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前編

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 私の婚約者フルベンガインは、人を侮辱すること以外に得意なことがない。

「おい! クソ女! さっさと飯出せよ!」
「それはまだ私の仕事ではないのですが……」

 彼はいつも私に傷つけるような言葉を投げかける。

「はぁぁ!? 喧嘩売ってんのかぁ!? それでなくともゴミなんだからよぉ、飯出せやぁ!」
「話を聞いてください」
「うるせぇわ! あーあ、クズ女ウゼー。……決めた。こうなりゃ婚約は破棄だ! 婚約破棄してやる!!」

 だからこの言葉を待っていた。

「そうですね。私では力になれませんね」

 私は一枚の紙を差し出す。

「ここにサインお願いします」

 そう、これは婚約破棄のための書類。

 彼が婚約破棄を言い出す日を待ちつつ作成していたもの。

「あぁ? なんだぁこれ?」
「ここにサインしていただければ私との婚約を破棄できます」
「あぁそうかよ。……ほら、これでいいな」
「ありがとう。では失礼します」

 彼は今さら戻ることもできず、サインするしかなかった。
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