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中編
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第二王子ニイーンには婚約者がいた。
世には「互いを想い合う理想を絵に描いたような二人」と伝えられていた。
だがそれは事実ではなく。実はニイーンは婚約者を愛してなどいなかった。婚約者はニイーンを慕っているようだったけれど。つまり、ほぼ婚約者の片想いのような状態。ニイーンにとって、婚約者はどうでもいい存在だった。
ニイーンは何人も愛人のような存在を作り、来る日も来る日もその人たちと遊んでいて。そのことに耐えられなくなった婚約者は、ある秋の夜、湖に飛び込んで命を絶った。
しかし、この件に関しては、正確に世に伝えられることはなかった。
ニイーンの婚約者は不運な事故で亡くなってしまったことに。事実は歪められ、本当のことは国民には伝えられなかったのだった。
第三王子のカルビンは、現在二十五歳。
ニイーンより一つ年下。
彼は年上から好かれるタイプで、夫人から可愛がられることが多かった。幼い頃愛らしい容姿だったということも影響しているかもしれない。が、大人になってからもその人気に陰りが見えることはなかった。
ある時、カルビンは、四十二歳の赤毛の夫人からお茶の誘いを受けた。カルビンは誘いを受け、一緒にお茶をすることにしていた。しかし、その前日に、四十六歳の夫人がカルビンを呼び出した。そして彼女は、前もって入っていたお茶の話をなしにするよう告げた。カルビンは仕方なく四十二歳の赤毛の夫人のところへ行き、事情を説明。
その日の晩、四十二歳の赤毛の夫人と四十六歳の夫人が大喧嘩をした。
喧嘩は殴り合いにまで発展し、しまいに、二人はぴったりくっつくようにして窓から転落して亡き人となった。
以降も、カルビンに関しては、そういうような事件が絶えなかった。
国民の中には彼を『絶望の天使』と呼ぶ者もいるらしい。
世には「互いを想い合う理想を絵に描いたような二人」と伝えられていた。
だがそれは事実ではなく。実はニイーンは婚約者を愛してなどいなかった。婚約者はニイーンを慕っているようだったけれど。つまり、ほぼ婚約者の片想いのような状態。ニイーンにとって、婚約者はどうでもいい存在だった。
ニイーンは何人も愛人のような存在を作り、来る日も来る日もその人たちと遊んでいて。そのことに耐えられなくなった婚約者は、ある秋の夜、湖に飛び込んで命を絶った。
しかし、この件に関しては、正確に世に伝えられることはなかった。
ニイーンの婚約者は不運な事故で亡くなってしまったことに。事実は歪められ、本当のことは国民には伝えられなかったのだった。
第三王子のカルビンは、現在二十五歳。
ニイーンより一つ年下。
彼は年上から好かれるタイプで、夫人から可愛がられることが多かった。幼い頃愛らしい容姿だったということも影響しているかもしれない。が、大人になってからもその人気に陰りが見えることはなかった。
ある時、カルビンは、四十二歳の赤毛の夫人からお茶の誘いを受けた。カルビンは誘いを受け、一緒にお茶をすることにしていた。しかし、その前日に、四十六歳の夫人がカルビンを呼び出した。そして彼女は、前もって入っていたお茶の話をなしにするよう告げた。カルビンは仕方なく四十二歳の赤毛の夫人のところへ行き、事情を説明。
その日の晩、四十二歳の赤毛の夫人と四十六歳の夫人が大喧嘩をした。
喧嘩は殴り合いにまで発展し、しまいに、二人はぴったりくっつくようにして窓から転落して亡き人となった。
以降も、カルビンに関しては、そういうような事件が絶えなかった。
国民の中には彼を『絶望の天使』と呼ぶ者もいるらしい。
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