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前編

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 王国の騎士団で若くして副団長にまで駆け上がっていた私には婚約者がいる。
 その名はアーベライ。
 彼もまた兵士として戦闘訓練を受けている人間だ、しかしいまいち出世はせず私よりも下の地位にある。

「悪いがな、お前との婚約は破棄とすることにした」

 そんなアーベライはある日突然そんなことを告げてきた。

「婚約破棄……!?」
「お前はさ、俺がいなくても強いだろ、出世もしてるしな。だから、さ、もういいだろと思って。お前に俺は必要ないはずだ、だから――」
「そんなことは思っていないわ!」
「だとしても要らないことは事実だろ。お前は俺がいなくても戦って生きてゆける」

 出世するのは良いことだ。
 ただ、中には女が出世して地位に就くことをあまり良く思わない者も存在して、アーベライもそれに近い人だった。

「それとこれとは話が別でしょう」
「別じゃない」
「ええ……」
「俺はさ、もっと、護ってやらなくちゃならないような女がいいんだ。その方が俺の存在意義を感じられるからな」

 こうして私はアーベライに切り捨てられたのだった。

 ……まぁ仕方ない、か。

 出世していることは事実だし。
 今さら生き方を変えるわけにもいかないし。
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