憎い相手に復讐するという能力、初めて使います！ ～婚約破棄した彼のその後は～

憎い相手に復讐するという能力、初めて使います！ ～婚約破棄した彼のその後は～

　私には特別な力がある。

　それは、憎い相手に復讐するという能力だ。

　ただ、恐ろしい力を無駄に使ってはならないと言われて育ってきたので、これまでその能力を使ったことはない。

　しかし……。

「お前にはもう飽きた。ま、元々そんなに好きってわけでもなかったしな。家柄は良いから悪い相手ではないかなーとは思ってたけどよ。ま、金？　そんな感じだから。最初から好きだったわけじゃねーしさ、だからもういいだろ？　頑張って耐えた方だろ？　俺はある意味被害者とも言えるんだよなー」

　婚約者アブロフの身勝手さには耐えられない。

「てことで、婚約は破棄な！」

　――許さないわ、貴方だけは。

　婚約破棄された日、私は、生まれて初めてその能力を行使した。

　翌日アブロフは謎の落石事故に巻き込まれた。
　朝の散歩中だったそうだ。
　急に坂の上から大きな岩石が複数転がり落ちてきて、それに身体の一部を踏み潰されてしまったのだとか。

　それだけでは終わらず。

　入院中病室に強盗が入り刃物で傷を負わされてしまって――彼の状態は入院前よりさらに悪化することとなってしまったそうだ。

　ただ、その強盗は彼を傷つけるだけ傷つけてさっさと去っていったそうで、その目的は結局謎のままだったらしい。

　何しに来たんだ？　というような感じだったとか。

　不思議なこともあるものだなぁ、と、話を聞いて思った。

　また、その後もたびたび彼には災難が降りかかったそうだ。

　多分私の能力が発動しているからなのだろう。
　定かではないけれど。

　恐らくそうだろう、と、私は考えている。


◆終わり◆