婚約した王子を妹に奪い取られてしまいましたが、結果的には幸せを感じられる居場所を手に入れることができました。

四季

文字の大きさ
上 下
2 / 25

2話「放置されていたのだけれど」

しおりを挟む
 あれからはこっそり持ってきた魔法関連の書物を読みながら時間を潰す日々。

 結局ルッティオは私をずっと無視している。
 何日経っても状況は変わらない。

 もしかしたら一生このまま……?

 想像するとゾッとする。

 私はこの先ずっとここで一人で過ごさなくてはならないのだろうか。愛されず、可愛がられもせず、それどころか挨拶すらしてもらえない状態で。いつまでも独りぼっちなのだろうか。

 ただ、家にいるよりかはましだった。

 家にいるとメリーに悪者に仕立て上げられる。でもここではそれはない。放置され続けているとしても、理不尽に悪女と言われることはない。それだけは救いだろう。

 ここでのんびり暮らそう。

 愛など求めはしない。
 それでいい。
 きっとそれが私に与えられた運命なのだろうから。

 ――だが、そんなある日、メリーが城を出入りしているという噂を耳にして。

 嫌な予感が湧き上がる。
 彼女が絡んで良い結末になったことは今まで一度もない。

 噂によればメリーはエリサの妹という立場を利用してルッティオに接近しているらしい。

 ……何をするつもりなのだろう。

 彼を奪い取る?
 私を悪評を広める嫌がらせ?

 いずれにせよ、彼女が良いことをするはずがない。

 ――そうして訪れたある昼下がり。

「君、少しいいか」
「ルッティオ、様……?」

 物凄く久々にルッティオに声をかけられた。

「君は妹さんを虐めていたそうだね」
「え……」
「彼女を可憐な容姿を羨み、執拗に虐め、呪いをかけたこともあったそうじゃないか」

 やはりか……。

「それは嘘です」

 メリーは私の立場を壊したいのだろう。

「本人がそう言っていたのですか?」
「ああ」
「事実ではありません」
「なんということを。……どこまで悪女なんだい君は」

 いきなり悪女呼ばわりなんて失礼すぎではないだろうか。

「私は妹を虐めたことなどありません」
「彼女は決心して言ってくれたんだ。本当のことを。姉は結婚するに相応しい相手でない、と、過去に負った心の傷を抉られる思いをしながら僕に伝えてくれた」
「事実ではありません」

 呆れるような嘘を認めるわけにはいかない。

 だが。

「ふざけるな!!」

 事実を言っただけなのに、彼は激怒して叫んだ。

「あんな可愛らしい彼女が嘘をつくはずがない!!」
「落ち着いてください」
「ふざけたことを! 落ち着けるわけがないだろう! 君は保身のためにそうやって実妹を貶めて心が痛まないのか!?」

 貴方はメリーのことなんて少しも知らないじゃない。

 そう言ってやりたい気分だった。

 だってそうだろう?

 彼は彼女の何でもない。
 ただの他人だ。

 それなのにどうして彼女の主張を信じ込む?

「信じられないような悪女だね、君は」

 ルッティオは吐き捨てるように言った。

「なぜ妹の話だけをそんなにも信じていらっしゃるのか分かりません」
「もういい」
「私は嘘はついていません」
「何も聞きたくない。彼女の助言通り、君とは終わりにする方向で考えるよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「平民が聖女になれただけでも感謝しろ」とやりがい搾取されたのでやめることにします。

木山楽斗
恋愛
平民であるフェルーナは、類稀なる魔法使いとしての才を持っており、聖女に就任することになった。 しかしそんな彼女に待っていたのは、冷遇の日々だった。平民が聖女になることを許せない者達によって、彼女は虐げられていたのだ。 さらにフェルーナには、本来聖女が受け取るはずの報酬がほとんど与えられていなかった。 聖女としての忙しさと責任に見合わないような給与には、流石のフェルーナも抗議せざるを得なかった。 しかし抗議に対しては、「平民が聖女になれただけでも感謝しろ」といった心無い言葉が返ってくるだけだった。 それを受けて、フェルーナは聖女をやめることにした。元々歓迎されていなかった彼女を止める者はおらず、それは受け入れられたのだった。 だがその後、王国は大きく傾くことになった。 フェルーナが優秀な聖女であったため、その代わりが務まる者はいなかったのだ。 さらにはフェルーナへの仕打ちも流出して、結果として多くの国民から反感を招く状況になっていた。 これを重く見た王族達は、フェルーナに再び聖女に就任するように頼み込んだ。 しかしフェルーナは、それを受け入れなかった。これまでひどい仕打ちをしてきた者達を助ける気には、ならなかったのである。

【完結】虐げられていた侯爵令嬢が幸せになるお話

彩伊 
恋愛
歴史ある侯爵家のアルラーナ家、生まれてくる子供は皆決まって金髪碧眼。 しかし彼女は燃えるような紅眼の持ち主だったために、アルラーナ家の人間とは認められず、疎まれた。 彼女は敷地内の端にある寂れた塔に幽閉され、意地悪な義母そして義妹が幸せに暮らしているのをみているだけ。 ............そんな彼女の生活を一変させたのは、王家からの”あるパーティー”への招待状。 招待状の主は義妹が恋い焦がれているこの国の”第3皇子”だった。 送り先を間違えたのだと、彼女はその招待状を義妹に渡してしまうが、実際に第3皇子が彼女を迎えにきて.........。 そして、このパーティーで彼女の紅眼には大きな秘密があることが明らかにされる。 『これは虐げられていた侯爵令嬢が”愛”を知り、幸せになるまでのお話。』 一日一話 14話完結

