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4話

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 話し合いの場でカイルの心移りが理由であると判明すると、彼の両親は驚くとともに憤っていた。
 幸い、カイルの両親は平均的な思考を有していたようだ。

 カイルの父親は「使用人の娘とは縁を切りアルメニアさんとやり直すよう、息子に言います」と言ってくれたけれど、私はそれを断った。

 なぜなら、二人を引き裂いた悪者みたいになりたくなかったから。

 もし彼の父親が協力してくれて婚約者同士に戻れたとしても、きっと、彼の心が私へ向くことはないだろう。否、それどころか、彼は私をさらに嫌うだろう。愛を潰した、二人を引き裂いた、と。二人して私を良く思わなくなってしまうはず。

 それならば私が去る方が良い。

 私が去れば二人は幸せになれるのだ。


 ◆


 婚約破棄の手続きが済むと、理不尽な婚約破棄のお詫びにとカイルの両親がお金を支払ってくれた。

 大きな額ではなかったけれど、カイルの親に罪はないと思い、それ以上金銭を請求することはしなかった。カイルの両親にはそこそこ世話になったから、その人たちをわざわざ傷つける気はない。彼らを執拗に責める気も、特にはないし。

 それから私は実家に戻った。
 以降は特に問題もなく過ごすことができている。

 穏やかな日々の中耳にした話によると、カイルはあの後両親から縁切りを言い渡されたらしい。

 婚約破棄うんぬんの話し合いの中でカイルが私の悪口を言ったことから口論へと発展し、最終的にそこへ至ったそうだ。

 ありがたいような申し訳ないような……。

 両親に勘当を宣言されたカイルは、あの娘と同棲を始めた。が、彼女は既にクビになっていてカイルも職に就いていないということもあって、生活費を稼ぐことが難しくなってしまった。本来であればカイルの親からの支援がありそうなものだったのだが、関係が壊れたこともあり、親に支援してもらうこともできなくなっていたのだ。

 現状を変えようと考えた彼女は給与が高い夜の店に勤め始めるが、それを知ったカイルは激怒。
 二人はあっという間に別れてしまったそうだ。

 その後の彼女の行方は不明。だが、カイルのことは、少しだけ情報が入ってきた。彼は資産を有する女性の恋人となることを繰り返し、ろくに働くこともせず、女性に頼りつつ生きていったらしい。ただ、年を重ねるにつれて評価は下がってしまったようで。しまいには相手にされないようになっていったらしい。


◆終わり◆
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