとも、先に手を出したのはプーリアではなくレデスィンなのだが。

 私とて、そのくらいのことは知っている。

「何て顔してるんだ、情けない」

 優しくて面白かった彼はもういない。

「驚きますよ。いきなりそんなことを言われたら。誰だって驚くものでしょう」
「そうか? お前だって知っているだろ、俺は今プーリアだけを愛してるって」

 かつての彼は消えてしまった。

「後輩の方……ですよね」
「そうそう。俺は今、もう、彼女しか見えない。だから婚約なんか破棄することにしたんだ」

 そうか、婚約破棄か。

 もう彼は決めているのだろう。
 そしてきっと私が何を言っても意味なんてないのだろう。

 ならば最終プランで。

「分かりました。でも……少し、残念です」

 私は隠し持っていた袋を取り出し、その口を彼に向けて開ける。

 するとそこから大量のかえるが飛び出してきた。

「ぎゃ……っ、んあッ!?」

 レデスィンが大嫌いなかえる。
 それを彼に与えよう。

 それも、わざとらしいくらい、大量に!

 そのくらいしなくては駄目だ――だって嫌がらせなのだから。

「うわああああああ!!」

 パニックに陥るレデスィン。

「か、か、かえるぅぅぅぅぅ!? 嫌だ、ぁ、嫌だぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 かえるたちに一斉に襲いかかられ、レデスィンはもはや冷静さなど欠片ほども持っていない。

「ぎゃああああ!! ぼぅふええええええッ!? ぴぎゃあああああ! ぴぎゅおあああああああ!! 嫌だあああああッ!? ひぃっ、ひっついて――ああああああああ!!」

 レデスィンは窓の方へと走り、急いで窓を開けると、そのまま飛び降りた。

 垂直落下したレデスィンの身体。
 その生が保たれるわけもなく。
 地面に叩きつけられ彼は一瞬にして生を終えた。

「ふう。……さ、帰ろ」

 これで婚約破棄してきたことへの復讐は終わった。

 彼も滅んだし。
 もうこれ以上は望まない。


◆終わり◆
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