天才令嬢の医療改革〜女は信用出来ないと医術ギルドを追放された凄腕医師は隣国で宮廷医師となり王太子様から溺愛されて幸せを掴む〜

津ヶ谷
恋愛
 人の命を救いたい。 それが、エミリア・メディが医師を目指した理由だった。  ある日、医学界をひっくり返すような論文を提出して、エミリアは帝国の医術ギルドから追い出されてしまう。 「これだから女は信用できないんだ」  しかし、その論文に興味を示した人間が居た。 隣国、マルティン王国の王太子である。  エミリアはその王太子の推薦により宮廷医師となる。 「治すよ。あなたの未来」  その医師が治すのは患者の未来。 伝説に語り継がれる医師の誕生だった。

《完結》国を追放された【聖女】は、隣国で天才【錬金術師】として暮らしていくようです

黄舞
恋愛
 精霊に愛された少女は聖女として崇められる。私の住む国で古くからある習わしだ。  驚いたことに私も聖女だと、村の皆の期待を背に王都マーベラに迎えられた。  それなのに……。 「この者が聖女なはずはない! 穢らわしい!」  私よりも何年も前から聖女として称えられているローザ様の一言で、私は国を追放されることになってしまった。 「もし良かったら同行してくれないか?」  隣国に向かう途中で命を救ったやり手の商人アベルに色々と助けてもらうことに。  その隣国では精霊の力を利用する技術を使う者は【錬金術師】と呼ばれていて……。  第五元素エーテルの精霊に愛された私は、生まれた国を追放されたけれど、隣国で天才錬金術師として暮らしていくようです!!  この物語は、国を追放された聖女と、助けたやり手商人との恋愛話です。  追放ものなので、最初の方で3話毎にざまぁ描写があります。  薬の効果を示すためにたまに人が怪我をしますがグロ描写はありません。  作者が化学好きなので、少し趣味が出ますがファンタジー風味を壊すことは無いように気を使っています。 他サイトでも投稿しています。

あなたと出会えたから 〜タイムリープ後は幸せになります!〜

風見ゆうみ
恋愛
ミアシス伯爵家の長女である私、リリーは、出席したお茶会で公爵令嬢に毒を盛ったという冤罪を着せられて投獄されてしまう。数十日後の夜、私の目の前に現れた元婚約者と元親友から、明日には私が処刑されることや、毒をいれたのは自分だと告げられる。 2人が立ち去ったあと、隣の独房に入れられている青年、リュカから「過去に戻れたら自分と一緒に戦ってくれるか」と尋ねられる。私はその願いを承諾し、再会する約束を交わす。 その後、眠りについた私が目を覚ますと、独房の中ではなく自分の部屋にいた―― ※2/26日に完結予定です。 ※史実とは関係なく、設定もゆるゆるのご都合主義です。

婚約破棄の上に家を追放された直後に聖女としての力に目覚めました。

三葉 空
恋愛
 ユリナはバラノン伯爵家の長女であり、公爵子息のブリックス・オメルダと婚約していた。しかし、ブリックスは身勝手な理由で彼女に婚約破棄を言い渡す。さらに、元から妹ばかり可愛がっていた両親にも愛想を尽かされ、家から追放されてしまう。ユリナは全てを失いショックを受けるが、直後に聖女としての力に目覚める。そして、神殿の神職たちだけでなく、王家からも丁重に扱われる。さらに、お祈りをするだけでたんまりと給料をもらえるチート職業、それが聖女。さらに、イケメン王子のレオルドに見初められて求愛を受ける。どん底から一転、一気に幸せを掴み取った。その事実を知った元婚約者と元家族は……

「優秀な妹の相手は疲れるので平凡な姉で妥協したい」なんて言われて、受け入れると思っているんですか?

木山楽斗
恋愛
子爵令嬢であるラルーナは、平凡な令嬢であった。 ただ彼女には一つだけ普通ではない点がある。それは優秀な妹の存在だ。 魔法学園においても入学以来首位を独占している妹は、多くの貴族令息から注目されており、学園内で何度も求婚されていた。 そんな妹が求婚を受け入れたという噂を聞いて、ラルーナは驚いた。 ずっと求婚され続けても断っていた妹を射止めたのか誰なのか、彼女は気になった。そこでラルーナは、自分にも無関係ではないため、その婚約者の元を訪ねてみることにした。 妹の婚約者だと噂される人物と顔を合わせたラルーナは、ひどく不快な気持ちになった。 侯爵家の令息であるその男は、嫌味な人であったからだ。そんな人を婚約者に選ぶなんて信じられない。ラルーナはそう思っていた。 しかし彼女は、すぐに知ることとなった。自分の周りで、不可解なことが起きているということを。

妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。

バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。 瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。 そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。 その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。 そして……。 本編全79話 番外編全34話 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

処理中です...