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前編
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領地持ちの家に長女として生まれた私は、幼い頃から好き嫌いや趣味も周囲の女性たちとは違っていて、父親からもあまり可愛がられなかった。
母親は私の妹を生んだ年に亡くなって。それから私は家に居づらくなった。追い出されないだけましと言えばそれもそうなのだが。ただ、母親に似て可憐になっていく妹ばかりを愛する父親を見ていたら、時折「私は何のために生きているのだろう」と思うようになった。
そんな状態で迎えた十八の誕生日。
私は父親の知り合いの息子と婚約することとなる。
何でも、その息子は女性慣れしていないらしい。そこで、女性らしさが高くない私となら関われるかもしれないという話になり、私との婚約話が発生したそうだ。若干失礼な気もするが、女性らしさが低いという意味では私は適任だったのかもしれない。
ちなみに、その婚約は、もう一ヶ月も前のことだ。今はまだ婚約者として時折関わる程度でしかないけれど、私はきっとこのまま彼と結婚することになるのだろうーーそう思っていた、今日までは。
「なぜ貴方の部屋にそのような方がいらっしゃるのですか?」
美味しそうな菓子を購入できたので、私は、特に深い意味もなかったが婚約者の家を訪ねた。そうして訪れた彼の部屋で目撃してしまったのはとんでもない光景。
彼は一応正式な私の婚約者のはずなのに、知らない女性と唇を重ねている。
ゆで卵のように滑らかな肌。うっすら紅を塗った唇。アーモンド型の目、華のような睫毛。栗色の髪はやや波打っていて、腰辺りまで伸びている。ただ、手入れはされているようで、髪の表面には艶がある。
確かに美しい女性ではあるが、女性慣れしていないという話はどうなったのだろう?
「え? この娘はただの友だちだよ」
また、驚いたことに、婚約者は平気な顔でそんなことを返してきた。
母親は私の妹を生んだ年に亡くなって。それから私は家に居づらくなった。追い出されないだけましと言えばそれもそうなのだが。ただ、母親に似て可憐になっていく妹ばかりを愛する父親を見ていたら、時折「私は何のために生きているのだろう」と思うようになった。
そんな状態で迎えた十八の誕生日。
私は父親の知り合いの息子と婚約することとなる。
何でも、その息子は女性慣れしていないらしい。そこで、女性らしさが高くない私となら関われるかもしれないという話になり、私との婚約話が発生したそうだ。若干失礼な気もするが、女性らしさが低いという意味では私は適任だったのかもしれない。
ちなみに、その婚約は、もう一ヶ月も前のことだ。今はまだ婚約者として時折関わる程度でしかないけれど、私はきっとこのまま彼と結婚することになるのだろうーーそう思っていた、今日までは。
「なぜ貴方の部屋にそのような方がいらっしゃるのですか?」
美味しそうな菓子を購入できたので、私は、特に深い意味もなかったが婚約者の家を訪ねた。そうして訪れた彼の部屋で目撃してしまったのはとんでもない光景。
彼は一応正式な私の婚約者のはずなのに、知らない女性と唇を重ねている。
ゆで卵のように滑らかな肌。うっすら紅を塗った唇。アーモンド型の目、華のような睫毛。栗色の髪はやや波打っていて、腰辺りまで伸びている。ただ、手入れはされているようで、髪の表面には艶がある。
確かに美しい女性ではあるが、女性慣れしていないという話はどうなったのだろう?
「え? この娘はただの友だちだよ」
また、驚いたことに、婚約者は平気な顔でそんなことを返してきた。
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