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後編

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 ◆


「婚約、破棄することにしたから」

 告げてきたのは、先月婚約したばかりの婚約者フルーレン。

 彼は出会った頃よく私の瞳を褒めてくれていた。
 とても美しい、と、毎日言ってくれていた。
 若干鬱陶しいと思ってしまうほどに、彼は私の瞳の色を好んでくれているようだった。

「クロへリアさんの瞳さ、美しいと思っていたんだよ」
「そう言ってくれていましたね」
「でもさ……最近はどうしても美しいとは思えなくて、気持ち悪いとしか思えなくなってしまったんだよ」

 けれども彼の心は変わってしまったようで。

「そう……」
「ごめん、こんなことを言って」
「いえ、構いませんよ」

 もう私には興味はないみたいだ。

「それにさっ」
「何です?」
「もっと好きな人見つけちゃったんだよねぇ~」

 さらに彼は続ける。

「その娘はさぁ、クロへリアさんよりずーっと可愛らしいんだよ。きらきらしてるし、袖が長くなってるのも可愛いしさ。どこまでもプリティなんだよねー、あー好き好き」

 まだ続く。

「てかさ、クロへリアさんて、瞳以外に魅力ないよね」
「そうですか」
「他の部分、ダサくない?」
「そうかもしれませんね」
「そうだよ! 女性らしくないし胸も強調してないし! 見てて溜め息が出るくらいダサくてみっともないよ! 女性らしさなんて欠片もない!」

 ――これは。

 腹が立ってしまいそうだ。

 刹那、能力が発動される。

「だから婚約は破棄して――っ、う、ぁ……ぇ……うぎゃあああああああああああああああああああ!!」

 突如大量の紅を吐くフルーレン。
 涙もこぼれている。

「な、に、これ……う、ぐ、ぐぅるぎゃああああぁぁぁぁぁぁ! あああああああ!? ぅ、ああああああああああ!!」

 そして彼は息絶えた。


 ◆


 あれから何年が経っただろう?
 思い出せない。
 でも三年くらいは経った気がする。

 私は今、一国の王妃となり、国のため国民のために生きている。

 フルーレンの陰はもう追わない。
 今は愛する人のために生きる。
 愛しい人、他の誰でもない夫のために、日々を生きるのだ。


◆終わり◆
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