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婚約者と花を見に出掛けていたのですが、そこに浮気相手が現れました。しかしその浮気相手は彼に婚約者がいるということを知らなかったようで……?

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 その日私は婚約者エーベルゲッツと花を見に都公園を訪れていたのだが。

「あれぇ? エーベじゃな~い、どうしてこんなところに?」
「ふぃ、フィアリア!?」

 エーベルゲッツの顔が一気に青ざめる。

 ……何なんだ? 明らかに様子がおかしい。ただの知り合いに会ったという感じではない。だってただの知り合いに会ったのであれば青ざめたりはしないだろうし。……もしかして会いたくない人だったのか? それか、私といるところを見られたことがまずかったとか?

「その女、誰よ」

 金髪で気の強そうな女性は私をちろりと見てくる。
 整った顔立ちだがどこか恐ろしさを感じさせるような雰囲気をまとっている。

「あ……や、いや、ちがっ……」
「浮気?」
「や、そ、そうじゃなく……」
「じゃあ誰なのよ?」

 女性が問っていたので。

「はじめまして、私はエーベルゲッツの婚約者です。彼のお知り合いですか? どうぞよろしくお願いします」

 私はそう答えた。

 彼女が私に対して問っているわけではないということは知っているけれど。でも、エーベルゲッツが答えられなくなってしまっている今は、私が代わりに答えるほかないだろう。

「エーベ! あんた、騙してたの!? 婚約者がいたなんて知らなかった!」
「え……あ、や、ちがっ……」
「その彼女、婚約者さんなんでしょ!?」
「……う、うん。……ごめん、なさい」
「サイッテー」

 女性はその後事情を説明してくれた。
 何でも彼女はエーベルゲッツと恋人のような関係になっていたそうなのだが、彼に婚約者がいるということは一切知らされていなかったのだそうだ。

 ……エーベルゲッツは彼女を騙していたのか。

「エーベなんてもうだいっきらい!! じゃーね。ばいばい。永遠に……さよなら」
「ま、待ってよ!」
「はぁ? キモ! 無理!」
「いやだぁぁぁぁ! 待ってよぉぉぉぉぉ! お願い、お願い、お願いお願いお願いお願い! 頼むよおおおお! 捨てないでえええええ!」

 エーベルゲッツは倒れ込み地面に伏せて号泣。

 さらに、それから数分経って。

「お前のせいだぞ! お前が本当のことを言ったから!」
「ええー……」

 なぜか私が怒られることに。

 いやいや、意味不明過ぎる……。
 まったくもって意味が分からない……。

「最低な女だ! お前は俺から幸せを奪った!」
「えと、あの……それは、おかしいですよね。浮気していたのが問題、ですよね?」
「知るか!! 空気読めよ!!」

 私は悪いことなどしていないはずなのだが。

「もうお前の顔なんか見たくない! 婚約は破棄だ!」

 関係を一方的に終わらせられてしまったのだった。


 ◆


 エーベルゲッツは結局すべてを失うこととなった。
 あの後彼はまたあの女性に近づこうとしていっているようであったが、とことん拒否されてしまい、しまいにはストーカーとして警察に突き出されてしまったそうだ。

 でも……まぁ、そうなったとしても、仕方のないことだろう。

 婚約していることを隠して恋人面していてそれがばれてしまったのだから、まぁ、普通に拒否されるといったところではあると思われる。

 エーベルゲッツは今、絶望の中に在るそうだ。

 でもすべては彼の行いが招いたこと。
 だから仕方ないのだ。
 何もかもすべて、自業自得といったところである。


 ◆


「お茶を淹れてみたのです、飲んでくださいませんか?」

 私は今、王子の妻となっている。

「え、いいの? ありがとう!」
「はい」
「じゃあいただくよ」

 彼との出会いはとあるパーティーであった。
 その最中にバルコニーに出ていたところ彼もまたバルコニーに出てきていて、休憩している者同士少し言葉を交わしたのだ。

 それが私たち二人の始まりであった。

「美味しい! ありがとう」
「本当ですか……! 良かったです。頑張りを褒めていただけるのはとても嬉しいです」
「すごいなぁって思うよ。僕には無理だなぁ、お茶を淹れる、なんて。本当に美味しい。ありがとう」

 今では夫婦となっている私たち。
 これからも共に歩んでいきたいと思う。

「これからも頑張りますね!」
「いやいや、もっと、力抜いて」
「そうですか」
「うん! 君は侍女じゃないんだから。頑張ってくれるのは嬉しいけど、それ以上に、ゆっくりと過ごしてほしいとも思うんだ」


◆終わり◆
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