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14話「もう恐れはない」
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ディアのため、そして彼の国のために、私は力を使うことにした。
生まれながらにして持っていた魔力。
それは呪いの鎖のようだった。
けれども今こそそれを善良な人たちのために使いたい。
そうすればきっと――私のこれまでの苦労も報われるだろうから。
「コングラシャヘリモヘリトラフトラクトフコングラシャトラヘリハモトリハラトラフムトラフシャラハトラハコングラシャヘリモトストカコングラシャヘリモトリストフコングラシャヘリモ」
呪文を唱える。
発動する魔法。
目の前に置かれていた魔物一体は光に包まれ消し飛ばされた。
「これは……凄い、想像以上の威力です」
その様を見ていたディアは感心したように感想を述べる。
――そう、これはまだ実践ではない。
ディアに協力すると決めた私はまずその力を見てもらうことにした。何事も言葉で説明するより実際に見てもらう方が早く伝えられるものだから。それで、国が以前拘束していた魔物を連れてきてもらい、その魔物に向けて魔法を放ってみたのである。
「光の魔法ですか?」
「はい、今のはそうです」
ディアは軽く握った片拳を口もとに添えつつ「これほどまでとは……」と独り言を呟いていた。
「魔物に対してであれば光の魔法が効果的かと思いそれを選びました」
「なるほど」
「ですが他の属性の魔法も使えます」
「多属性……」
「はい。私の場合は属性に縛られません。その点は多少珍しいかもしれません」
もっとも、そういうところもまた、私を不幸にしてきた点なのだが。
魔法使いは大抵特定の属性の魔法を使う。複数の属性の魔法を一人が使う、ということは、歴史上なかったわけではないようだがわりと珍しいことではあるのだ。ゆえに、多数の属性の魔法を使いこなす者は良く思われない傾向がある。いや、良く思われない、というよりかは、気味悪がられる、という方が相応しいかもしれない。いずれにせよ、多属性魔法使いだからといって愛されるわけではないのだ。
「もしよければ他の属性の魔法も見せてくださいませんか?」
「……不快ではありませんか」
「まさか。エリサさんのどこに不快な要素があるのでしょう。そもそも、魔法の才があることと不快な存在であることに繋がりなどありませんし」
本当に、彼の言葉にはいつも救われる。
ディアは深く考えず発しているのだろう。
けれどもその言葉一つ一つが私の心にはじんわりと染み渡るのである。
「分かりました、ではお見せします」
彼ならきっと私の力を受け入れてくれる。
今はそう信じられる。
だから怖くはない。
「メールートハールートリールトンクソンアンドラストリヘリアメールートハールートリールメリアメールートハールートリールメリアメリメリアリストンメールートハールメルートリールロイントソンアーメーニアアメーリーニアアリストリストアミニケリハールーリンクトリリアンメリニアリスキレリアメールートハールートリール」
彼の前でなら、どんな魔法も使えるだろう。
「ウンジュラリンジュラハントラヘリニホララウンジュラリンジュラハントラヘリニホララヘントラハントリヘンホラエリミネウンジュラリンジュジュミラハントラヘリニホラジュミレネジュジュホリリメウンジュラリンジュラミレニリュミラニラハントラヘリニホラウンジュラリンジュラハントラヘリニホラ」
怖さも、恐れも、もうない。
「リッツゥリッツゥリツツラティッツゥティットゥオポポリッツゥリッツゥリアリツツラティッツゥティットゥオンポポポポポポラッティタテティラッティラアラッティオポポンオポポネオポポントンリッティリッツゥティットリリツツラティッツゥオポポティットゥポポオポティッツオポッポポッポティポッポポティティティットティットポポポリッツゥリッティティリッポポポポピラリッツゥリッツゥリツツラティッツゥティットゥリッツゥリッツゥリティティトゥットツツラティッツゥミッツゥオポポオッポッポポポティッテリッツゥリツリィリツツリィティットゥ」
