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前編

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「げっぺっぺぇ! 楽しめネェオメェとは一緒になんぞいられネェ! 婚約は破棄とするゥ!」

 婚約者アバランガンは唾を飛ばしつつ笑いながらそう言って私との婚約を解消した。

 私はその時ただ唖然としていることしかできなかった。何が何だか分からなかったからだ。ただ、婚約破棄されたことに対する悲しさや辛さはなかった。なぜって、彼への想いはそんなになかったから。

 アバランガンと離れることへの悲しさはない。

 むしろ、彼の厄介な姉妹と離れられるという意味では、幸運とも言える。

 その後私は実家へ帰ってそこで暮らしだした。

 ちょうどその頃に知人の紹介で王子と知り合う。そして結婚にまで至った。というのも、王子ととても気が合ったのだ。私たちは二つの磁石のようにぴったりとくっついた、知り合ってすぐに。
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