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2話「放置されていたのだけれど」
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あれからはこっそり持ってきた魔法関連の書物を読みながら時間を潰す日々。
結局ルッティオは私をずっと無視している。
何日経っても状況は変わらない。
もしかしたら一生このまま……?
想像するとゾッとする。
私はこの先ずっとここで一人で過ごさなくてはならないのだろうか。愛されず、可愛がられもせず、それどころか挨拶すらしてもらえない状態で。いつまでも独りぼっちなのだろうか。
ただ、家にいるよりかはましだった。
家にいるとメリーに悪者に仕立て上げられる。でもここではそれはない。放置され続けているとしても、理不尽に悪女と言われることはない。それだけは救いだろう。
ここでのんびり暮らそう。
愛など求めはしない。
それでいい。
きっとそれが私に与えられた運命なのだろうから。
――だが、そんなある日、メリーが城を出入りしているという噂を耳にして。
嫌な予感が湧き上がる。
彼女が絡んで良い結末になったことは今まで一度もない。
噂によればメリーはエリサの妹という立場を利用してルッティオに接近しているらしい。
……何をするつもりなのだろう。
彼を奪い取る?
私を悪評を広める嫌がらせ?
いずれにせよ、彼女が良いことをするはずがない。
――そうして訪れたある昼下がり。
「君、少しいいか」
「ルッティオ、様……?」
物凄く久々にルッティオに声をかけられた。
「君は妹さんを虐めていたそうだね」
「え……」
「彼女を可憐な容姿を羨み、執拗に虐め、呪いをかけたこともあったそうじゃないか」
やはりか……。
「それは嘘です」
メリーは私の立場を壊したいのだろう。
「本人がそう言っていたのですか?」
「ああ」
「事実ではありません」
「なんということを。……どこまで悪女なんだい君は」
いきなり悪女呼ばわりなんて失礼すぎではないだろうか。
「私は妹を虐めたことなどありません」
「彼女は決心して言ってくれたんだ。本当のことを。姉は結婚するに相応しい相手でない、と、過去に負った心の傷を抉られる思いをしながら僕に伝えてくれた」
「事実ではありません」
呆れるような嘘を認めるわけにはいかない。
だが。
「ふざけるな!!」
事実を言っただけなのに、彼は激怒して叫んだ。
「あんな可愛らしい彼女が嘘をつくはずがない!!」
「落ち着いてください」
「ふざけたことを! 落ち着けるわけがないだろう! 君は保身のためにそうやって実妹を貶めて心が痛まないのか!?」
貴方はメリーのことなんて少しも知らないじゃない。
そう言ってやりたい気分だった。
だってそうだろう?
彼は彼女の何でもない。
ただの他人だ。
それなのにどうして彼女の主張を信じ込む?
「信じられないような悪女だね、君は」
ルッティオは吐き捨てるように言った。
「なぜ妹の話だけをそんなにも信じていらっしゃるのか分かりません」
「もういい」
「私は嘘はついていません」
「何も聞きたくない。彼女の助言通り、君とは終わりにする方向で考えるよ」
結局ルッティオは私をずっと無視している。
何日経っても状況は変わらない。
もしかしたら一生このまま……?
想像するとゾッとする。
私はこの先ずっとここで一人で過ごさなくてはならないのだろうか。愛されず、可愛がられもせず、それどころか挨拶すらしてもらえない状態で。いつまでも独りぼっちなのだろうか。
ただ、家にいるよりかはましだった。
家にいるとメリーに悪者に仕立て上げられる。でもここではそれはない。放置され続けているとしても、理不尽に悪女と言われることはない。それだけは救いだろう。
ここでのんびり暮らそう。
愛など求めはしない。
それでいい。
きっとそれが私に与えられた運命なのだろうから。
――だが、そんなある日、メリーが城を出入りしているという噂を耳にして。
嫌な予感が湧き上がる。
彼女が絡んで良い結末になったことは今まで一度もない。
噂によればメリーはエリサの妹という立場を利用してルッティオに接近しているらしい。
……何をするつもりなのだろう。
彼を奪い取る?
私を悪評を広める嫌がらせ?
いずれにせよ、彼女が良いことをするはずがない。
――そうして訪れたある昼下がり。
「君、少しいいか」
「ルッティオ、様……?」
物凄く久々にルッティオに声をかけられた。
「君は妹さんを虐めていたそうだね」
「え……」
「彼女を可憐な容姿を羨み、執拗に虐め、呪いをかけたこともあったそうじゃないか」
やはりか……。
「それは嘘です」
メリーは私の立場を壊したいのだろう。
「本人がそう言っていたのですか?」
「ああ」
「事実ではありません」
「なんということを。……どこまで悪女なんだい君は」
いきなり悪女呼ばわりなんて失礼すぎではないだろうか。
「私は妹を虐めたことなどありません」
「彼女は決心して言ってくれたんだ。本当のことを。姉は結婚するに相応しい相手でない、と、過去に負った心の傷を抉られる思いをしながら僕に伝えてくれた」
「事実ではありません」
呆れるような嘘を認めるわけにはいかない。
だが。
「ふざけるな!!」
事実を言っただけなのに、彼は激怒して叫んだ。
「あんな可愛らしい彼女が嘘をつくはずがない!!」
「落ち着いてください」
「ふざけたことを! 落ち着けるわけがないだろう! 君は保身のためにそうやって実妹を貶めて心が痛まないのか!?」
貴方はメリーのことなんて少しも知らないじゃない。
そう言ってやりたい気分だった。
だってそうだろう?
彼は彼女の何でもない。
ただの他人だ。
それなのにどうして彼女の主張を信じ込む?
「信じられないような悪女だね、君は」
ルッティオは吐き捨てるように言った。
「なぜ妹の話だけをそんなにも信じていらっしゃるのか分かりません」
「もういい」
「私は嘘はついていません」
「何も聞きたくない。彼女の助言通り、君とは終わりにする方向で考えるよ」
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