生まれながらにして持っていた魔力。
それは呪いの鎖のようだった。
けれども今こそそれを善良な人たちのために使いたい。
そうすればきっと――私のこれまでの苦労も報われるだろうから。
「コングラシャヘリモヘリトラフトラクトフコングラシャトラヘリハモトリハラトラフムトラフシャラハトラハコングラシャヘリモトストカコングラシャヘリモトリストフコングラシャヘリモ」
呪文を唱える。
発動する魔法。
目の前に置かれていた魔物一体は光に包まれ消し飛ばされた。
「これは……凄い、想像以上の威力です」
その様を見ていたディアは感心したように感想を述べる。
――そう、これはまだ実践ではない。
ディアに協力すると決めた私はまずその力を見てもらうことにした。何事も言葉で説明するより実際に見てもらう方が早く伝えられるものだから。それで、国が以前拘束していた魔物を連れてきてもらい、その魔物に向けて魔法を放ってみたのである。
「光の魔法ですか?」
「はい、今のはそうです」
ディアは軽く握った片拳を口もとに添えつつ「これほどまでとは……」と独り言を呟いていた。
「魔物に対してであれば光の魔法が効果的かと思いそれを選びました」
「なるほど」
「ですが他の属性の魔法も使えます」
「多属性……」
「はい。私の場合は属性に縛られません。その点は多少珍しいかもしれません」
もっとも、そういうところもまた、私を不幸にしてきた点なのだが。
魔法使いは大抵特定の属性の魔法を使う。複数の属性の魔法を一人が使う、ということは、歴史上なかったわけではないようだがわりと珍しいことではあるのだ。ゆえに、多数の属性の魔法を使いこなす者は良く思われない傾向がある。いや、良く思われない、というよりかは、気味悪がられる、という方が相応しいかもしれない。いずれにせよ、多属性魔法使いだからといって愛されるわけではないのだ。
「もしよければ他の属性の魔法も見せてくださいませんか?」
「……不快ではありませんか」
「まさか。エリサさんのどこに不快な要素があるのでしょう。そもそも、魔法の才があることと不快な存在であることに繋がりなどありませんし」
本当に、彼の言葉にはいつも救われる。
ディアは深く考えず発しているのだろう。
けれどもその言葉一つ一つが私の心にはじんわりと染み渡るのである。
「分かりました、ではお見せします」
彼ならきっと私の力を受け入れてくれる。
今はそう信じられる。
だから怖くはない。
「メールートハールートリールトンクソンアンドラストリヘリアメールートハールートリールメリアメールートハールートリールメリアメリメリアリストンメールートハールメルートリールロイントソンアーメーニアアメーリーニアアリストリストアミニケリハールーリンクトリリアンメリニアリスキレリアメールートハールートリール」
彼の前でなら、どんな魔法も使えるだろう。
「ウンジュラリンジュラハントラヘリニホララウンジュラリンジュラハントラヘリニホララヘントラハントリヘンホラエリミネウンジュラリンジュジュミラハントラヘリニホラジュミレネジュジュホリリメウンジュラリンジュラミレニリュミラニラハントラヘリニホラウンジュラリンジュラハントラヘリニホラ」
怖さも、恐れも、もうない。
「リッツゥリッツゥリツツラティッツゥティットゥオポポリッツゥリッツゥリアリツツラティッツゥティットゥオンポポポポポポラッティタテティラッティラアラッティオポポンオポポネオポポントンリッティリッツゥティットリリツツラティッツゥオポポティットゥポポオポティッツオポッポポッポティポッポポティティティットティットポポポリッツゥリッティティリッポポポポピラリッツゥリッツゥリツツラティッツゥティットゥリッツゥリッツゥリティティトゥットツツラティッツゥミッツゥオポポオッポッポポポティッテリッツゥリツリィリツツリィティットゥ」
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