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後編
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「婚約、破棄することにしたから」
告げてきたのは、先月婚約したばかりの婚約者フルーレン。
彼は出会った頃よく私の瞳を褒めてくれていた。
とても美しい、と、毎日言ってくれていた。
若干鬱陶しいと思ってしまうほどに、彼は私の瞳の色を好んでくれているようだった。
「クロへリアさんの瞳さ、美しいと思っていたんだよ」
「そう言ってくれていましたね」
「でもさ……最近はどうしても美しいとは思えなくて、気持ち悪いとしか思えなくなってしまったんだよ」
けれども彼の心は変わってしまったようで。
「そう……」
「ごめん、こんなことを言って」
「いえ、構いませんよ」
もう私には興味はないみたいだ。
「それにさっ」
「何です?」
「もっと好きな人見つけちゃったんだよねぇ~」
さらに彼は続ける。
「その娘はさぁ、クロへリアさんよりずーっと可愛らしいんだよ。きらきらしてるし、袖が長くなってるのも可愛いしさ。どこまでもプリティなんだよねー、あー好き好き」
まだ続く。
「てかさ、クロへリアさんて、瞳以外に魅力ないよね」
「そうですか」
「他の部分、ダサくない?」
「そうかもしれませんね」
「そうだよ! 女性らしくないし胸も強調してないし! 見てて溜め息が出るくらいダサくてみっともないよ! 女性らしさなんて欠片もない!」
――これは。
腹が立ってしまいそうだ。
刹那、能力が発動される。
「だから婚約は破棄して――っ、う、ぁ……ぇ……うぎゃあああああああああああああああああああ!!」
突如大量の紅を吐くフルーレン。
涙もこぼれている。
「な、に、これ……う、ぐ、ぐぅるぎゃああああぁぁぁぁぁぁ! あああああああ!? ぅ、ああああああああああ!!」
そして彼は息絶えた。
◆
あれから何年が経っただろう?
思い出せない。
でも三年くらいは経った気がする。
私は今、一国の王妃となり、国のため国民のために生きている。
フルーレンの陰はもう追わない。
今は愛する人のために生きる。
愛しい人、他の誰でもない夫のために、日々を生きるのだ。
◆終わり◆
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