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2話

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「な!?」
「私はそれで構いません」
「なっ……何だと!? き、気持ち悪いっ」
「はい?」
「だ、だから、婚約破棄を大人しく受け入れるなど不気味だと言っているのだ!」

 オルターは動揺していた。

「でも、その方が良いのでしょう? オルター様は」
「な……」
「ならば私は去ります。だって、貴方に執着してはいないからです」

 こうして私とオルターの縁は終わりを迎えることとなった。

 別れしな、エリカはちらりとこちらを見て、ふふと黒い笑みを浮かべていた。きっと恋敵であるレイヴィアが捨てられて嬉しかったのだろう。ま、彼女は彼女なりに黒い人だったのだろうと思う。レイヴィアは悪女だったかもしれないが、エリカが善人であった保証だってないのだ。



 ◆

 その後私はレイヴィアとして田舎へ移住した。
 そして、そこで農業を始める。
 学園時代の友人も招いて、一緒に働き、絆を深めた。

 そうしているうちに農業スキルがマックスになっていて驚いたけれど――でも毎日はとても楽しいので、己の選択を悔やむ要素はなかった。

「レイヴィア様ってお優しい方でしたのね!」
「知りませんでしたわ!」
「ああレイヴィア様! 愛おしいっ。あんな男、オルターなんて、レイヴィア様には相応しくないですわね~」

 友人がいて。
 やりがいのある仕事があって。
 穏やかに暮らせる家がある。

 ――それだけで十分幸せだ。


 ◆


 あれから数年、私は、田舎で仕事をしている中で知り合った若き領主の青年ルフレンと結婚した。

 出会いはある視察の日。彼が大きくなった私の農場へやって来たのがきっかけとなった。そこで色々話しているうちに親しくなって、それから、時折会って話をするようになっていった。

 そして結ばれるに至ったのである。

「ルフレン、お仕事お疲れ様」
「ああ、ありがとう」

 夜にはいつもルフレンへお茶を渡す。

 これは、仕事を一日頑張った彼への、ご褒美ならぬお礼の気持ちだ。

 私は農場での仕事が多いが、彼は書類と向き合って座っている時間が長い。一日中じっとしている、だからこそ疲れも溜まるだろうなと思って。夜にはこうして心と体がほぐれるようなお茶を淹れて渡している。

「レイヴィアが淹れてくれるお茶は美味しいね、いつも」
「そうですか? 素人ですが」
「この前のとうもろこし茶も最高だったよ」

 ルフレンはいつだって温かく接してくれる。
 そんな彼と一緒にいると毎日がとても楽しい。

 これからもずっとこんな風に過ごせたら――そういう思いが強い。
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