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後編
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それから今日で三年になる。
私は今もエルフィンと共に一つの屋根の下で暮らしている。
親とはあれから一度も会っていない。
表向き私は行方不明ということになっているようだ。
「ねえエルフィン、覚えてる?」
「三年前の話?」
「ええ。三年前の今日……貴方と出会ったわよね。傘を差し出してくれて」
今日も雨が降っている。
そんな天気の日には、いつも、あの日のことを思い出す。
「ああそうだね」
ミルクティーを飲んでいたエルフィンはこちらを向いて穏やかに微笑む。
この笑みが好き。
それは出会った日から変わらない。
「私、あの時貴方に出会えて本当に良かったと思っているわ」
たとえ表向きには消えたとなっていたとしても、この幸せがあるなら私はそれで満足だ。
それ以上なんて望まない。
「……ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいよ」
「貴方は?」
「もちろん僕も君に出会えて良かったと思っているよ」
「本当?」
「もちろんだよ。嘘なんてつくわけない」
「そう。ありがとう、嬉しいわ」
ちなみに。
かつて私を切り捨てたルルゼンは、一年前の今日、自宅の前で倒れて亡くなっていたらしい。
事件が疑われる状況だったため調査が始まる。が、それらしい情報や証拠はなかなか出ず。急死しそうな要素はなく、医師に診せても死因さえも不明で、どうしようもない状況に陥ったらしい。で、調査開始から半年後、あまりに進展がないために調査は打ち切りとなったそうだ。
◆終わり◆
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