皇女ともっちり

四季

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3話

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「皇帝の血筋に近づいて何をするつもり?」
「え」
「目的があるんでしょ」
「えと……ごめんなさい。目的とかそういうのは、実は……なくてですね……」

 庭の真ん中で怪訝な顔をするアルベニア。

「本当のことを言って」
「その……実は、流れのままにこういう話になってしまいました……」

 エブロバが身を縮ませ申し訳なさそうな顔をしつつ言ったのを見て、アルベニアは何かを察したよう。一瞬、ほんの僅かな時間ではあるが、硬く冷たげだった表情が溶けた。が、それも束の間のことで。数秒もすればアルベニアの表情は前までのものに戻っていた。

「ご、ごめん! 本当にすみません! 軽い気持ちで!」
「ちょ……べつにそんなに謝らなくても……」

 今度はアルベニアが戸惑う番だ。

「断れなくてすみません!」
「いやだから、ちょっと、落ち着いて」
「……その、本当に、申し訳ないです。嫌、ですよね……いきなり現れてこんなこと……」

 すっかり小さくなってしまっているエブロバに、アルベニアは呆れ顔で「べつに責めてるわけじゃないわ。ただ質問しただけよ」と伝えていた。

「ま、貴方のその言葉が本物かどうかは後々見せてもらうわ」
「本物と理解していただけるよう頑張ります」
「それと。一つ希望があるのだけれど」
「何ですか?」
「その敬語みたいなの、やめてもらってもいいかしら」

 アルベニアは口もとに笑みを浮かべる。

「普通に喋って」
「そんな……できません……!」
「いいから」
「さすがにそれは失礼です。できません」

 するとアルベニアは口もとには笑みを浮かべたまま目つきを鋭くする。

「貴方に選択権はないわ」
「は、はい——って、あっ。ごめん!」
「そうね、それでいいわ」
「えっ。そ、そう? 本当に? 大丈夫?」
「これからはそうして。その方がありがたいの」
「わ、分かった。そうするよ」

 この日が二人の始まりの日となった。


◆終わり◆
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