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20話「心を決めるまで」
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「エリサ様がさぁ、殿下のところに嫁いでくれたらいいのにねぇ」
最近城内ではそんな話をよく聞く。
「それな! 思った!」
「そしたらこの国は安泰よねぇ」
「期待大だわ~」
「あの人ならくだらないこともしないだろうし、隣国の出だなんてどうでもよくなるくらいよね」
メイドたちの中でもそういう話題はよく出ているようだ。
ディアとの未来。
いつかは決めて返事をしなくてはならない。
分かってはいるのだけれど、責任重大すぎて、今はまだ少し心がゆらゆらと揺れてしまう。
ディアのことは好きだ。良い人だと思うし尊敬もしている。けれども彼と結婚するとなれば状況は大幅に変わることとなる。なんせそれは王家に嫁ぐということなのだ。しかも、未来の国王の妻となる、ということでもある。ゆえに軽い気持ちで踏み込むことは許されない。彼との結婚を軽く考えるということは、イコール、この国の未来を軽く考えるということ。常識的に考えて、そんなことは許されないだろう。
……もっとも、妹メリーは母国を滅茶苦茶にしているようだが。
そのようなことは本来許されないことだ。
そういった振る舞いは周りに迷惑をかけるだけだから、である。
「ディア様とエリサ様、関係はどんな感じなのかしらねぇ」
「悪くはないみたいよ? たびたびお茶なさってるみたいだし。その時は楽しそうに話されているみたいだし」
未来の王の妻になるかもしれない、となれば、それ相応の覚悟が必要というものだ。
「はよ結ばれてぇ~」
「それな! 思った!」
「気になって仕方ないわ、二人の関係。……ワクワクする~」
期待されていることは知っている。
でもだからこそ慎重になってしまっている。
ただ、いつかは、答えを出さなくては――。
「エリサさん、モモクサの花が咲いたので見に来てくださいませんか?」
ある日突然ディアからの謎の誘い。
「え? も、もも?」
あまり聞き慣れない単語が出てきて戸惑う。
「モモクサです。自室で育てているのですが、今朝、ついに花が咲きました」
「あ、趣味で育成されている感じですか?」
「そうですね」
「それは気になります。今から見に行っても構いませんか?」
「ぜひ!」
ということで、ディアの部屋へ連れて行ってもらうこととなった。
思えば彼の部屋へ行くというのはこれまであまりなかった気がする。二人で同じ時間を過ごす時であっても、だ。ゆえに彼の部屋についてはあまり知らない。どんな天井や壁紙なのだろう、とか、どんな物が置かれているのだろう、とか、一度気になりだすとどうしても気になってしまう。
「ところでモモクサとはどのような植物ですか?」
「モモクサはですね、葉が桃の実のような優しい色をしていて、花は桃の実に似た形をしています」
モモクサについて語るディアは楽しそうだ。
「それはきっと可愛いでしょうね」
「分かっていただけますか……!」
「お好きなんですか? モモクサ」
「はい! 好きで好きで、もうずっと育てています!」
彼をそんなにも魅了する植物とは興味深い。
その後彼の部屋にあるモモクサを見せてもらったのだが、彼が言っていた通りの見た目だった。
葉はふんわりとしたクリーム色にほのかにピンクを混ぜたような可愛らしい色。
花は果実の桃によく似た見た目で、形などは特によく似ている。
「可愛らしい雰囲気ですね、モモクサ」
感想としてすぐに言えたのはそれだけだった。
本当はもっと気の利いたことを言えれば良かったのだけれど。
私にはそこまでの器用さはなくて。
「エリサさんのお好みに合いましたか?」
ただ、それでも、ディアが不満を抱いたような顔をすることはない。
「好きですよ、こういう可愛いものは」
「それは良かった……!」
最近城内ではそんな話をよく聞く。
「それな! 思った!」
「そしたらこの国は安泰よねぇ」
「期待大だわ~」
「あの人ならくだらないこともしないだろうし、隣国の出だなんてどうでもよくなるくらいよね」
メイドたちの中でもそういう話題はよく出ているようだ。
ディアとの未来。
いつかは決めて返事をしなくてはならない。
分かってはいるのだけれど、責任重大すぎて、今はまだ少し心がゆらゆらと揺れてしまう。
ディアのことは好きだ。良い人だと思うし尊敬もしている。けれども彼と結婚するとなれば状況は大幅に変わることとなる。なんせそれは王家に嫁ぐということなのだ。しかも、未来の国王の妻となる、ということでもある。ゆえに軽い気持ちで踏み込むことは許されない。彼との結婚を軽く考えるということは、イコール、この国の未来を軽く考えるということ。常識的に考えて、そんなことは許されないだろう。
……もっとも、妹メリーは母国を滅茶苦茶にしているようだが。
そのようなことは本来許されないことだ。
そういった振る舞いは周りに迷惑をかけるだけだから、である。
「ディア様とエリサ様、関係はどんな感じなのかしらねぇ」
「悪くはないみたいよ? たびたびお茶なさってるみたいだし。その時は楽しそうに話されているみたいだし」
未来の王の妻になるかもしれない、となれば、それ相応の覚悟が必要というものだ。
「はよ結ばれてぇ~」
「それな! 思った!」
「気になって仕方ないわ、二人の関係。……ワクワクする~」
期待されていることは知っている。
でもだからこそ慎重になってしまっている。
ただ、いつかは、答えを出さなくては――。
「エリサさん、モモクサの花が咲いたので見に来てくださいませんか?」
ある日突然ディアからの謎の誘い。
「え? も、もも?」
あまり聞き慣れない単語が出てきて戸惑う。
「モモクサです。自室で育てているのですが、今朝、ついに花が咲きました」
「あ、趣味で育成されている感じですか?」
「そうですね」
「それは気になります。今から見に行っても構いませんか?」
「ぜひ!」
ということで、ディアの部屋へ連れて行ってもらうこととなった。
思えば彼の部屋へ行くというのはこれまであまりなかった気がする。二人で同じ時間を過ごす時であっても、だ。ゆえに彼の部屋についてはあまり知らない。どんな天井や壁紙なのだろう、とか、どんな物が置かれているのだろう、とか、一度気になりだすとどうしても気になってしまう。
「ところでモモクサとはどのような植物ですか?」
「モモクサはですね、葉が桃の実のような優しい色をしていて、花は桃の実に似た形をしています」
モモクサについて語るディアは楽しそうだ。
「それはきっと可愛いでしょうね」
「分かっていただけますか……!」
「お好きなんですか? モモクサ」
「はい! 好きで好きで、もうずっと育てています!」
彼をそんなにも魅了する植物とは興味深い。
その後彼の部屋にあるモモクサを見せてもらったのだが、彼が言っていた通りの見た目だった。
葉はふんわりとしたクリーム色にほのかにピンクを混ぜたような可愛らしい色。
花は果実の桃によく似た見た目で、形などは特によく似ている。
「可愛らしい雰囲気ですね、モモクサ」
感想としてすぐに言えたのはそれだけだった。
本当はもっと気の利いたことを言えれば良かったのだけれど。
私にはそこまでの器用さはなくて。
「エリサさんのお好みに合いましたか?」
ただ、それでも、ディアが不満を抱いたような顔をすることはない。
「好きですよ、こういう可愛いものは」
「それは良かった……!」
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