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後編

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 一礼し、彼の前から去る。

 ああ、こんなに嬉しいのはいつ以来だろう。

 今ならどんなことでもできそうな気すらする。
 そんな気持ちでいっぱいだ。

「お、おいいぃぃぃぃ!?」

 叫ぶローブゼンの声が聞こえる。
 けれど気にはしない。
 もう振り返りはしない。

 こうして私は酒飲みローブゼンから解放された。


 ◆


 あれから数ヶ月、私は川で魚を獲っていて知り合った青年と結婚した。

「今日も川に行かないかい?」
「ええ、いいわよ」
「桶持っていくな!」
「釣り竿も忘れないでね、この前みたいに」
「だっはは、そうだった! 前やらかしたんだった! 気をつけないと~」

 今は気が合う者同士楽しく暮らせている。

 ちなみに、これは父から聞いた話なのだが、ローブゼンはあの後酒の飲み過ぎで内臓を悪くして亡くなったそうだ。

 ある朝突然倒れて。
 そのまま誰にも気づかれず落命してしまったらしい。

 しかし、死んでしまっていてもなお誰にも気づかれないとは――少々切ない、お気の毒に。


◆終わり◆
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