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後編

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 そうだ、私には生きなくてはならない。

 死んでいる場合ではない。

 私に生きていてほしいと思ってくれている人がいるのだ。
 そのことに改めて気づいた。

 それから数日が経った頃、ルトムンがやって来て「悲劇を招いてしまいすみませんでした」と言ってきて、さらに「もう一度やり直そう」と言ってきたーーでも私は断った、彼ともう一度やり直したいなんて欠片ほども思っていなかったから。

 もうルトムンに対して未練はない。

 それに、私は新しい未来へと進みたい。

 少なくとも「刺激がなくてつまらない」なんて言って急に身勝手に捨ててくるような人とは関係を再構築などしたくはないのだ。


 ◆


 あの雨の日の婚約破棄から数ヶ月、私は散歩中に出会った怪我人を手当てした。そこから新たな物語が始まってゆく。その彼ナッツに好かれ、私は、徐々に深く柔らかく愛されるようになっていく。

 初めて感じる純粋な愛であった。

 愛されていると感じられることをの偉大さを学んだ。

 そして私たちはあっという間に結ばれた、ナッツと結婚することとなったのである。

 不思議なことだ。
 つい最近出会ったばかりなのに。

 なのにもうこんなにも仲良くなっている。

 人の縁とは分からないものだ。


 ◆


 あれから一年半、私は第一子にも恵まれ、家族三人で楽しく暮らせている。

 ナッツは今も優しい。
 子育てで疲れている私にもいつも優しい声をかけてくれるし。

 彼を伴侶として良かった、心からそう思っている。

 ちなみにルトムンはというと、あの後色々あって女性恐怖症になってしまったそうだ。
 何でも、恋人であった女性からストーカーされたとか。
 そういう意味では気の毒にも感じないことはない、が、それもまた彼の人生。ある意味自業自得の部分も大きいと思う。
 もっとも、対象が良い印象のない彼だからそう思うだけかもしれないけれど。


◆終わり◆
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